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愚かな毒鼠どもの眠れない夜



愚かな毒鼠どもの眠れない夜

犯罪者集団に身を置いている祐輔は、上からの指示で欲望渦巻く猥雑な街でタタキ(強盗)や詐欺を繰り返していた。金を稼いでマリファナでハイになり、中学の同級生の絵美相手に欲望を発散していたが、ある日、自分を裏切った仲間を殺してしまったことから、やくざや中国人犯罪グループに追われることになる。次々に襲いかかってくる追っ手をかわしながら逃亡生活を続けていたが、ついに親友を巻き込んでしまう。底辺の人生を歩んできたアウトローの壮絶な復讐劇。

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愚かな毒鼠どもの眠れない夜 1



1.腐った街の鼠たち

「このボケェェがぁぁッ!」
 怒りで顔面を赤銅色に染めた沖島が、明の腹に拳を叩き込んだ。明が海老のように背中を丸め、地面に嘔吐する。
「ふざけんじゃねえぞぉぉッッ、俺たちは遊んでんじゃねえんだよぉぉぉッ! ああぁッ!?」
 沖島が明を殴りつづけるのを、祐輔は黙って見ていた。
「怖くなったから嫌だと? 何言ってんだよぉぉぉッ! ああぁッ!?」
 沖島の首筋の筋肉が強張る。顔面には脂汗がぬめついていた。
 タタキ、いわゆる強盗の仕事を断って逃げ出した明の居場所を探り出したのは沖島だった。こんな度胸のないバカな男はリンチを加えて性根を叩きなおすしかない。
「ず、ずいばぜん……れ、れも、俺、怖くてぇ……」
「はあ? お前、やるっていったよなぁ?」
 醜貌をさらに歪ませながら、沖島が明の顔面に唾を吐き捨てた。
 苦痛に腹部を押さえ、うめく明の横顔──沖島の容赦ない拳が飛んだ。
「ふざけんじゃねえぞ! いいかっ、三日待ってやるから金とってこいやぁッ!」
 髪の毛を引っつかみ、何度も揺さぶりながら明の耳元で沖島がわめく。唾が頬に飛んだ。
「わ、わがりまじだぁ……」
「わかりゃいいんだよ。いいか、どんな手使ってでも金取って来い!」
 沖島が明の女の方を見た。
「な、何よ」女がそっぽを向いている。
「明に止めるよう唆したの、お前だろ?」
 沖島は女を睨むと、ポケットに手を突っ込み、ナイフを取り出した。
「何……? そんな物騒なもの持って。仲間に言うわよ」
 沖島の顔が引きつる。この女は沖島のような男に言っていいことと悪いことがわからないらしい。
 女は半グレグループとつながりがあるのを自慢していた。明を唆したのも、自分たちのグループに引き込むためだろう。
 沖島はナイフを握った拳を女めがけて振り下ろした。
 女が泣き叫ぶ。周りの男たちはにやにやしたまま、黙ったまま見ている。
 こいつらには反吐が出るぜ。
 祐輔は煙草をくわえ火をつけた。
「女も同罪だろ?」
 沖島が薄く笑う。
 女の髪をつかんで引きずる。女が悲鳴を上げた。
「お前ら、この女、好きにしていいぞ」
「い……いいんスか?」
「俺らに舐めた真似したらどうなるか教えてやれ」
 先頭に立っていた男が女の腕を掴んだ。女の悲鳴が響くが、周囲に人気のない倉庫群。誰も助けに来ない。
「あ、あうう……。ひうう……」
 女が言葉にならない声を出す。男たちが下品に笑う。
「ぶははっ! お前、最高だわ!」
 興奮した男は女を抱きすくめ、床に倒れこんだ。他の男たちも女に襲い掛かっていった。ひとりが女の腕をつかんで抑え、もう一人が女の服を剥がしていく。
 女がカラダをくねらせながらもがくが、三人の男に抑え込まれ、びくともしない。はぎとった下着を女の口に押し込んで塞ぐ。
「じゃあ、俺からだ」
 リーダー格の男が女に覆いかぶさっていった
「んッ! んッ! んッ!」
 女が暴れる。それを見ている沖島が眉を上げた。
「姉ちゃぁん、女はおとなしい方がカワイイぜ?」
「んッ! んッんッんッ!」
「そう騒ぐなよ。優しくしてやるからよ」
 そう言って、女のスカートに手を入れて下着を剥ぎ取った。
「おお? すげえ濡れてるジャン」
「なんだよ、やる気満々じゃん、この女」
 男が女の太腿の間に割って入り、勃起したペニスに唾をつけて少女の膣にあてがった。女は必死で抵抗するが、男が構わずに下半身を突っ込んだ。
「うおおおおっ! あったけえ! こいつ、結構締まってるぜ!」
「中を汚すな! 外に出せよ!」
「知らねえよ、そんなの」
 沖島が女を犯す仲間の姿を見て笑っている。
 男が女の中に精液を吐き出した。
「外に出せって言っただろ!」
 次の男が入れ替わりに女に突っ込んだ。女はいつの間にか暴れるのを止めて喘いでいた。
「おおおおおっ!」
 男が叫んで女の中で果てた。ペニスを抜いたとたん射精して女の股を汚した。
「なんだよ、お前らもう終わりか? 二人で十五分も持ってねえじゃねえか」
 次の男が女に近づいた。終わった男たちの股間が、情けなく萎えてだらりと垂れていた。
「大丈夫。俺がこいつらの責任をとってやるから」
 そう言って、パンツごとズボンを降ろした。
 隆々といきり立った逞しいペニスが天を向いていた。すでに臨戦態勢になっている。
 三人目もすぐに終わった。満足そうにパンツごとズボンを引き上げている。女はぐったりとしたまま、身動き一つしない。
「次はお前が犯れ」
「いや、俺はいいっすよ」
 祐輔が吸い終わった煙草を地面に捨てた。
「つべこべ言わずに犯れってんだ」
「こいつらのザーメンで汚れたマンコに突っ込むなんて嫌ですよ」
 沖島が祐輔の胸ぐらを掴んだ。
「てめえの意見を聞いてるんじゃねえんだ。俺は女を犯せといってんだよ」
「嫌っす」
 沖島の拳がこめかみを直撃した。
 鼓膜がキンキンと痛み、こめかみが震えた。
「あんまナメてんじゃねえぞ、お前」
 肩で息をする度に、沖島の吐き気を催す糞のような口臭が鼻腔を襲った。
 沖島が髪の毛を引っ掴んで、また拳を振り上げた。拳が顎に当たった。唇が切れた。脳が振動した。一瞬、目の前が暗転した。鉄錆の味が口の中に広がっていった。
 祐輔が沖島を睨みつけた。沖島が身じろぎする。
 ビビってんじゃねえよ、腰抜けが。
 沖島の腕をつかみ、引っ掴んだ髪の毛を離した。
「てめえ……」
 沖島がナイフをポケットから取り出した。
「沖島さん、そのくらいで……」
 男の一人が割って入った。床に倒れたまま、明が顔を上げてこちらを見ていた。他の男たちも息を潜めている。
 沖島が唾を吐いてナイフをポケットにしまった。
 不意に、沖島の拳が顔面にめり込んだ。明のそばに倒れる。
「今度俺のことをなめやがったら、殺すからな」
 床から自分を見上げる祐輔に唾を吐きかけ、沖島が背中を向けた。

愚かな毒鼠どもの眠れない夜 2



2.ろくでなしの毒鼠

 マルボロの煙を吐く。
 沖島に殴られた顎と耳の奥がまだ痛い。
 あの野郎……。いつかぶっ殺してやる。
 咥えタバコのまま、親指でスマートフォンの画面に番号を呼び出す。
「よう」
「あ、祐輔くんだぁ」
 絵美。中学の同級生。中坊の時から性欲処理に使っている女。
 そして、祐輔の初めての女の娘。
「今、仕事か?」
「そうだよ」
 絵美の仕事。街に立って客を取る立ちん坊。
「何時に終わる?」
「会ってくれるの?」
「久しぶりにお前とやりてえなって思って」
「ばかぁ」
 知恵遅れとまではいかないが、絵美は頭がかなりトロイ
「仕事は何時までなんだ?」
「ええっとねぇ……。今日は三人お客がついたから、いつでもいいよぉ」
「おおう、稼いだじゃねえか。じゃあ、九時ごろ迎えに行ってやる」
「わあ、嬉しい」
「姉ちゃんには、俺に会うなんていうなよ」
「祐輔くん、お姉ちゃんと仲良しになってよ」
「そのうちにな。じゃあ」
 電話を切る。絵美の姉の茉莉も売春婦だが、こっちは気が強くてやり手だ。親はヤクザとその情婦。近所でも有名なろくでなし家族で、それゆえに姉妹とも過酷な少女時代を送ってきた。
「よう、祐輔」
 佐藤健次が歩いてくる。派手なスカジャン。そろそろ自分の姿がおかしいと感じなければならない歳だ。
「沖島とひと悶着あったらしいじゃねえか」
 健次がタバコの箱から一本振り出して銜える。ライターが見当たらないようなので、ジッポを貸してやる。火をもらった健次がうまそうに煙を吐き出した。
「沖島と揉めたんだって?」
「あの野郎、いつかぶちのめしてやる」
「やめとけ、幹部と揉めるのは。あいつは小物だ。いつか落ち目になる」
「俺はそんなに気が長くねえんだ」
 健次が笑う。
「明、飛んじまうな、ありゃ」
「あんな根性なしにタタキやれってのが間違ってんだよ」
「あいつらが輪姦した女、裏風俗行きだって。落とし前つけるために闇金で五百万借りさせられたんだってよ。阿漕なことするよな、沖島の奴」
 健次はまだろくに吸っていないタバコを地面に捨て、吸殻を靴で踏みつぶした。
「あの女、ヤバイ系って知ってたか?」
「ヤバイ系? なんだ、そりゃ?」
「やくざのこれらしいぜ」といって、健次が小指を立てた。
「あの女がか? そういや、やくざ好みのいい体してたぜ。でも、ツラはいまいちだったな。どこかの下っ端の情婦なんだろうな。でもよ、そんなやばい女に明は手ぇだしてたのか?」
 そういって、祐輔が「そうか」といって舌打ちした。
「そう、明はヤシマ組のスパイ。女はその報酬だったってわけさ」
「あの野郎……」
「まあ、やくざの女に手ぇ出しちまって、それをネタに脅されてるのかもな」
「明の奴、沖島に知られたら殺されるな」
 祐輔が煙草の吸殻を放り投げる。だからといって、沖島にチクる気などない。明がスパイだと見逃した沖島が悪いのだ。
「お前、あの女がヤシマ組とつながってるって、誰に聞いたんだ?」
「まあ、馴染みにしている女からだな。ヤシマ組のシマん中にある店で働いてるんで、いろいろ情報が集まってくるんだよ。お前も情報網を少しは広げたほうがいいぜ」
 いいもの見せてやるぜ。そういって健次が脱いだ靴を手に持って祐輔に突き出した。靴の踵をグイっと回すと、中から小さなナイフが落ちてきた。
「なんだ、そのおもちゃは?」
「映画に出てくるスパイの道具みたいでかっこいいだろ。海外の製品なんだが、少し前に通販で買ったんだ。サイズは二七センチだけだがな」
「お前もまだガキだな」
「まあ、それで、売れるかなと思って、ちいっとばかし仕入れたんだ。買ってくれよ。一足三万なんだ」
「売れ残りを押し付ける気か? そんなおもちゃに興味ねえよ」
「ダチだろ? 頼むよ」
 祐輔は舌打ちして、ポケットから金を取り出した。

愚かな毒鼠どもの眠れない夜 3


3.白痴の女体

 湯気が、バスルームに立ち込めている。
 軽くシャワーを浴びて、浴槽に入る。
「狭いよぉ」
 先に浸かっていた絵美は、笑いながら両手で湯をすくいあげ、顔を洗う。
「ここに座れよ」
 祐輔が浴槽の縁を叩くと、絵美が下半身を横たえた。ふっくらとした若い肢体。大きな乳房が揺れた。粉雪のように白い肌が、うっすらと桜色に染まっている。
 祐輔が絵美の肌に指を滑らせた。
「やだぁ。くすぐったいよぉ」
 絵美の薄桃色の乳首が固くしこった。
「あ……ああ……」
 乳首を口に含み、股間に手を滑り込ませる。皮を被った肉芽を指腹で刺激した。細い喘ぎが絵美の喉から漏れる。
 絵美の体臭。絵美のぬくもり。長い間抱いてきた、馴染んだ女の体。
 ゆっくりと中指を内部に挿入する。内部はうなるように熱く煮え滾っていた。絵美は苦悶の表情を作った。
「ああ……んん……ッ」
 絵美が昂ぶってきた。しとどに濡れる紅百合の花弁。溢れる蜜液が祐輔の指を汚す。
「今日はここに三本もぶち込まれたのか?」
「祐輔くん、ひどぉい」
 多くの男を飲み込んできたはずなのに、色素の薄い花弁はまだ初々しく見える。
 舌足らずな声で喘ぐ絵美。魅力的な丸みを帯びた真っ白い臀部に、大きくて形の良い紡錘型の乳房。
 細く筆で引いたように、眉毛をすらりと整えている。
「あああ……ああ……ッッ」
 絵美の呻き声が激しさを増した。潤んだ瞳が輝く。眼を閉じた。
 やがて、絵美が体を震わせて達した。
「次は、祐輔君がここに座って……」
 絵美が湯船から出る、祐輔が立ち上がった。ペニスは固く勃起して、先端を天井に向けている。
 そそり立ったペニスを、絵美が口に含んだ
 根元をそっと握り、切れ込んだミゾや首のまわりを舐め回した。浅くくわえ、口蓋で締めつけたり緩めたりしながら、舌をあちこちに這わせる。左右に、前後に、嬲っていく。
 思わず声が漏れる。怒張したペニスが、絵美の口の中で快い。絵美が口から抜き、先端を軽く握って親指でいじりながら、陰茎の裏側を細かく舐め、唾液でベトベトにしていく。
「ねえ、ベッドにいこ……」
 手早く体をバスタオルで拭くと、二人は縺れるようにベッドに倒れこんだ。
「あっ……んっ……ん……ん……はぁ……」
 絵美は驚くほど敏感になっていた。絵美に愛撫されるうちにすっかり堅くなっていた祐輔のペニスも、ますます堅さを増していく。
 絵美の股間で舌を這わせた。絵美の膣はぐっしょりと濡れていた。むしゃぶりつき蜜をすすると、絵美は一段と高い声を出した。そして祐輔の頭を軽くおさえつけた。
「ねえ……」
 絵美が祐輔の顔に向けて陰部を押し付けてきた。絵美の性器がパックリと口を開けていて、中まで丸見えだった。
 絵美の性器の周りは毛深かったが、指で穴を広げると、中は綺麗なピンク色をしていた。絵美がいとおしく感じた。思いっきり舐めていると、絵美も祐輔のペニスを激しくしゃぶった。
 体を入れ換えて祐輔が上に乗った。絵美は仰向けに寝て、祐輔を迎え入れようと目の前で脚を広げた。
 祐輔は絵美の脚の間に腰を割り込ませた。絵美が勃起している祐輔のペニスを握り、濡れそぼった股間にあてがった。
 絵美に導かれ一気に中に入った。祐輔が腰を前後に動かすと、絵美が激しく喘ぎだした。
「はぁっ……あぁ……あぁ……あああっ……いいっ……」
「気持ちいいか?」
「うん、いい……気持ちいい……」
 祐輔は快感を貪る様に激しく腰を振った。
「ああ……もっと……もっと……ああああ……」
 絵美は喘ぎながらそういうと、自分から腰を動かし始めた。祐輔の腰がパンパンと激しい音をたてて絵美を突き続けた。
「あああああ! もうイきそう! そのまま! そのまま続けて!」
「でも……もう出そうだ……」
「まだ! もうちょっと我慢して!」
 祐輔が歯を食いしばって必死で腰を振ると、絵美は激しく悶えた。
 絵美が大きな声を出し、自分から激しく腰を動かして感じていた。絵美がだんだん強く祐輔の背中を抱き締めてきた。
「ああ、来るっ! 来るっ! いきそう! いくっ、いくっ!」
 絵美は祐輔の目の前で激しく絶頂を迎えた。
 祐輔も同時に絵美の中に射精してしまった。
 ペニスを抜くと精液と膣液にまみれてひどい状態になっていた。絵美のパックリと口を開けた膣から精液が垂れてきてシーツの上にこぼれた。
「中に出しちまった」
「祐輔くんはいいの、中に出しても。気持ちよかった?」
「ああ」
 絵美は荒い息のまま、布団の上でぐったりしていた。祐輔はティッシュでお互いの体を拭いた。
「絵美って……相変わらず声、でかいな」
「そう……?」
 絵美が抱き着いてくる。彼女の大きな乳房が祐輔の腕の上で潰れる。
「これ、なぁに?」
 床に置いたビニールのレジ袋を手にとって広げる。
「わあ、大きな靴!」
「ダチにせがまれて買ってやったんだ」
 健次から買ったおもちゃの靴。踵を回転させれば、中から小さなナイフが出てくる。
「なあ、絵美」
「なぁに?」
「おまえ、今、いくら持ってる?」
「ええっとねぇ……」と言いながら腕を伸ばし、ベッド最後に置いたバッグを手に取って開く。
 絵美のくたびれたバッグの中。街角で配っているポケットティッシュがぎっしり詰まっている。
「六万円あるよ」
「稼いだな」
「祐輔君、お金、ないの?」
「いいや」
 彼女に背中を向け、その場にごろりと寝転がった。
「いくらいるの……?」
 絵美が恐る恐る祐輔の顔を覗き込んだ。安物の化粧品の匂い。
「いいよ、いらねぇよ」
「ねぇ、いくらいるの……?」
 祐輔の機嫌が悪くなったと思ったのか、焦りながら恐る恐る祐輔の肩に静かに手を置いてそう聞いた。
「うるせぇな。いらねぇって言ったらいらねぇんだよ」
「じゃあ、なんでそんなこと聞いたのよぉ」
「お前が金に困ってるかどうかって思ってな」
 絵美がけらけらと笑う。
「今日、お客三人もついたって言ったよ」
「ショバはいくらとられてんだ?」
「五千円」
「ケツはヤシマ組だったな」
「うん……」
 祐輔が煙草を銜えた。絵美がライターをバックから取り出して火をつける。
「私ねえ、家、買ったの」
「家?」銜えたタバコを落としそうになった。
「お姉ちゃんと、おかあさんが出てきたときに一緒に住む家。中古で小さいけど、庭付きだよ」
「そうか。おまえのかあちゃん、もうすぐ出てくるんだったな」
 絵美の母親。脂の乗った艶のある裸体が目に浮かんだ。祐輔の初めての女。娘たちを食い物にしていたろくでなしの情夫をめった刺しにして、六年間の別荘送りになった。
「一千万もしたのよ」
「一千万!」
 思わず体を起こした。
「お姉ちゃんが出してくれたの。三人で一緒に住もうねって」
「お前ら姉妹がローンなんか組めるわけあるめえし、キャッシュだろ? どれだけ溜め込んでたんだよ」
 一千万を稼ぐために、茉莉はどれだけの男に抱かれたのか。すぐには計算できない。
「お姉ちゃん、しっかりしてるから」
「家買ったんなら金なんてねえだろ」
「ねえ、いくらいるの?」
「おまえ、しつこい」
 祐輔が絵美の体をベッドに押し倒して覆い被さった。

愚かな毒鼠どもの眠れない夜 4


4.バイシュン女子

 中学の時だった。
 絵美はあまり学校に姿を現さなかった。学校に来ても、気が付けばいつの間にかフラっと教室からいなくなっていた。しかし、不良でもなければ登校拒否でもない。父親はやくざで母親は売春婦。姉の茉莉も高校にはいかず、ホテル街のそばで援助交際をして金を稼いでいた。
 茉莉は気が強く、頭もよかった。中学を卒業するとろくでなしの父親から離れ、体を売って一人で暮らしていた。しかし、絵美は頭が弱く、父親の言いなりで体を売っていた。先生もそのことを知っていたが、絵美の父親が怖くて見て見ぬふりをしていた。
「おまえ、バイシュンしてるって本当か?」
 祐輔は絵美に訊いたことがある。まだ女を知らなかったとき。女と早くやりたくて仕方のなかったとき。バカな絵美にうまくとりいれば、やらせてもらえるかもしれないなんてスケベ心もあった。
「そうだよぉ。私って高い女なんだって」
 いつもの舌足らずな声で、あっけらかんとそう言い放った。
 発育のいい女子中学生と一発やれる。そんな触れ込みが近所で広がっているのも知っていた。頭の弱い絵美は、口答えもせずに父親のどんないうことも聞いてくる、やくざの父親の貴重な金づるだったのだ。
「お父さんはね、私さえがんばって稼いだら、家族がみんな幸せになれるんだっていうんだよ」
「んだよ、都合よくつかわれてるだけじゃねえか。毎日男とやってんのか?」
 絵美はヘラヘラ笑って「そうだよぉ」と答えた。
 絵美とこの父親は血が繋がっていない。姉の茉莉とも父親が違う。そもそも、絵美は本当の父親が誰なのかも知らなかった。
「でも、客は頭の禿げた太ったオヤジばかりだろ? 気持ち悪くねえのかよ」
「平気だよ。お腹なんてぷよっとしてて可愛いよ。それにねえ、若い子よりもエッチの時優しいし、上手なんだよ。たまに気持ちよすぎてオシッコ漏らしちゃったりすることあるもん」
「マジかよ」
 祐輔は熱くなってくる股間を絵美に知られないようにするのに必死だった。
 絵美は愛嬌があって可愛らしい知恵遅れだった。他人の悪口を言ったりするのも聞いたことはなかった。
「じゃあ、どんな男とやるのが嫌なんだよ」
「そんな人いないよ」
「嫌じゃないのかよ」
「うん、全然」
「それは金がもらえるからか」
「うんとねぇ……。お金もらわなくっても嫌じゃないよ」
「じゃあ、セックスが好きなだけなんじゃねえか」
「そうだよ」
「じゃあ、俺にもヤらせろよ」
 思い切って言ってみた。
 絵美はけらけら笑いながら「いいよぉ」と答えた。
 マジか?
 絵美とやれる。そう思うだけで足が震えてきた。
 だが、祐輔が絵美に手を出すことはなかった。
 絵美に手を出したことがばれたら父親に何をされるかわかったものではなかった。金を払えば問題なかったが、そんな金はないし、そもそも金があれば絵美で初体験を済ませることもなかった。
「田辺さんって、いい人なんだよぉ」
 いつもの鼻にかかって間延びしたバカっぽい話し方で、絵美は田辺のことをよく話した。田辺は学校の近所の鉄工所の社長で、絵美の上客だった。
「ただのスケベおやじだろ?」
「そんなこと、ないよぉ。お金いっぱいくれるし、いい人だよお」
「金をくれるからいい人なのか?」
「えっとねえ。エッチも上手だし、終わったら私のアソコとか洗ってくれるし」
「ただの変態じゃねえか」
「それに、いつも美味しいものをご馳走してくれるの。駅前のレストランのハンバーグ、とても美味しいんだから」
 そういって、絵美は幸せそうに笑った。
「しけてやがんの。あそこ、ただのファミレスだろ?」
 その時、田辺に対して覚えた激しい怒りは、嫉妬だったのかもしれない。

「ぶちのめしたいスケベおやじがいるんだ」
 そういって、仲間たちを呼び出して、襲撃計画を打ち明けた。同じ学校の不良仲間。中年親父をリンチできると聞いて、誰もがわくわくしていた。
 コンビニの前でタバコをふかしながら待った。田辺が絵美とヤり終えた後、この横にあるファミレスに必ず立ち寄るのは知っていた。
 コンビニの前で待った。
 やがて、一台の車がファミレスに入った。車から降りてきたのは、絵美と見覚えのない太った中年親父。
 あの男が絵美とヤったのか。そう思うと、胸の奥からふつふつと怒りが湧いてきた。
「あれ、あいつ、前野じゃないのか?」
 絵美を見つけた不良仲間が眉を潜めた。
「あいつ、きっとバイシュンしてたんだぜ」
 仲間たちが絵美の悪口を言い始めた。別にそれを咎める気はない。俺と絵美はそんな関係じゃない。言いたい奴には言わしてやればいい。
 二人は三十分ほどで店から出てきた。「早漏だな」といって、仲間のひとりが笑う。
 絵美と男は店の前で別れた。絵美の姿が消えた後、男が車のドアを開けた。
 全員で物陰から飛び出し、車の前を塞いだ。
 田辺が動き始めた車を駐めて降りてきた。
 別にこの男に恨みはない。むしろ、絵美を可愛がってくれている。
 しかし、絵美とヤった。
「何だ、おまえらは」
 相手が子供ばかりだったからなのか、車から降りてきた田辺が偉そうな態度で祐輔たちを睨んだが、皆が金属バットを持っているのに気付いて、顔を引きつらせた。
「お、お前ら、なんだよ……」
 祐輔が一歩前に出た。
「社長が女子中学生とヤってんじゃねえよ」
 さらに踏み込むと、膝を狙ってフルスイングした。一発で膝の骨を砕くことに成功した。
 田辺が苦痛のあまり、悲鳴を上げた。地面に崩れたところに、他の仲間たちが襲いかかった。
 皆で金属バットを振り下ろしたが、頭だけは避けた。殺してしまっては面倒なことになる。絵美のためとはいえ、少年院に何年も閉じ込められるつもりはなかった。
「奥さんと子供を裏切ってんじゃねえよ!」
「中学生女子とセックスするなんて、マジありえねえ!」
「てめえは変態か!」
 女子中学生と肉体関係を持つ変態オヤジへの憤り。
 誰もが息が上がるほど興奮していた。
 楽しかった。
 祐輔が田辺の髪を掴んで無理やり起きあがらせ、顔面を窓ガラスに叩きつけた。
 何度も繰り返し叩きつけた。
 車の窓ガラスに、血と鼻水らしき粘液の混じったものが飛び散った。

プロフィール

アーケロン

Author:アーケロン
アーケロンの部屋へようこそ!

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