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鮮血のエクスタシー 目次

鮮血のエクスタシー

金で雇われ犯罪組織の幹部を無慈悲に殺す、レズビアンの殺し屋アンナ。仕事の後は風俗嬢と激しく絡み合い、ビアンバーで初心な女を誘う。しかし、アンナの存在に気づいた犯罪組織が、じわじわと包囲網を狭めてくる。

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鮮血のエクスタシー 1


鮮血のエクスタシー 1

「今まで殺した奴は、百人は下らねえよ」
 子分の運転するベンツの後部座席に座った途端、店では口にしなかったきわどい話を始めた。自分が今までしてきたあくどい所業を自慢している。大物ぶっていても所詮はチンピラと変わらない。
 男の名は権藤。権藤組の組長であり、広域暴力団山梨組の直参でもある。権藤が部下に経営させているクラブで働き始めて三日目、早くも店に顔を出した彼は、アンナを見るなり岩のような顔を崩した。今夜が初対面なのに、ソファに座るなり岩石のような顔を突きつけ、「俺のことを知っているか」と聞いてきた。
「もちろんですよ。権藤親分」
 そう答えてやると、まんざらでもない顔をした。
「親分さんのような男気のある人が好きなんです」といって、膝に置かれた権藤の手にそっと触れると、いやらしそうに顔を歪めた。
「好きなのは俺の持っている金だろ?」
「まあ、ひどい。私はそんな女じゃないですよ。そりゃ、三拍子揃っていれば文句なしですけど」
「三拍子?」
「男気とお金、それに、うふふ……」
「もう一つは?」
「女の大好きなもの。でも、女の口からは言えないものです」
 そういって権藤のズボンの前のふくらみに目を向けると、その視線に気づいた権藤が豪快に笑ったのだ。
 三拍子揃っているところを見せてやるぜ。そう言って権藤は店が終わる前にアンナを外に連れ出したのだ。
 ベンツがホテルのエントランスの前に停まった。
「ここらで一番いいホテルだ。庶民はなかなか泊まれないホテルなんだぜ」
 安い部屋でも一泊十万はするらしい。権藤は先にベンツから降りると、アンナの手をとって急かすように車から引きずり出した。そして、助手席から若頭の亀梨が降りてきた。
「どうぞ」亀梨が先を歩いてエレベータに乗った。どうやら、部屋は亀梨がとっていたようだ。エレベータを二十階で降りて部屋に入る。
「悪いが調べさせてもらう」そう言うなり、亀梨がいきなり身体に触れてきた。アンナが小さな悲鳴をあげる
「ボディーチェックだ。我慢してくれ。こいつはやたら心配性でな。俺も困っているんだよ」
 権藤が苦笑いしている。亀梨がアンナのバッグを取って、中身をソファにぶちまけた。化粧品に手鏡、部屋と車のキーに常備薬。
「ああ、それは」
 亀梨が黒い塊を手にとった。手早く広げられる。
「やだぁ」アンナが両手で顔を覆った。黒のTバックのショーツだった。
「なかなか色っぽいのをつけているんだな」
 権藤が亀梨の手から奪い取ったショーツを鼻に近づけた。アンナが慌ててそれをひったくると、丸めてバッグの中に押し込んだ。権藤が下品に笑っている。
「てめえも、少しは女心ってのに配慮しろ」
「どうもすみませんでした。ごゆっくりくつろいでください。自分はロビーで待ってますので」
 亀梨は二人に一礼すると、部屋から出ていった。
「悪かったな、恥かかせちまったみたいで」
 権藤が後ろからアンナにしがみついて、大きく張り出した胸を揉んだ。
「シャワーを浴びさせて……」
「そんなことをすれば、匂いが流れちまうじゃねえか」
「だめ……」
 正面から抱きすくめようとする権藤の肥った体を押し返し、手を後ろに回してドレスのホックをはずした。
「ベッドで待っていて。すぐに済ませるから」
 赤いドレスを肩からスッと落とす。黒のブラとショーツ姿になったアンナの見事なプロポーションに、権藤の目が釘付けになる。
「もう、嫌だわ。あまり見ないで」
 権藤の視線から逃れるようにバスルームに入ると、ドアを閉めた。アンナはブラとショーツを外して全裸になると、洗面台においてあった消毒済みグラスを手に持ち、グラスの底を鏡にたたきつけた。
 大きな音を立てて、鏡が砕け散った。アンナの大きな悲鳴を聞き、バスローブに着替えていた権藤がバスルームに飛び込んできた。
「ごめんなさい。水を飲もうとしたらうっかりグラスをぶつけちゃって」全裸のまま、アンナはその場にしゃがみ込んだ。折りたたんで洗面台の横に置かれていたタオルを手に取り、広げて床に飛び散った鏡の破片を掻き集めた。
「そんなもの、あとでホテルの従業員に片づけさせろ」
「でも、親分さんに怪我をさせるといけないから」
 アンナはしゃがんだ姿勢で権藤に背中を向け、床を見ようと頭を下げた。ボリューム感のある尻が、権藤の目の前に晒されているはずだ。権藤の注意を自分の尻に向けさせ、アンナは大きな破片をタオルの中に素早く隠した。
「きゃ!」
 権藤が尻に手を出してきた。
「いいケツしてやがる。そんなものはほっておいて、早くシャワーを浴びろ」
「じゃあ、親分さんもご一緒にどうです?」アンナが悪戯っぽい目を向ける。「洗ってあげるから」
 権藤の顔がにやけた。アンナが手を伸ばし、権藤の身体からバスローブを剥いだ。バスローブの下は全裸だった。ペニスがすでに勃起していて、その表面に凹凸が目立っていた。いくつもシリコンを埋め込んでいる。
「嬉しいわ、もう、こんなになって」
 権藤のペニスにそっと触れる。
「じゃあ、念入りに洗わせてやるよ」
 権藤が先にバスルームに入った。アンナはガラスの破片を包んだタオルを持って、彼の後に続く。
 シャワーを捻って温度を確かめ、湯の温度を調節する。その間、権藤はアンナの尻や胸に指を這わし続けていた。
「お背中流しますね」
 権藤に背中を向けさせて、シャワーをあてる。手で男のがさついた肌を撫でると、そっと身体を背に当てた。
「逞しいわ……」
 豊かな乳房が男の背中でつぶれる。
「俺も洗ってやるよ」
 権藤がいきなり振り向いた。ノズルを持つ手が跳ね上げられ、しぶきが飛び散って権堂の顔を濡らした。
「あっ、ごめんなさい」
 アンナが棚に置いたタオルにそっと手を伸ばした。
「顔を濡らしちゃったわ」
「構わねえよ」
 アンナが権藤に抱きついた。後ろに回した両手でタオルからガラス片を取り出すと、気づかれないようにそっと権藤の首にあてがった。
 バスルームの壁と天井が、一気に赤に染まる。権藤は両目を見開いたまま、バスタブの中に倒れ込んだ。数秒間身体を痙攣させると、そのままの姿勢で動かなくなった。大きく開いた権藤の両脚の付け根に、グロテスクなペニスがまだ鎌首を持ち上げていた
「何が立派なもんか。あんたと同じ、グロテスクで醜くて吐き気がするわ」アンナは天井を向いているペニスに湯をかけた。
 身体に浴びた返り血を、ボディーソープで丁寧に落としていく。髪に血はついていなかった。浴室内はむっとする血の匂いで噎せ返るようだった。
 敏感な襞に指が触れた途端、全身に電流が走った。知らぬ間に身体の奥が疼いていた。今夜は思い切り感じることができるかもしれない。
 指紋は一切残していないはずだ。バスルームの外に脱ぎ捨ててあったドレスを身につけ、部屋を出る。非常階段のドアを開けて上と下を確認する。人の気配はない。一度ドアを閉めればホテルに戻ることができなくなるが、非常階段からならロビーを通らずにホテルの外に出ることができる。ロビーにさっきの手下が待っているはずだ。
 亀梨。なかなか手ごわそうな男だった。
 非常階段を駆け下り、裏口からホテルの外に出る。
 人ごみに紛れてホテルから離れていく。どこで権藤の配下のものが目を光らせているかもしれないのだ。
 人気のない広場に出た。携帯電話を取り出し、登録していた番号を呼び出す。
「あら、あなた」沙羅の済んだ声が聞こえてきた。身体の奥がずきんと疼く。
「今夜、いつものホテルで待ってるわ」
 それだけ告げると、アンナは電話を切った。

鮮血のエクスタシー 2


鮮血のエクスタシー 2

 虐めてほしい……?
 恥ずかしいことされたいの?
 恥ずかしいことされて、それを人前に晒されてみたいの?

 一糸まとわぬ恥ずかしい姿で、後ろ手に縛られていた。ベットの上で足を大きく広げられ、粘液を垂れ流している女の大事な部分を晒す惨めな格好が、沙羅の目の前にさらけ出されている。自分の恥辱的な姿を思い浮かべると、全身に鳥肌が立って震えてきた。
 沙羅に二の腕や肩を撫でられ、アンナが声を上げて身体を震わせた。
「虐められると、興奮するんでしょ? そうなんでしょ? 素直に認めなくっちゃ。自分が虐められて感じる変態マゾだって」
 冷たい声で言い放つと、沙羅がアンナの尻を掌で叩いた。
「いや……」
「ちゃんと言いなさい。虐めてほしいんでしょ?」
「虐めて……」
「恥ずかしいこと、して欲しい?」
「恥ずかしいことを、いっぱいして……」
「それが、あなたの願望なのね」
「そう……」
「やっぱり。あなたはやっぱり変態マゾよ。 虐められて感じる、変態マゾなの」
 言葉で虐げられるとこの後の展開に対する黒くて甘い期待感が心に広がり、アンナの鼓動はさらに早くなった。
「じゃあ、その虐められて感じる変態マゾは、今何をされたいのかな? よくわかるように教えなさい。大きな声ではっきりと。それとも、もっとお預けにしてほしいの?」
「いや……」
「虐めて欲しくてたまらないんでしょ? この変態!」
 変態……。
 虐めて欲しい……。
 もう、我慢できない……。
「苛めて……。バイブで……乱暴にして……」
 その言葉が自分の口から発せられた瞬間、あまりの恥ずかしさで気を失いそうになった。唇が細かく震えているのが、自分でもわかる。
 恥ずかしさで心臓の鼓動も早くなり、息も熱くなっていた。
「そんな小さな声じゃ、何言ってるのか全然聞こえないわ。どこをどうやって苛めてほしいのか、もっと、大きな声ではっきりと言いなさい。そうしたら、虐めてしてあげるわ」
 アンナの興奮がどんどんと高ぶっていった。
 我慢の限界だった。
 身体の奥から、熱くて粘り気のある粘液がとめどなく溢れているのが自分でもよくわかる。恥ずかしくて、気が変になりそうだった。
「バイブで……一番奥を……めちゃくちゃかき回して……」
「そんな恥ずかしいお願い、よくできるわね。変態!」
 不意に脚を開かれ、そのままぐっと手前に引き寄せられた。襞と尻肉がさらに開かれ、羞恥心が増大する。
 アンナが大声をあげて仰け反った。
「あそことお尻の穴が丸見え……。すごく恥ずかしい恰好だわ。それに、こんなにびちゃびちゃに濡らしちゃって……」
 沙羅が左右に開いたアンナの襞を、指でなぞる。
「じゃあ、虐めてあげる」
 沙羅がバイブを手にとる気配が伝わってきた。身体の奥がキュンと緊張する。
「これ、欲しい?」
 沙羅がバイブをアンナの口元にあてる。
「ほ、欲しい……」
 アンナがバイブに舌を這わせる。額から汗が流れ落ちる。
「自分から、足を開きなさい」
 アンナは目をぎゅっとつむり、両足が震えるほど限界まで開く。まるで自分の恥ずかしい部分を見てくださいと、お願いするかのように……。
 沙羅が両手をアンナの尻肉に添えて上に持ち上げると、肛門が上を向いた。
「あそこもお尻の穴も丸見え……。全裸で……大また開きで……全部……胸も、あそこも、お尻の穴まで……恥ずかしいところが全部丸見え……」
 被虐の興奮が全身を駆け巡る。アンナの羞恥心は頂点を迎えようとしていた。熱く疼いている部分が、すごく敏感になっているのがわかる。
 大きく開かれた両足の間に沙羅がバイブを這わせる。濡れそぼった部分の周辺を彷徨いながら、アンナが溢れさせた粘液を掬いとっていく。
「早く、入れて……」
 アンナが尻を振った。それを合図に、一気にズブズブと侵入してきた。
 桁違いの快感に、アンナは全身を震わせた。熱い蜜壷が、卑猥なオブジェを飲み込んでゆく。何の抵抗も無く一気に根元まで挿入された。押し出された粘液が蜜穴から溢れ、太腿を伝わってショーツの上に落ちた。
 沙羅がふふっと鼻で嗤った。
「散々焦らされた後だから、すごく気持ちいいんでしょ?」
「いい……気持ちいい……」
 バイブで膣の中をかき回される。アンナは身体をのけぞらせて叫んだ。唇を震わせながら、ひたすら快感を貪る。
「欲しくて欲しくて、仕方が無かったみたいね。本当に恥ずかしい女……」
 快感を求めて尻が勝手に動き出す。くちゅくちゅと卑猥な音を立てながら、沙羅が奥まで挿入したバイブで激しく肉壁を刺激する。
「見ているこっちのほうが恥ずかしくなるわ。いやらしい音させながら、お尻まで振っちゃって」
 沙羅の人を蔑む低い声が、アンナの膨張した被虐心に火をつける。奥まで挿入されたバイブを、肉壁でぐっと締め付ける。
 突然、新しい快感が、背筋を走った。沙羅の舌が、肛門の上を這っている。
「ああっ、そこはだめ!」
「嘘、ここも気持ちいいくせに。私はあなたのことは何でも知っているのよ」
 沙羅が舌を肛門に押し込んできた。
 体の奥がかき回される。腰椎から上がってきた電流が背中を貫き、アンナは悲鳴を上げた。
「ここ、凄く気持ちいいんでしょ? あなたの身体のことは、私が一番よく知っているわ」
 アンナがまた悲鳴を上げた。沙羅がバイブの先で、子宮の入り口を擦りあげる。アンナの弱点を、沙羅が巧みに攻め続ける。
 一気に追い詰められたアンナは背中を大きく反らせると、腰を激しく痙攣させながら、絶頂に達した。
「なによ、もうイっちゃったの?」
 沙羅が、アンナの尻にキスをした。
「あなたの恥ずかしい声、しっかりと聞かせてもらったわ」
 達する時の恥ずかしい声を聞かれたと思うと、体の奥の方からゾクゾクとした感覚が這い上がってきた。まるで、体中の神経の上を毛虫が這うような感覚だった。強烈な被虐感を伴うその感覚に、アンナは酔いしれた。
 アンナは、自分の痴態を凝視され、支配され、服従する喜びで満たされていた。ただひたすらこの女に服従し、支配されるという被虐の快感……。
「まだまだよ。まだ許さないわ。あなたの気が変になるまで、今夜は苛めてあげるから」
 アンナにより一層の快感を貪らせるため、沙羅のバイブはその後も激しく動き続けた。

 顔に仄かな熱を感じる。唇に柔らかい感触。目を開けると、沙羅が微笑んでいた。
「どう、満足した?」
 思わず顔をそむける。さっきまでの激しい羞恥プレイでの興奮がすっかり治まっていた。
「正気に戻っちゃったから、恥ずかしいんでしょ?」
 沙羅が抱きついてくる。
「私も良かったわ」
 沙羅が目の前に洗ったばかりの双頭バイブをつき出した。沙羅の裸体を両手でつき放すと、アンナはベッドを降りてバッグから封筒を取り出した。
「はい、これ」
 金の入った封筒を、沙羅の前に投げ出す。
「満足したらとたんに冷たくなるのね。一発やり終えたスケベオヤジみたい」
 封筒の中の金を数えながら、沙羅が拗ねたような顔で口を突き出した。「どうせ、私はビアン専用の風俗嬢よ」
「沙羅」アンナが沙羅の身体を抱きしめた。上品な香水の香りが鼻腔をくすぐる。「もちろん、あなたをただの風俗嬢だとは思っていないわ。私にとって大切な人」
「あなたは、私にとっては上得意のお客様」
「意地悪」沙羅の鼻を指でつつく。
「どうしたの? 今日は凄く燃えていたじゃない。普通のプレイじゃ満足できないって言いだすんだもん、びっくりしちゃった」
「でも、どうして私が虐められたら感じる女だってわかったの?」
「これでもプロなの。大切なお客様の嗜好はそれとなく探り出すことにしてるの。それに、あなたは典型的なマゾ」
「どうして?」
「人をいたぶるのが好きな女に、マゾが多いの。サドじゃなく」
 アンナがどきっとして沙羅を見た。
「人をいたぶる? 私が?」
「違う? 時々、凄味のある目をする時があるの。サディスティックな、男をいたぶる女の目よ。そんな女は、自分もいたぶられたいと思うものなの」
「そうかしら」
 アンナはその場をごまかすようにセーラムライトを取り出して火をつけた。吐き出した煙で、二人の間にぼやけた幕が下りる。
「ねえ、白人の女のあそこって、本当にチーズの匂いがするの?」沙羅が訊いてきた。
「なに、それ」
「あなた、白人の女とやったことあるって言ってたじゃない」
「いったけど、チーズの匂いなんてしないわよ。不潔にしたら、日本人だってそんなニオイするんじゃないの」
 アンナの冗談に、沙羅が笑っている。アンナがセーラムライトの箱を沙羅に投げ渡したとき、テーブルに置いた携帯電話が鳴った。
「だれ、女?」沙羅が画面を覗き込もうとする。
「仕事の話よ」
 彼女の身体を押し返すと、アンナは携帯電話を持ってベッドから離れた。
「今、いいかな」大島の低い声が流れてきた。
「ええ」
 バスルームに入ると、ちらっとベッドのほうを見た。沙羅がタバコを吸いながらテレビを見ている。プロの高級風俗嬢なのだ。彼女も心得ている。
「お見事だったね。ニュースを見たよ。残りの金は振り込んでおいた。確認してくれたか?」
「信用してるわ」
「続きの仕事も受けてくれるね」
「リスク次第ね。詳しい話を聞いてから決めるわ」
「時間はあまり空けないほうがいい。やられたら間髪入れてやり返すのが連中のやりかただから。勝手に暴れ回られても困るんだ。明日、いつもの場所で。どうだい?」
「オーケー」
「それと、あんたが欲しがっていた情報が入った。山岡幸一の件だ」
 心臓がどくっとした。悪寒で鳥肌が立ち、背中に冷たい汗が流れる。
「あんたの言っていた通り、先週刑務所から出てきたよ。今は無職で居酒屋通い。出てきてそうそう店のバイトを口説いている。ありゃ、またやるな」
 唾を飲み込む。脳裏に当時の悪夢が突然よみがえってくる。
「あんたが関わるような奴じゃないな。女子高生に突っ込んで十年。クズのような男だ」
「いいの、個人的な問題だから」
「誰かの敵討ちかい?」大島が意味ありげに言う。
「詮索は無用よ。後でメールで送っておいて。情報料は振りこんでおくわ」
「貸しにしておくよ」
「人に借りを作るのは嫌いなの」
「わかったよ。すぐに送る。明日、いつのも場所でよろしく」
 大島が電話を切った。胸がまだ高鳴っている。山岡幸一。すぐに地獄に落としてやる。
 ベッドに戻ったアンナを見て、沙羅が顔を曇らせた。
「どうしたの? 顔が真っ青よ」
「えっ?」思わず頬に手を当てる。「大丈夫よ」
「さっきの電話でしょ? 何言われたの?」
「大丈夫だって。心配しないで」
 沙羅に抱きつき、彼女にキスした。

鮮血のエクスタシー 3


鮮血のエクスタシー 3

 大きく開いたドレスの胸元を、女はしきりに気にしていた。
 岩丸は舐めるように目の前の女を見た。大きく張り出した胸と尻、そして鋭く括れた腰。美人ではないが、男を欲情させる怪しい目と唇。
 女が媚びた視線を寄越した。自分の身体をいくらの金に換えることができるのか、早く知りたがっている。そのために売春マンションと呼ばれるこの怪しい場所まで来たのだ。
「借金はいくらあるんだ?」
「二百万円ほどです」
「服を脱げ」
「えっ?」
「裸になれ。全部脱ぐんだ」
 女が戸惑っていたのは一瞬だった。背中に手を回し、ドレスのファスナーを降ろすと、肩からドレスを落とした。ドレスと同じ、真っ赤な色のブラとショーツをつけている。ブラを外すと、見事なバストが飛び出してきた。
 岩丸が思わずつばを飲み込む。久しぶりのヒットかもしれない。
 ショーツを脱いで全裸になった女が、前を隠そうともせずに岩丸の前で直立している。大きく張り出した尻と胸は見かけ倒しではなかった。陰毛はかなり濃い目だが、金持ちの中年オヤジたちは陰毛の濃い女を好むものが多いので、ちょうどいい。
 まさに、俺の下で働くために生まれてきた女だと、岩丸は思った。
 女にくるりとまわれというと、背中を見せて見事な尻を向けた。
「悪くないな」
 岩丸の言葉に、女が顔を綻ばせる。
「だが、裸を見せるだけの仕事は、俺の店にはねえ。わかるか。お客さんに奉仕してもらわないといけねえ。うちに来るのは社会的地位の高い金持ちのお客さんばかりだ。客は高い金をあんたに払う。あんたはそれに応えなくちゃいけねえ。俺の言っている意味が分かるな」
 女が黙って頷いた。
「幸い、あんたはいい身体をしている。お客さんたちにどう奉仕するかは、覚えればいい。俺が直接指導してやる」岩本がにやりと笑った。
「まず、あんたがどれほどできるのか、見せてくれ」
 女を傍に呼ぶ。たしかに胸が大きい、いい女だ。
「まずは、しゃぶってくれ」
「はい」
 岩丸の脚の間に割り込むとズボンのベルトを外した。ファスナーをおろしパンツごとズボンをずらす。脚からズボンとパンツを抜くと、岩丸の股間を大きく開いて顔を埋め、ペニスを口に含んだ。女の舌の使い方をじっくり観察する。舌で転がすように亀頭を刺激する。男のツボをうまく押さえている。風俗経験者だとわかった。それも、かなり若いころからの。しゃぶり方もなかなかのものだった。
 いい身体をしているし、テクもある。こんな女、なかなか手に入らない。
 この女は知り合いの風俗嬢から岩丸のことを聞いたらしい。借金で首が回らないので使ってほしいといって、ここに転がり込んできたのだ。
 女の口の中で、ペニスが完全に勃起した。
 シノギのため自慢の巨根をフルに活用し、若い時は三十人の金持ち中年女をこました。裏社会に住処を得たばかりの世間知らずの若い女の中には、岩丸に生意気な口を聞く者もいたが、そんな女どもは拉致して薬を使って次々に奴隷にしてやった。
 生意気な女を虐げて稼ぐのが俺の何よりの生きがいなんだ。お前は気をつけろよ。股間でペニスにむしゃぶりついている女を見下ろしながら、岩丸はほくそ笑んだ。
 最近は大麻と覚せい剤で乱交パーティーを催す裏風俗が好調だ。奴隷にした若い女に覚せい剤を仕込み、マリファナでラリった客とはまらせる。男も女もよがりまくり、リピーターが増える。
「ねえ、親分さん……」
 口から離したペニスを手でしごきながら、女が上目使いで潤んだ瞳を向けてきた。
「我慢できなくなったのか?」
 女が黙って頷く。
「四つん這いになってケツをこっちに向けろ」
「はい……」
 女は床に手と肘を突き、重量感のある尻を岩丸に向けた。岩丸は机の引き出しに隠していた覚せい剤のパケを取り出すと、封を破って結晶を机の上に出した。唾液で湿らせた指先を押しつけて結晶を付着させると、四つん這いになっている女の膣に指を押し込んだ。
「やんっ!」女がくすぐったそうに声を上げる。
「何だよ、もうぐしょぐしょじゃねえか。俺のでかいチンポしゃぶってたんで、興奮しちまったのかい?」
「親分さん……早く入れてほしい……」
「もうしばらく待っていろ」
 尻を振ってねだっている女の尻をスッとなでると、女が悲鳴を上げた。
「敏感になってるじゃねえか。そろそろ効いてきたな」
 岩丸は女の尻の後ろに脛立ちになり、ペニスを一気に根元まで押し込んだ。
 女が悲鳴を上げて身体を仰け反らせた。
「どうだい? いいだろ? もっと気持ち良くしてやるぜ」
 女の肌に鳥肌が立っている。岩丸は巨大なペニスで女の身体の中をかき回した。太いペニスで膣壁を擦られる度に大量の粘液が溢れだし、凄まじい快感が女を襲った。
 女は髪を振り乱し、獣のような喘ぎ声をあげた。
 岩丸はそんな女を見て、腰の動きを早くしていく。ミシミシと床の軋む音とともに、女の高い喘ぎ声が部屋に響く。 
 女が泣くように顔を歪ませて喜ぶ。岩丸は抜き差しのスピードを徐々にあげて女を追い込んでいく。
 女の体が激しく跳ねてぴんと力が入り、ブルブルと震える。同時に床の上に暖かい液体がかかる。軽く失禁したようだ。
 女は色白の肌をピンク色に染めて、気持ち良さそうに喘ぎまくっていた。
 岩丸はラストスパートで激しく突いた。女がいっそう激しく喘いだ。
 そして、女の奥深くで弾けた。

「ねえ、親分さん……私、稼げる?」
 岩丸の萎えかけたペニスを舌で舐めながら、女が訊いてきた。
「ああ、稼げるさ。稼いでもらうさ。さっそく店に出ろ。今日から出てもいいぞ」
「嬉しい!」
 女が岩丸に抱きついた。そして床に落ちていた下着とドレスを身に着けると、「じゃあ、行ってきます」といって部屋を出た。
「シャワーをきちんと浴びてからいけ」女の背中に向かっていったが、聞こえたかどうかは知らない。
 岩丸はパンツとズボンを穿くと、タバコを銜えて火をつけた。
 悪くない話だった。
 あの亀梨の目の前で組長が殺された。対立する組が命令したとの噂だ。戦争になるのは間違いない。
 鏡を割った破片で頸動脈切断。相手はなかなかのすご腕らしい。組長と一緒にいた女は、店に来たのが三日前。組長が一目で気に入って連れだした。
 あの日以来、女は店に来ていない。殺し屋とともに消えた。
 誰がやったのだろうか? 雇ったのは誰か?
 そういえば、あの女もなかなかの上物だった。
 亀梨め、もう指を詰めただろう。ざまあみろ。
 岩丸は携帯電話を取り出すと弟分の電話を呼び出した。
「車を用意しろ」
「どちらへ?」
「決まっているだろう。親父の葬式に行ってくる」

鮮血のエクスタシー 4


鮮血のエクスタシー 4

 車が停まった。
「どうした」岩丸が苛ついた声を上げた。葬式が始まる前の打ち合わせの時間が迫っている。
「すんません、渋滞です」
「クラクション鳴らして脇に避けさせろ」
「それが、マッポでして」
 軽く舌打ちしてタバコを銜える。横に座る若衆がさっとライターを出した。
 葬儀会場となった事務所前で、組員と警官隊とがにらみ合っている。岩丸は事務所裏の地下の駐車場に車を入れるよう指示した。事務所の角を曲がるとき、防弾チョッキを着ている警官と目があった。マッポだらけの事務所に突っ込んでくる馬鹿もいないだろう。
 地下の駐車場に車を乗り入れる。大型のワンボックスカーがずらりと並んでいる。一昔前まではヤクザの幹部が乗る車はベンツが多かったが、最近は乗り心地が良く、かつ目立たないワンボックスカーが好まれるようになっている。
「お疲れ様です!」
 事務所に詰めている若衆がドアを開けると、居並ぶ組員たちが頭を下げて声を上げた。
「親分衆は?」
「上の会議室で待機いただいております」
 エレベータで四階にあがり、重厚な樫のドアを開ける。権藤組傘下の組長たちが既に顔をそろえていた。中央に小指に白い包帯を巻いた男が、歯を食いしばって座っていた。亀梨組組長、亀梨正志だ。
「てめえ、あの女は何者だ!」
 部屋に入ってきた岩丸に向かって亀梨が叫んだ。
「なんだぁ?」
 声を張り上げた亀梨を、岩丸が睨んだ。
「組長をやった女だ。お前の店で雇っていた女だろ!」
「ほう、自分の不始末のくせしやがって、俺にアヤつけんのかい」
「なんだと!」
 亀梨が席を立った。横にいた親分が亀梨をなだめた。
「女がやったとはどういうことだ。あの女にそんな大それたことができるか」
「じゃあ、やつらとグルだったに違いねえ」
「いい加減にせんかい!」
 岩丸がどなる。
「あの女の不始末のせいにして俺に責任なすりつけようって魂胆かい。女は親父を殺して逃げたんじゃねえ。殺し屋にさらわれたんじゃ。俺のせいにするんじゃねえ」
 直参若頭の斉藤に睨まれ、岩丸は頭を下げて席に座った。斉藤が権藤組長の後を継ぐことが幹部会で決まったと連絡があった。
「じゃあ、なんで攫われたんだ。グルだったに決まっている」
「その場にいて巻き込まれただけだ。女の裏は取ってある。知り合いの組幹部に面通しまでして雇ったんだ」
「岩丸」
 斉藤がギラリと光る目を向けた。
「ここに来る前の幹部会で、跡目は俺が継ぐことになった」
「へい、聞いておりやす」
「その女を探し出して、ここに連れてこい」
「へい」
 岩丸が頭を下げた。
 まったく、冗談じゃねえや。

 葬式を終えると、岩丸は急いでスナック「カサノバ」に向かった。店に入ると、手下がママと一緒に待っていた。
「女は?」
「いませんでした。電話も通じません。住所はでたらめです」
「なんだぁ!」
 岩丸がテーブルをひっくり返すと、ホステスたちが悲鳴を上げた。
 くそ、このままじゃ、俺も指を詰めさせられちまう。
「あの女の素性には間違いないんだな」
「へい」
 配下の組の幹部が、スーツの袖で額の汗をぬぐった。
「うちの系列の店で使っていました。こいつの店です。面通しで面拝みましたが、間違いねえです」
 幹部の横で、ホスト上がりだとわかる四十過ぎの男が頭を下げた。
「だれだ、そいつ」
「俺の店で店長をやらせています。レナは二年間こいつの女でした。高級ソープ嬢だったのをスカウトして、金持ち親父専門の娼婦をやらせてたんです。上玉で、権藤組長にも気に入ってもらえると思ってこの店で働かせてたんですが」
「お気に入りだったのは間違いねえ。その日のうちに連れ出したんだからな」
 岩丸は店長という男の前に立った。
「てめえの女なのに居場所がわからねえとはどういうことだ」
「半年くらい前に別れてまして」
「馬鹿野郎! てめえの女だったら、知り合いとか親許とか、探すところがあるだろう!」
「はい、探しましたが、知らないと。ここんところ音沙汰なかったらしくて、どこにいるかわかりません。親分の言うとおり、本当に攫われて殺されちまったかもしれません」
「ふん」
 それならそれで話の筋が通る。
「女を探せ」
「でも、どこにいるかわかりません」
 長身でグラマラスな水商売風の女だ。目立つはずだ。
「スナック、風俗店。どこでもいい。店を回って情報を流せ。見つけたら奴には報奨金を弾むってな」
 ママが不安そうに擦り寄ってくる。
「私、関係ないよね」
 ぽってりした唇が色っぽい。あれのしゃぶり方もうまかった。
「さあな、お前だって親父が殺されたことに無関係じゃねえんだ」
「そんな……」
 怯える女のドレスの胸が大きく開いている。岩丸が手を滑り込ませた。店に出るときブラはつけるなと言ってある。乳房に直接触れる。きめの細かい肌はこの女の自慢だ。
「心配するな。女はすぐに見つかるさ」
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