fc2ブログ

キチガイたちの挽歌 6



 陽子が全身を震わせて静かに落ちた。
 ハヤトの顎からも、汗が滴り落ちている。
 いい女だった。二十万の値打ちは、確かにある。
 ペニスを抜いて、陽子の横に崩れるように倒れた。
「ねえ……」陽子が腕をからめつけてきた。「何やったの?」
 好奇心漲る目を向けられ、ごまかすように苦笑いする。
「自分で言うのもなんだけどね、私って高い女なの。そんな女を一晩好きにしていいってご褒美なんでしょ?」そう言って、顔を覗き込んでくる。
「九州の田舎やくざにお灸をすえたんだよ」
 陽子がハヤトのさらっとした髪を撫であげた。
「そうなんだ。薬で今揉めてるんでしょ、九州と」
「まあな」
「仕事は何してんの?」
「いろいろ。最近は金村さんの下でシャブ捌いてる」
 新宿では住吉会がシャブを独占的にシャブを捌いていたが、関東連合がそこに割り込んでいった。それだけでも、住吉会と一発触発は避けられない事態なのだが、関東連合とのもめごとを避けようとして、今のところは住吉会も静観している。
 しかし、国内のシャブの市場を牛耳る最大手、九州の道仁会は黙っていなかった。新宿で捌く薬は道仁会からビジネスパートナーの関東ヤクザに一手に卸すことになっている。卸売は道仁会、小売は住吉会と住み分けていて、それはもう十年以上も続いているしきたりなのだが、関東連合は道仁会以外から仕入れて売り捌いていた。
「うちが卸してやるからそれを売れ」
 二か月前、道仁会がそう警告してきたが、関東連合はそれを無視。道仁会はさらに「ウチが卸す商品を売るか全員ぶち殺されるか、どっちか好きなほうを選べ」と迫ってきた。それは道仁会からの最後通牒だった。関東連合はそれを無視して覚せい剤を捌き続けたため、連中は関東連合のメンバーを殺した。マコト。ハヤトの弟分だった。
 陽子が背中の蛇のタトゥーを指でなぞっている。
「私、強い男好きよ」
「あそこが臭い女は嫌いだ」
「最低」
 陽子がぷいっと背中を向けて布団に潜りこんだ。
「拗ねるなよ」ハヤトが陽子を抱き寄せる。
「じゃあ、もう一回して。今夜、好きなだけ抱いていいのよ、私のこと」
「お前は嫌じゃないのか?」
「嫌じゃない」そういって、唇を重ねてくる。
「タクヤさんとはどういう関係なの?」
「俺の兄貴分だよ。タクヤ総長の後輩、金村さんのタメ。普段はタクヤさんと組んでいるんだが、金村さんに声をかけられたんだよ」
「タクヤさんって羽振りいいんだって? 芸能事務所の社長でしょ? いまどきのアイドルを何人も抱えて、大成功してるって聞いたわ」
「ああ」
「昔、ホストだったのよ。私、知ってる。ギャランドゥのナンバーワンだったの」
「ああ、そうだ」
 木村タクヤは頭の切れる男だ。族ではタクヤを支える参謀として重要な地位に居座り、警察の裏をかいて伝説の東京縦断大爆走を成功させた立役者でもある。族を引退してからはホストとなり、その甘いマスクを存分に利用して力のある女どもを手中に収めた。今はホストクラブ経営の傍ら、芸能事務所を取りしきっている、関東連合でも一、二を争う切れ者だ。
「タクヤさんがどうかしたのか?」
「私に、芸能界デビューしないかっていってきたの」
「AVか?」
 陽子がハヤトの頬を抓った。
「テレビに出ないかって。お笑い芸人のお御所を気取っている奴が司会やっている、大勢の女が出てやいやい騒ぐだけの番組なんだけど、そこに出してやるって。プロデューサーの目に止まったら、芸能界デビューも夢じゃないんだって。私、売れるかな?」
「そうだな。ムーンライトのナンバーワンなんだから、そこそこいけるんじゃねえのか?」
 顔や容姿だけじゃなく、一流のホステスは一流の接客術と処世術も持っている。その辺の素人の女では歯が立たないだろう。
 陽子が布団にもぐりこんできた。ペニスを手で包んだかと思うと、ぬめっとした感覚が伝わってきた。陽子が口に含んだペニスを丁寧に舌で刺激する。鬼頭、裏筋を巧みに舐められ、ハヤトのペニスはあっという間に力を取り戻した。
「どう?」布団から顔を出した陽子が、自慢げに微笑む。
「うまいな」
「何回してもいいのよ」
「でも、約束があるんだ」
「何時に?」
「五時から。幹部会の前に、金村さんが話あるらしい」
「何よ、まだ朝の十時よ。あと七時間もあるじゃない」
 陽子がしがみついてきた。押し付けられた彼女の豊かな乳房が、ハヤトの胸でつぶれる。
 五時までにあと何発できるかな。そんな気分になってきた。
 陽子がハヤトの股間に跨り、手を自分の入り口に添えると、ゆっくりと腰を落とした。
「あああ……」
 微かな呻き声を漏らし、彼女がゆっくりと動き始めた。

キチガイたちの挽歌 7



 洒落た和風創作料理の店。ここの日本酒がうまいと隆志が勧めていた店だった。
「陽子、でかい仕事が決まったんだ」
 オールバックヘアが今日も決まっている。建設業界の大物の息子。陽子の上得意だった。
 最近までは……。
「そう。どんなお仕事?」
「今度東京で建設予定のテーマパーク関係の仕事さ。倍率が高かったんだけどうまく潜りこめた。やりがいのある堅い仕事なんだ。これで陽子にもいい思いをさせてやれると思うんだよ」
「すごいわね」
 嘘だ、と陽子は察した。嘘と判断する理由があったわけではない。直感だ。男の微妙な表情の変化で、男の嘘は手に取るようにわかるようになった。
 佐田隆志は、親のコネと資金で自分の建設会社をつくった。成功しているときはもちろん羽振りも良く、陽子にも大金をふるまってくれたが、ここのところ事業が失敗続きで会社も赤字に転落してしまっている。
「私、欲しいマンションがあるの。六本木なの。とてもいいお部屋なのよ。好きなときにあなたが会いに来れるわ」
「六本木か。いいねえ」隆志が視線を逸らせた。
「ねえ、買ってよ」
 これでマンションを買ってくれれば、この男ともうしばらく付き合ってもいい。しかし、最近は月々の手当まで出し渋っているありさまだ。
 マンションを買ってくれないと別れると言って隆志が怒ったら、その時はその時。私との別れを口にしたら、その程度にしか私を愛していなかったということ。
 私は男にすがってなんか生きない。隆志なんかあてにしない。
「そうだな、買ってあげよう」
「本当?」
「ただし、二か月待ってくれ。二か月、延期してほしいんだ」
「そんなに待っていたら売れちゃうわ。とてもいいお部屋なのよ。私じゃ手付も払えないけど、隆志なら大丈夫でしょ?」
 隆志の顔が赤くなっている。
「どうしたの? そのくらいのお金、隆志ならなんとかできるんでしょ?」
 いつも調子こいて大ぼら吹いているから、こんな目に会う。この男からは散々巻きあげた。そろそろ切っておかないと、面倒なことになるかもしれない。
「私って、隆志に迷惑かけてるかな」
「そんなことないよ」
「これ以上、隆志に迷惑かけたくないわ」
「そんなこと言って、俺と別れるつもりじゃないだろうな」
 隆志の顔がますます赤く変わり、唇が震えてきた。
「このことだけははっきりさせておく。俺はお前とは別れないからな。俺の言う通りにしろ!」
 だったら、払うもの払え、馬鹿野郎。
「なにそれ? 隆志って私の亭主なの? 相手が亭主でも、私は自分の思い通りにするわ」
 怒りで血走った隆志の鋭い視線が突き刺さってくる。握り締めた拳が震えていた。
 金を出し渋る以上、この男に従う必要はない。
「なあ、クラブのホステスをやめて、俺だけの女になってくれよ。一生楽をさせてやるから」
 そんな言葉、信用できるはずもない。
「もちろん、隆志が養ってくれるなら、やめてもいいわよ。でも、お金って、どうなるかわからないじゃない」
「俺が事業に失敗すると思ってるのか?」
「確かな将来なんてないもの。現在を犠牲にするなんて、勇気のいることなのよ」
「お前、俺のこと全然信用してないじゃん。少しは自分というものを抑えることを覚えろ!」
「あら、私は抑えられない女よ! そのことは隆志もよく知ってるじゃない」
「まあな。確かにそこが君の魅力でもある」
「隆志こそ、口に出しては言わないけれど、心の中ではお金お金っていつも言っている私のことを蔑んでいるんじゃないの」
「そんなことないよ」
 陽子の目から涙がこぼれた。
「悪かったよ、陽子。マンション買ってやるから、泣きやんでくれ」
 隆志が陽子を抱きしめた。

 騎上位で身体を躍らせる。
 タプタプとイヤらしく形を変えながら上下に揺れる乳房を隆志の目が追う。
 隆志は股間に手を伸ばして、指先で陽子の敏感な場所を摘んだ。陽子の頭の中に火花が弾けて飛び散った。
 強い刺激を受けて激しくなる腰の動きに、勢い余って時折ペニスが抜ける。
 闇雲に何度も何度も突き上げられて、陽子は背中を弓なりに反らして悦びの悲鳴を上げ続けた。
 顎が上がり身体が硬直して、息が出来なくなる!
 切羽詰まった隆志の声に、陽子もすぐ目の前に迫った絶頂へ駆け登る。何度も波のように襲う絶頂感に飲み込まれながら、隆志の最後の瞬間を待つ。
 引き絞るような隆志の声が聞えた途端、陽子の中でペニスがビクビクっと震えた。
 頭の中が真っ白くなって、全身の感覚が抜けていく中、まだ固さを失っていない隆志のペニスの感覚だけが感じられる。
「隆志、すごかったわ」
 腰を落として陽子は隆志にキスをした。この男とこうやって性を交えるのも、これが最後かもしれない。

キチガイたちの挽歌 8



 午前五時。陽が暮れると、嬌声をあげて笑いあいながら腹を探り合う、夜の蝶たちと金を持った男たちで賑わう通りだが、今は人影はない。
 ふらつく足で何とかクラブ「ムーンライト」のドアまでたどり着いた。
 ドアを開ける。床に大理石が敷き詰められた、男たちが集う夢の世界。ソファに座るだけで数万円かかる、ゴージャスな異空間が広がる。
「おつかれ様です」護衛の若いメンバーに迎えられフロアーに入ると、奥のソファに金村ツヨシと木村タクヤがすでに座ってグラスを傾けていた。
「なんだ、そのツラぁ。元気ねえな」金村が笑う。
「陽子にとことん吸い取られたか」
 事情を知っているタクヤが笑う。この店はタクヤの店で、彼女を雇っているのもタクヤ総長の指示で陽子をタクヤに届けたのも彼だ。
 店の開店は午後七時から。バーテンもまだ来ていない。関東連合の幹部会はいつも開店前のムーンライトで開かれる。
「九州に帰れと突っぱねてやったぜ」
 金村は自慢げにそう言い放ち、グラスのスコッチを煽った。それをみて、タクヤが大きくため息をついた。
「なんだよ、タクヤ。不満なのか?」金村とタクヤはタメで、お互い幹部だ。
「道仁組は筋を通している。よそのシマに土足で上がり込んで来たわけじゃない。きちんとした組織同士が互いの信頼関係のもとにビジネスをやっていたところに、俺たちが割り込んでいったんだ。ルールを破ったのはこっちだ」
 東京では、覚せい剤は極東会と住吉会の二大組織が独占的に捌いている。そして商品を卸しているのが道仁組だ。
 金村が木村タクヤに厳しい目を向けた。
「俺が言いてえのは、なんで九州の田舎ヤクザが調子こいてここいらで薬局やってんのかってことだよ。俺たちだって見ぬふり出来ねえじゃねえか」
「卸売と小売では役割が違う。今も販売は関東勢がやってるんだ。九州も喧嘩を売ってきたわけじゃない」
「おめえ、腑抜けになったんじゃねえのか?」金村の目がギラリと光る。「クラブだぁ、芸能プロダクションだぁ、何かと女使って合法的にやりやがって。俺たちの基本はシャブだろ」金村がタクヤを睨んだ。「俺たちは以前からシャブ売ってきたんだ。道仁組からやいのやいの言われる前からよぉ。それを今さら俺たちから仕入れろったあ、どういうことだ。しかも今の仕入れより高く吹っかけやがる。それに、ここらが奴らの縄張りだって誰が決めたんだよ。欲しいものは力でぶんどる。それが俺たちの世界のルールだ」
「道仁組とやり合うのか?」
「向こうはたかが二百人の組織だ。こっちは声をかければ二千は集められる。それに、ハヤトみたいなキチガイもいるんだ。なんなら、博多に乗り込んでもいいぜ」
 金村がハヤトの肩を叩いた。「お前はどう思う?」
「全員ぶち殺せば、いいじゃないですか」
 金村が満足げな顔でハヤトの肩を叩いた。タクヤがまたため息をついた。
「今後、道仁会と揉めることになるので用心しろ。今夜の幹部会でも伝達があるはずだ。とことんやってやるぜ」
 金村がタバコの煙を吐き出す。
「ハヤト、メデューサのリョウってガキとその女にヤキ入れてこい。女はキョウコとかいうレディースの頭だ」
 メデューサは敵対する暴走族だ。
「知ってますよ。赤薔薇連合とかいうブスの集まりです」
 金村が大笑いする。
「それに、キチガイにやられた。リョウスケが襲われたんだ。重傷だ」リョウスケは関東連合の幹部だ。
「やったのはマムシだよ」
 ハヤトの目がぎらっと光った。マムシ。メデューサOB。正真正銘の極悪キチガイだ。
「マムシの奴、中防にシャブ食わせて兵隊にしている」タクヤが言った。「ナイフで刺させるんだ。相手は十六歳未満だ。別荘暮らしも一年くらいで済むからな」
「えげつねえこと、やらせやがる」
 シャバにいてはいけない男。中学時代からポン中で、メデューサOBでもマムシと関わりたくない者がほとんどだ。相手がヤクザでもむかついたらすぐに刺し、女だと攫って強姦する。中学の頃から強盗、リンチ、強姦の常習者で手が付けられない本物のキチガイだ。笑ったとかいって女子生徒を半殺しにしてレイプした事件は有名だ。
 そんな極悪人だから、中学二年の時少年院に収監され、出所した十七歳のとき、路上で肩が当たったといって文句を言ってきた大学生を刺殺し、少年刑務所にぶち込まれた。二月前に出所したばかりだ。
「奴にけじめをつけるんだ。このままじゃ、沽券に関わる」
 ハヤトは「やります」と力強く答えた。
 しかし、マムシは用心深い男だ。自分の居場所は仲間にも言わないし、襲う相手のことを徹底的に調べて奇襲をかける。気合を入れてかからないと返り討ちにあってしまう。
 会合は一時間ほどで終わった。
「陽子はどうだった?」
 金村が後輩を連れて店を出て行ってから、タクヤが訊いてきた。
「いやあ、ありがとうございました。凄い女ですよ、あれは」
「そうだろ。すげえ高い女なんだ」タクヤが笑いながら、バランタインをグラスに注いだ。
「どこかで誰かが糸を引いているかもしれない」
「えっ? 何がです?」
「関東連合をつぶそうとしているのか、道仁会をつぶそうとしているのか、あるいは両方か。お前も用心しろよ」

キチガイたちの挽歌 9



 赤坂一つ木通りのシティ・ホテル下の道路沿いのレストラン。
 陽子はフレンチ・トーストと珈琲で遅い朝食をとっていた。白いポルシェから降りた平田がニコニコと笑いながら近づいてくる。
「やあ、陽子。お店の外で会うのは始めてだな。太陽の下でも、やっぱり君は綺麗だよ。艶かしくて惚れ惚れする」
「あら、社長。相変わらずお口がお上手ですこと」
「今日は、私とデートしてくれるんだってな。北原って人から連絡があった」
「ええ、いつもいつも社長に親切にしていただいているんですもの。今日は、私がお返ししますわ」
「どこに行こうか」
「すべて、社長におまかせします」
「今夜は私と最後の一線を越えてもいいと覚悟していると、北原くんは仄めかしていたが、本当にそうなのかな?」
「はい、社長、そのつもりでいます」
 わざと顔を赤らめて答える。
「結構、大胆なんだな。気に入ったぞ。このまま、上のホテルに直行してもいいんだけれど、それじゃあ、即物的過ぎで、情緒も面白みもないよな。まずはどこかでおいしいものを食べて軽く飲もうか。君のこと、いろいろ聞きたいしな」
「すぐばれるから、先に言っておきます。私、食い意地の張った、セックスに貪欲な女なの。社長、本当の私の姿を知ったら、がっかりなさるわ」
「面白いことを言うなあ。普通の女は自分からそういうことは言わないぞ」
「本当のことなんです。私、おしとやかで、上品だと思われているから」
「無理じいはしないからな。俺とやるのが嫌になったら、何時でも言ってくれよ」
「ですから、私、セックス大好きなんですの。私から嫌になることはありません」
「ハハハ、面白い子だなあ。さあ、食べにいくぞ! 車に乗った、乗った。それから、陽子に乗って、君の大好きなセックスだ」
「腹が減っては戦はできない、でしょ」
「ハハハ、でも、俺はそんなに出来ないぞ。一発か二発だぞ」
「女は、内容がよければ、回数なんかに、こだわらないのよ。パパ」

 立ち上がった平田の股間は、もうはちきれんばかりに膨らんでいた。
 平田がベッドに座ると、代わりに彼の足元に陽子がひざまずいた。
 ズボンのファスナーを下ろすと、勢いよく勃起したペニスが飛び出した。
 赤く剥き出しの先端を指の腹で摩ると、平田がビクリと身体を震わせた。
「陽子……跨いでごらん」
 平田に促された陽子は、立ち上がるとベッドに座った平田の股間を跨いだ。
 陽子は黙って平田のペニスを掴んだ。そして、指を添えて角度を確かめながら、そのまま、ゆっくり腰を落としていった。
 ヌメっと平田のペニスの先が陽子の膣口を押し広げた。半分ほど入ったところで、陽子は腰をくねらせた。
 上半身を屈めて、二人の性器が結合している一点を見つめながら、陽子は歓喜の声をあげた。
 喉元から絞り出された平田の唸るような声を聞きながら、陽子はゆっくりと腰を落として、根元まで剛直を挿入していた。
 陽子はぴったりと股間を合わせ、円を描くように股間を擦りつけていた。平田は陽子の腰に両手を回して抱き寄せた。そして、髪の毛の匂いを嗅ぎながら、腰を下から突き上げ始めた。
 顔に押し付けられた陽子の大きな乳房を、平田が手で乱暴に揉みしだいた。
 固くなった乳首を指を摘ままれて、陽子は小犬のように泣いた。
 やがて陽子は大きく上体を逸らして絶頂に達した。
「ああ……私……もうだめ……」
「何言ってるんだ、陽子。これからだぞ」
 平田は陽子をベッドにうつ伏せに寝かせると腰を持って引き上げた。
 陽子はベッドの縁に両手を突いて平田に尻を突き出した。平田は両手で陽子の尻を掴み、背後から貫いた。
 陽子が、高い声をあげながら、背中を弓なりに反らした。平田は陽子の尻肉つかむと、さらに奥に到達するように、ぐん、とペニスを突っ込んだ。
 陽子はシーツに乳房を押し付け、張りのある尻をさらに高く掲げた。
「陽子はいやらしいなぁ……そんなに好きなのか?」
 ますます、スピードアップしていく平田の腰の動きに、陽子は悲鳴のような声をあげ続けた。
 やがて平田も切羽詰った声を上げ、陽子の中で弾けた。
 二人の動きが止まった。つい先ほどの淫らな嬌声が嘘のように、部屋は静寂を取り戻した。
 しばらくして、忘れていた呼吸を思い出したように、二人は、息を整えた。そして、快楽に潤んだ瞳で、お互いを見つめ合った。
「ああ……よかった……」
 陽子はシーツに腹ばいになって尻を高く掲げたままぐったりしていた。
 陽子から出た平田はベッドに座ると、タバコに火をつけて一息吸い込んだ。
とうとう、平田社長に、身体を許してしまった。しかし、別にどうってことはない。いつもの手続きだ。
 所詮、私は、節操のない、緩い女。不潔で淫らな女。
 だから、どうだって言うの。
 純潔や貞操という言葉には、昔から縁がない。
 携帯が鳴った。平田がベッドの上でうとうとしていた。
「はい」
「俺だ」
 田村からだった。

キチガイたちの挽歌 10



 通りの路上に二台の車が停まった。五人の男が車を降りる。脇道に入ると、アパートの前の道で数人の女が固まって話をしていた。近づくにしたがって、闇の中で影がはっきり見えてくる。特攻服を着た女が三人。改造バイクが停めてある。
 彼女たちの姿を横目で見ながら横を通り過ぎ、最初の曲がり角を折れる。
「どうだ、いたか?」
 コウイチが欲望をぎらつかせた目を向けてくる。これからレディースを犯れるので、張り切っている。
「暗くてわからなかったが、多分あの中にいた」ハヤトは角の向こうから聞こえてくる女たちの会話に耳を澄ませた。
「部屋に入ったところを押し込もうぜ」
 コウイチがこれ以上待ちきれないといった感じで聞いてくる。シュウジとジュンとケイタは、黙って指示が下りるのを待っている。
「あまり騒ぎになると近所の住人に警察を呼ばれる。外にいるうちに拉致ってしまおう」
 そう言ってスタンガンを取り出した。スタンガンは二つ。女は三人。同時に二人気絶させても、残った一人が騒がないか。そう思っていると、バイクのエンジン音が聞こえた。
「ラッキー! どこかに行くみたいだ」あとをつけてどこかの暗がりで拉致るか。そう思っていると、横を一台のバイクが通り過ぎて行った。顔を覗かせると、アパートの前で残りの二人が話し込んでいる。
「あの中のどちらかがリーダーだといいんだが」
「とりあえず、あの二人を拉致って犯っちまおうぜ。違うなら、バイクで走っていたさっきの女をあの二人に呼び出させればいい」
「それで行こう」
 ジュンに車のカギを渡し、その場で待機する。裏から回り込んで通りに戻ったジュンとシュウジが、車にのって脇道に入ってきた。残っていた四人が角から出て、二人の女に近づいていく。
 女の傍に近づいた。二台の車が横を通り過ぎる時、四人が脇に寄った。車が停車すると同時に、ハヤトとコウイチが女の首筋にスタンガンの電極を押し当てた。
 崩れ落ちる女の身体を抱えると、前後の車の後部座席に女を引きずり込み、そのまま走り去った。

「この野郎! 降ろせよ、こらぁ!」
 すぐに正気に戻った女は突然のことでしばらく硬直していたが、やがて後部座席で暴れ出した。
 金色に髪を染め、いかにも暴走族ですと言わんばかりの特攻服を着ている。
 これから自分がどうなるのか見当も付かず恐ろしいのか、威勢がいい割には声が震え、歯がカチカチと音を鳴らしている。
「てめえ、コラ! 抵抗すんな!」
 女を押さえていたケイタがナイフをつら突かせても、女は抵抗をやめない。
「キョウコってのはお前か」女がハヤトを睨みつけた。
「だったら、何よ」
「お前の男を呼び出せ。リョウってガキだ」
「ふざけんなよ。赤薔薇連合のヘッドが自分の男を裏切るわけねえだろ!」
「どうせ、俺たちの言うことを聞くことになるんだ。痛い目見る前に言うこと聞いておけ」
「ふざけんな!」叫びながら掴みかかってくる。さすが、気の強い女だ。
 キョウコの腹にハヤトが拳をめり込ませた。
「うげっ」
 強烈な鈍痛にキョウコが息を詰まらせた。車の中で吐かれると困るので力を抜いたが、女相手なので結構効いたようだ。苦痛に顔をゆがめ、彼女の目尻から涙が零れ落ちた。
「これくらいのことで泣いてんじゃねえよ。これからどんな目にあわされるのか、わかってんのか?」
「あたいをどうすんのさ!」
「殺して埋めちまうんだよ」
「やれるもんなら、やってみろ!」
 ハヤトはキョウコの胸倉を掴んで引きよせた。
「いいか、女だからって手加減してもらえるとは思うなよ。俺たちは関東連合なんだ。殺されなくても、その顔をズタズタにされることくらいは覚悟しておけ」
 そういって、指にはめているスカルリングでキョウコの頬を撫でた。ハヤトの低く唸るような声に、キョウコが顔をこわばらせた。

続きを読む

プロフィール

アーケロン

Author:アーケロン
アーケロンの部屋へようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR