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キチガイたちの挽歌 16



 工場の長い塀の脇の、何もない空間のような場所に車は停まった。
「ほら、降りろよ」
 江利香は目隠しをされたまま服を掴まれ、車から引きずり降ろされた。
「おねがい、もう家に帰して……。警察には言わないから……」
「もう、遅いんだよ」
 マムシと呼ばれていた刺青男が、不気味に笑った。そばを大型車が何台も通過し、地面がその度に地震のように揺れた。
 ドアが開けられる音がして、男に襟首を掴まれたまま、狭い階段を上がっていく。
 目隠しが外された。目の前に垂れ下がる黒いレースのカーテン、それを払って部屋の中へ押し込まれた。
 照明は外と同じように暗い。部屋で人の息遣いが聞こえてくる。目が慣れてくると、部屋の隅で何人もの人がうずくまっているのがわかった。
「よう、いいものを持ってきてやったぜ」
 マムシの言葉に、部屋のあちこちでがさがさと人が動く気配がする。
 鼻に付くセメダインの匂い。ドス黒い顔色の男が江利香を見てにやりと笑う。歯茎が腫れて出血している。それと、何とも言えない口臭。
「いい加減にしねえと狂うぞ、お前ら」
 男はまたにやり。腑抜けのような笑顔。しかし、幼そうだ。
 部屋の明かりがともった。灯りと言っても、蛍光灯のような明るい光ではなく、ラブホテルにありそうな赤い電灯だった。
 江利香を見つけた男たちが、ぞろぞろ傍に寄ってきた。全部で十人いる。傍に寄ってきた少年たちの目を見て、背筋が冷たくなった。どこを見ているのかわからない焦点を結んでいない死んだような目だった。
「いやぁ! こっちにこないで!」
 言いようのない恐怖に襲われ、江利香が彼らから遠ざかろうとしたが、マムシに腕を掴まれているため動くことが出来ない。
「そういやがるな。今から天国に連れて行ってやるから」
 マムシはスプーンを手に取ると、小さなビニールの破片のようなものを取り出した。それを破って、中身をスプーンの中に移す。
「ねえ、もしかして、それって……」
 仲間の一人が取り出した注射筒を見て、江利香は彼らが何をしようとしているのかわかった。
「や、やめて……」
「もうじき天国に連れていってやるぜ。貴重なマブネタだ。じっくり味わえよ」
 マムシはペットボトルの水を注射筒に吸い込んだ。そして、スプーンの中にたらして結晶を溶かすと、その水溶液を注射筒の中に吸い込んだ。
「いや! いやぁ!」
 暴れる江利香の左腕の肘の付け根をゴム管で縛り上げ、マムシは浮き出た静脈にニードルをぶち込んだ。
「ああああああああっ!」
 ニードルは、スムーズに血管の中を突き進む。注射器が引かれ、血液と溶液が混ざる。逆流する血が渦を巻きながら注射器内部の溶液と戯れる。
 マムシは覚せい剤をたっぷりと血管に流し込んだ。
「ああああああっ!」
 ドーパミンが放出され、脳内が一気に冴え渡った。過剰分泌されるドーパミンが体内を駆け巡った。
「混じり気なし、極上のエスなんだぜ。北朝鮮ルートが壊滅してからエスが高騰し、これほどの雪ネタは滅多にお目にかかれなくなったんだ」
「ああああっ!」
 背筋にドライアイスを押し付けられたような冷たい感触が湧き上がる。身体が芯まで冷え切った。膣とクリトリスに血液が流れ込む感覚に陥った。
 体からムワッと女の匂いが立ち上ってきた。
 マムシに少し乳房を触れられただけなのに、快感が全身を走り、小刻みに体が震える。
「えへへへ、一気にキマッちまったな、感じてんのか?」
「あああっ! だ、だめっ! な、なに? これ。すごく変」
 マムシが股間に触れた瞬間、「キャアー!」と江利香が叫び声をあげた。
「あああっ!」
「へへへ、すごく濡れてれじゃねえか」
 マムシは江利香を裸にした。
「お前たち、食っていいぞ」まるで犬に餌をやるような素振りで、江利香を床に転がした。
「ゴチになります!」といって、少年が一人覆いかぶさってきた。股間をまさぐり、ピンクの乳首をむさぼる。
「やめて! お願い! おかしくなりそう!」
 泣きそうな声で哀願する江利香。部屋の中に愛液の匂いが充満していくのがわかる。それが自分の発した匂いだと、江利香は信じられなかった。
「やめてほしいだと? こんなになってんのに」
 少年が意地悪を言ってくる。
「あああっ、やめて。お願い!」
 少年はその言葉を無視し、江利香のクリトリスを吸い付いた。
「もうダメ! やめて!」
 体がビクンビクンと痙攣した江利香。
「へへへ、もうイッタのか?」周りで見ていた男の一人があざ笑う。
 これを使えと言ってマムシがピンクローターを差し出す。
「そんなの使っちゃ、だめぇ!」
 ローターを出され怯える江利香。そんな江利香に興奮する少年。容赦なくローターを江利香のクリトリスに当てる。
「いやぁ! やめて! だめ! アッ! 出ちゃう!」
 潮を噴く江利香。床は水溜りだ。
「もう、たまらん」
 少年はズボンをパンツごと下ろすと、勃起したペニスを握って江利香の足の間に腰を割り込ませた。
「ああああっ!」
 スルッと入るペニス。その反応でおたけびのような声をあげる江利香。
「おおお……き、気持ちいい……」
「あああっ、だめ、あああっ!」
 これまで経験したことのない快感が脳天を突き抜ける。呻きにも似た江利香の声が部屋に響く。
 少年は激しく腰を動かし、江利香はさらに大きな声を上げた。江利香の喘ぐ声を聞いて、上から覆い被さっている少年が低い声で忍び笑いを漏らした。顔同士が近い位置にあるため、少年の臭い息が江利香の顔に吹き付けてくる。
「あうぅ……」
 生ゴミのような腐った臭いに胃が震えた。男が腰を動かし始めると、強烈な臭いが断続的に吹き上げてくる。
「う……ぎぃ……うあ……」
 男の動きはぎこちなく、出し入れしているペニスもスローペースだった。それでも窮屈な江利香の恥部は、擦り上げられる度に快感を生み出した。
「あああっ、い、いいっ!」
「へへへ、感じてるぞ、この女」
 少年は歯を食い縛って強烈なピストン運動を始める。
「あっ、いいっ……すごくいい!」
 少年の腰の動きに合わせて、江利香の身体もガクガクと揺すられる。
 少年はガンガン腰を打ち付けながら、「うおっ! うおおっ!」と逼迫した声を上げた。
「あ……だめ……」
 嫌な予感がして江利香の口から小さな悲鳴が漏れ出た。予感通り、少年は江利香の中にビュッと精を放った。熱い液をドクドクと注がれる感触。ジワリと中で広がる精液のおぞましさに、身体全体がブルッと震えた。
「ああ……」
 このままでは本当に妊娠してしまうかもしれない。しかし、この快感が得られるなら構わないという思いが頭をよぎる。
 射精した男はさっさとペニスを引き抜き、すっきりした顔をして離れていった。入れ代わりに今度は並み外れた巨体をした大男がベッドに上がってくる。
「へへへ。この特大チンポをぶちこんでやるからな」
 既に剥き出しにされた男のペニスの巨大さに、江利香は思わず目を見開いた。前二人の男とは比較にならない大きさは、とても少年の物とは思えない。
 血管を浮き上がらせて、長大にそそり立ちながら亀頭の先にヨダレを垂らしている様は、まるで肉食動物が舌舐め擦りをしているようで、凶悪そのものだった。
 いくらなんでも大きすぎる。そんなもの、入るはずがない。大男はニヤリと唇の端を吊り上げて、江利香の両足首を掴んだ。
 仰向けになっている江利香は、そのままグイッと力付くで引き寄せられた。江利香ふくらはぎが男の肩に載せられ、太ももを抱え込まれる。
 もう一度グッと引き寄せられて、江利香の腰が男の股間に向かって引き擦られると、巨大な亀頭がピト、と割れ目に接触した。
「ひっ!」
 明らかに今までの男とは違う大きさを直に感じて、いっそう恐怖感が募る。ペニスの先端からジワジワと湧き上がってくる液の量も半端ではなく、愛液と精液でグチョグチョになっている江利香の性器でもそれを感じ取れるほどだった。
「そんなの入れたら、裂けるんじゃねえか」
 横を見ると、さっき射精し終えた少年が無邪気に笑っていた。
大男はグリグリと割れ目に亀頭を擦り付けてきて、生きた心地がしなかった。
「俺のチンポが欲しいよな! なあ江利香! 俺の特大チンポ、うまそうだろ!」
 男はそう言いながら腰を突き出した。江利香の太ももの付け根と男の下腹部が当たり、ピタンッと乾いた音が鳴った。
 巨大なペニスが江利香を貫いた。
「やああっ! あああっ!」
 喉を反らし、力の限り悲鳴を上げるが、声はかすれ気味になる。喘ぎ続けてきたせいで、江利香にはもう叫ぶことすら満足に出来なかった。
 奥まで突かれて、江利香の身体はビクビクと痙攣した。
「あああっ!」 
 大男はゆっくり動き出した。

キチガイたちの挽歌 15



 車は街を離れ、薄暗い山道にはいっていった。
 しばらく走ると、周りには民家の明かりも届かず、行きかう車もなくなった。
「ここらでいいか」
 運転していた男は車を停めた。
 すると、後部座席のタカシが江利香の上半身を押さえ、ユウタが江利香の足を押さえ、下半身の自由を奪った。
「嫌ぁ! やめて!」
 江利香は車の中で暴れたが、男ふたりに強く抑えられ身動きできなかった。
 助手席に座っていたリュウジが車を降り、後部座席に回ってきた。
「俺からぶち込むぞ」
「いやぁ! 来ないで」
 にやつきながらにじり寄ってくるリュウジを見て、江利香は恐怖のあまり身体をくねらせて抵抗した。
 リュウジはズボンのファスナーを下ろすと、勃起したペニスを取り出した。
 いきり立ったペニスはぎんっと天を向き、凶暴に江利香を求めていた。
「代われ」
 リュウジの指示で、江利香の足を押さえていたユウタとリュウジが入れ替わった。
「しっかり抑えてろよ」
 そして、江利香の足を広げ、ぺニスを江利香の膣にあてがった。
「あっい……いやあ、やだあ……ああ! やめてぇ……いやぁ!」
 江利香は必死で抵抗したが、リュウジが腰を押し出すと太いペニスがずるっと江利香の中に入っていった。
「嫌ぁ~!」
「う……あああぁ……くう・締まるぜえ」
 リュウジの腰使いが、さらに、激しくなった。
「へへへ……いやだいやだといいながら、結構濡れてるじゃねえか。こいつ、結構好き物だぜ」
 隣で見ていたリュウタが笑いながら言った。
「今まで何本のチンポをここに咥えたんだ?」
リュウジは、ぺニスをがんがんと江利香の子宮につきたてた。
「だめっ! やめて!」
 江利香は必死になってリュウジに懇願した。しかし、リュウジは不気味に笑いながら、「じゃあ、思いっきり中に出させてもらうぜ」
 といって、腰をさらに激しく振った。
「あああっ! いやあ! もう許してぇ!」
 徐々にリュウジの腰使いが、激しくなっていく。
「い、いや、だめえ!」
「うっ! おおおっ! 出すぞ! うおおおぉぉぉ!」
 リュウジは、江利香の膣の奥に濃い欲望を放出した。
「ああああ……」
 江利香はぐったりうなだれた。
「うう……気持ち良かったぜ。ユウタ、代わってやるぜ」
 リュウジはそう言うと、ゆっくりとぺニスを抜き取った。江利香の膣から、リュウジが放ったばかりの精液が、大量に溢れ、垂れ始めた。
 次はユウタが江利香を奪う番だ。ユウタはズボンとパンツを脱ぐと、決して大きいとは言えないが、硬く勃起して天を向いたペニスは勇ましかった。
「ああ……いや……」
 江利香は腰を振ってユウタのペニスから逃れようとしたが、タカシにナイフで脅されているので身動きできなかった。
 ユウタは江利香のひざを開けた。
「いやあああああ!」
 江利香は叫んだが無駄であった。
 ユウタは硬くなった陰茎を江利香の膣にねじ込んだ。
「いやゃぁぁぁ!」
 江利香は叫んだ。
 しかし、ナイフのせいで声にならなかった。
 ユウタは穢れたペニスで江利香の膣を犯し続けた。
「へへへ、どうだ? 締りいいだろ? この女」
 ユウタに貫かれる江利香の姿を、つい先ほど江利香を犯したリュウジが、タバコを吸いながら眺めていた。
「うおおおっ! 出るっ!」
 ユウタはそう言うより早く江利香の中で射精していた。
「ううう……うっ……」
 江利香が泣きだした。

 男達が順番に江利香を犯していく。たっぷりと男たちの精液を注がれた江利香は、はあはあと荒い息を吐きながら、無言で車内の天井を見つめていた。
 欲望を排泄し終わったケダモノたちが、笑いながらタバコを吸っている。車のシートが、ケダモノたちの精液がどろどろに汚れていた。
「おい、マムシ、お前は犯らねえのか」
 刺青男に声をかけた。
「いらねえよ。お前らのザーメンで汚れたオマンコなんか。早く終わらせて人形部屋に行くぜ。ガキどもいも女を食わせてやらねえとな」
「おお、あの中坊たちは。飢えてるから出しまくるぜ」
「へへへ、じゃあ、もう一発ずつ楽しもうか」
 リュウジのペニスはもう復活していて、江利香を求めていた。
 その後、一時間あまりの間、江利香は再びケダモノたちに輪姦され続けた。
 ぐるぐると男たちが江利香の体を通り過ぎていった。
 陵辱は江利香を人形部屋だと彼らが言う場所に向かう車内でも続いた。
「三発目、犯ってもいいか?」
 最後に江利香を犯したのはユウタだった。
 江利香は走る車の後部座席ユウタのペニスに貫かれ、やがて、最後の放出を体内で受け止めさせられた。
「ううう……酷い」
 股間から精液の匂いが立ち上ってくる。
 一方的に凌辱され汚された自分が情けなかった。なにより、恋人の良隆に申し訳がなかった。
 こんなことで負けてたまるものか。このまま警察に訴えて、輪姦されたと訴えてやる。私は、泣き寝入りはしない。こいつらを絶対刑務所に放り込んでやる。
 江利香は涙を流しながら、心の底から復讐を誓った。
 いきなり髪を掴まれ、頭を持ち上げられた。刺青男がにやにや笑っている。
「お前、これで終わったって思っちゃってない?」
「え……」
「今からぴちぴちで性欲旺盛の中坊とやらせてやるからよ。可愛いぜ。十五歳、淫行だぜ。萌えるだろ? あぁ?」
「何よ、私、もう帰るんだから」
「それを決めるのは俺たちで、おめえじゃねえよ。それに、今から行く人形部屋は天国だぜ。おめえも帰りたくなくなるだろうぜ」

キチガイたちの挽歌 14



 バイトを終え店を出た江利香は、自宅アパートに向かって歩いていた。夜中の零時過ぎ。危ない時間帯だが、アパートはバイト先のコンビニの近くだったし、街灯もあり、アパートまでの道は明るい。それに深夜まで営業しているレンタルDVDショップもあるので、人目も多い。
 さっきの男が仕返しのため待ち伏せているのではないかと少しびくびくしていたが、姿は見当たらない。やはり、格好だけの気の弱い男だったのだ。
 後ろから車が近づいてきた。江利香は脇に避けてやり過ごそうとした。
 そして、その車が近くまで来た時、車内から二人の男が飛び出してきて江利香の腕を引っ張り、車内に引きずり込んだ。
「や……っ! 何するの!」
 手足をばたつかせて抵抗する江利香の顔に男の平手が飛んだ。
「きゃっ!」
 乾いた音と江利香の悲鳴が車内に響いた。
「よう、江利香ちゃん」
 江利香は、後ろから抱き着いている男を振りほどこうとしながら、顔を上げて自分を叩いた男を見た。見覚えのある顔。あの刺青男だった。
「俺のこと、覚えてるだろ。さんざん偉そうに説教してくれちゃってよ。俺をコケにすればどうなるか、きっちり教えてやるからな」
「な、何よ! 降ろしてよ! だ、誰かに見られているわよ。もう、警察にも連絡が行っているわ」
「そうかそうか、そりゃ、えらいこっちゃ」
 走る車の中で江利香は気丈にも刺青男につかみかかろうとしたが、傍に居た男たちに抑えられ、両手両足の自由を奪われると服を脱がされていった。
「いや! いやああああ!!」
「へっ、こいつら、溜まってんだ。オマンコの中にたっぷり注ぎ込んでもらえよ」
「いやあ! いやあ!」
 車が人気のない駐車場に止まった。白のワゴン車が停まっている。その横に車が停まった。
「降りろ!」髪を掴まれ車の外に引きずり出されると、白いワゴン車に押し込まれた。
「これで、警察はお前のことが探せなくなった」
「そんなことないわ……」
「いっておくが、さっき乗ってきたのは盗難車だ。この車は手配されないから、諦めな」
 刺青男が大声で嗤った。腕を押さえていた男はナイフを江利香に突きつけた。
「わめくと、切り刻むぜ」
「ああ……」
 ナイフを握る男に凄まれ、一層江利香の恐怖感が高まった。
 車内の四人の男たちは、見るからにチンピラだった。後部座席に江利香を抑える男が二人、運転席に一人。そして、助手席には刺青男がいた。
「ユウタ! こいつの服脱がせろや」
 ナイフを持った男が左で江利香の脚を抑えていた男に言った。ユウタは臭い息を吐きかけながら江利香の服を剥いでいった。
「いやああああ!」
 江利香はただ大声で叫び、力ずくで服を引き裂かれていくしかなかった。
 ユウタは、江利香の服を剥ぎ取り、ブラジャーをはずした。
「江利香ちゃん、胸あるね!」
 最後の下着も剥ぎ取られた江利香のむき出しになった胸を見て、リュウジは口笛を吹いてはやし立てた。
「リュウジ、人形部屋に着くまで先に味見してもいいか?」
「おう、でも、オマンコの中は汚すなよ」
 更に、左にいた男が江利香のパンティごと、陰部を激しく揉み始めた。
「くっ! い、いやあ! なにするの! や……やめてぇ……いやあ」
 江利香は必死で抵抗したが、ナイフを持った男が、無理やり江利香の唇にキスをした。
「あっ……い……いや……」
 恐怖の余り、江利香は体を震わせた。
「おとなしくしろや、へへっ」
「いやああ! だ、誰か、助けてぇ!」
「いくら、叫んでも無駄だぜ」
 そう言って、ユウタは江利香の乳房を鷲掴みにした。
「いやぁ! 離して!」
「うひひっ、いいオッパイしてるじゃねえか」
「いや、もう……やめてぇ……」
 服は完全に引き剥がされ、大きな胸のふくらみが露わにされた。
「いやあ!」
 腕で胸を隠し身をかがめようとすると、ユウタは江利香に抱きついて身を起こさせた。
「な、なにするのよ! きゃあ!」
 ユウタが江利香の頬を張り倒した
「抵抗するんじゃねって言ってるだろうが! ぶっ殺すぞ!」
「あああ……」
「バカな女だ……最初から素直にやらせてくれていればこんな荒っぽい事しなかったのに……」
 助手席のリュウジは不敵に笑いながら、江利香を見た。
「タカシ、こいつのパンツ剥ぎ取れや」
 リュウジがナイフを持っている男に声をかけた。
 ユウタが江利香の胸を弄んでいると、ナイフを持っていた男が、無理やり江利香のパンティを剥ぎ取った。
 江利香を救ってくれるものは、誰もいなかった。

キチガイたちの挽歌 13



「ふう……」
 江利香は背筋を伸ばして息を吐いた。
 夜の十一時。あと一時間でシフトの交代だ。
 女性で深夜のコンビニバイトにつくものは少ないが、夜のほうが割がいいのと、自宅のワンルームマンションがすぐそばなので、江利香は深夜鯛のバイトに入ることにした。
 帰りに賞味期限切れ真近かの惣菜でも貰って帰って、寝る前のつまみにするか。
 まるで中年オヤジのようだと自分でも思う。女だって寝る前の晩酌は楽しみなのだ。しかし、最近腰回りに少し肉がついてきた。温泉に行った時も大学の友人に指摘されたし、先日もセックスが終わった時、彼に脇腹の肉をつままれた。
 少しだけ、ダイエットしよう。
 そう思っても一度時計を見上げた時、来客を告げる電子音が鳴った。
「いらっしゃいませ」
 江利香は彼女なりに最上級の笑顔を浮かべて来訪者を迎え入れるが、その姿を見た途端に笑顔を強張らせた。
 金色に染めた短髪にピアスだらけの耳。それに、半そでから伸びる腕に、刺青がびっしりといれられていた。その刺青がシャツの中を通って、男の首にまで這い上がっている。
 やばそうな奴が来ちゃった。
 道路の向こうに目を向けると、黒いシャツに黒いズボンに黒いキャップの明らかに怪しい男がうろついている。男の仲間なのかもしれない。
 ふぅとまた深い溜息を吐いた。最近この辺りも物騒で参るよ。
 男は店内を物色するように歩き回っている。そして、商品棚から弁当や飲み物、雑誌を手に持ってレジに持ってきた。
「いらっしゃいませ」
 江利香は精いっぱいの笑顔を男に向けた。一秒でも早く、店から立ち去ってほしかった。
「袋」
「はい?」
「袋だよ。耳が悪いのか、てめぇ。早くかせよ」
「あ、は、はい」
 訳が分からない。レジ袋をカウンターに置くと、男はそれを掴みとり、カウンターの商品を中に放り込んでいった。
「あ、あの、レジを通しますので、待ってください」
「いらねえよ」
 そういって、商品を持って店を出て行こうとした。
「ちょっと待ってください」江利香はカウンターから飛び出して、男の前に回り込んだ。
「お金、払ってください」
「はあ? なんだぁ、てめぇ」
「何だじゃないわよ。お金払わないなら警察を呼ぶわよ」
 もう、この男は客ではない。いくら怖そうな格好をしていても、お金も払わずに商品を持って行かせるわけにはいかない。それも、脅されたとあっては、引くことはできない。
 脅しに屈することは負けなのだ。こんな男、怖くない。
「ぅるせぇって言ってんだよぉ。女のくせに何偉そうにほざきやがんだよ、ばぁかぁ!」
 更に突っかかってきた。
「馬鹿はあんたよ。商品はお金を払って買うものよ。小学生だって幼稚園児だって知ってる事よ」
 江利香は言い返した。どうせ恰好だけなのだ。弱い男ほど、馬鹿にされないように怖い格好をするものだ。
「はぁ? なんだぁ? ぉまえ、やるんかぁ! ぁ? やるんかぁ! あぁ?」
 ギャング風の男が睨み付けてきたが、江利香は目を逸らせなかった。店には防犯カメラもある。警察を呼べば、自分がすぐに捕まることも、この男は知っている。悪いことをする奴ほど、そういったことには敏感なのだ。この男は何もしてこない。
「上等だぁぁぁ! このヤロー! オモて出ろ!こらぁ!」
「馬鹿なこと言わないでお金を払いなさい。嫌なら商品を置いてさっさと出て行って。さもないと、警察を呼ぶわよ」
「この野郎、覚えてろよ」
 男は江利香に商品を投げつけた。
「ちょっと! ちゃんと元に戻しなさいよ!」
 男は江利香を無視して、店を出て行った。
 やった。どんなもんよ。私は負けなかった。脅しに屈しなかった。そう、女は強いのよ。
「いやあ、すごいね、中沢さん」
 どこに隠れていたのか、同じシフトの大学生の男が、事務室から顔を出した。ただ青ざめて狼狽えている。
「何してたのよ。知らん顔して隠れているなんて、最低」
「ごめんよ」といって、下を向いている。
 情けない男。最近の男は、気が弱いのが多くてまいっちゃう。

キチガイたちの挽歌 12



 下半身裸になったコウイチの股間を見て、キョウコはしまう。「ひっ」と小さな悲鳴を上げて目を背けた。勃起した巨大なペニスが、天井を向いている。
「抵抗するんじゃねえぞ」
 キョウコの特攻服をバッと一気に捲り上げ、だぼっとしたズボンをパンツごと無理やり下ろした。剥き出しの股間が晒された。周りの男達の視線がそこに集中する。陰毛は薄く、恥丘が盛りあがている。
「ああああっ!」
 周囲の男達が彼女の足を掴み、仰向けのまま大きく開脚させる。手足を押さえつけられ呆然としているキョウコの性器に、コウイチが覆い被さってペニスをぴたりと宛がった。
「あ……」
「なんだよ、お前。怖がっている割には濡れてるじゃねえか」
 ペニスの先端を、女の入り口にぐりぐり擦り付けながら、コウイチが言った。
「ようし!」
 性器の入り口にピッタリと当てられていたペニスが、キョウコの性器を押し広げながら、一気に中に入っていく。ペニスの根元まで埋め込まれると、性器の奥を突かれた衝撃で寛恕の身体がビクンと震えた。
「気持ちいいかあ? 気持ちいいだろ?」
 心底嬉しそうに、コウイチは腰を振り始めた。
 コウイチが腰を打ちつけるたびに、キョウコの身体が大きく揺れる。
「こらっ! 特攻服を脱げよっ! 気分が出ねえじゃねえか!」
「は、はいっ」
 キョウコが自分から特攻服を脱ぎだした。
「こいつ、犯されて感じ捲って、自分から服脱ぎだしたぜ」
 ハヤトと言葉に、周囲の男達が嘲笑った。
「おお、でけえじゃねえか」
Tシャツを脱ぎ捨て、ブラを外したキョウコの胸に、コウイチが手を伸ばし揉みしだく。
 コウイチが激しく腰を動かし、キョウコの身体は成す術も無く揺すられる。性器が結合している部分から、湿っぽい音がたつ。
 コウイチはキョウコの腰をがっしりと掴んで下半身を打ち付けた。力強く突かれる度に、キョウコの口から声が漏れる。
 コウイチが叫び声とともに腰を震わせ、キョウコの身体の奥に注ぎ込んだ。
「おお、おお! 最高だ、こいつ」
 キョウコの目から涙が溢れてきた。コウイチがぐったりしているキョウコの髪を掴み、大きく揺った。
「寝るんじゃねえぞ。まだあと十人残ってるんだぜ」
 コウイチのあまりにも非情な言葉に、キョウコは目を見開いた。

 十人もの男に犯されたキョウコは、倉庫の床にうつ伏せになっていた。下半身は軽く痙攣している。最後のほうは苦痛で叫んでいるのか、感じて叫んでいるのかわからないくらい、キョウコも乱れていた。根っからの好きものなのかもしれない。
「おい、まだ終わりじゃねえぞ」
「え……?」
「まだやるんだよ、俺のチンポをこのままにしておくつもりかよ」
 コウイチはキョウコの顔に股間を突き出した。キョウコを最初に犯したコウイチのペニスが、再び力をみなぎらせている。ペニスの先から、精液が垂れていた。
「早く寝転んで足広げろよ」
「は、はい」
 キョウコは再び仰向けになって自分から脚を広げた。コウイチが再びキョウコに覆いかぶさっていく。
 周りを囲んでいる男たちの股間にも、力が戻ってきていた。

キチガイたちの挽歌 11



 三十分ほどで、先日拉致したチンピラを半殺しにした町外れの小さな倉庫に到着した。
倉庫には先日と同じ十名のメンバーが集まっていた。みんな一様に髪をカラフルに染め、自分らで持ち込んだソファやベッドに、だらしなく寝そべっていた。いずれも、高校生と同じ年代の、十六から十八のガキだった。
「お疲れ様っす」
 車のドアを開けると、ユウジ覗きこんできた。車から降ろされたキョウコは、倉庫の中からぎらついた目を向けてくる男たちを見て息を飲んだ。
「よお、女二人拉致って来たぞ」
 コウイチが車から降りてきた。続いてジュンがキョウコの連れを車から降ろした。
「なめんじゃねえぞ、こらぁ!」
 こっちの女はまだ元気がいい。
「生きのいい女だ」といって、コウイチがにやけている。
「こちら、特攻隊長のジュンコさんだ」と、倉庫にいた男たちにコウイチが女を紹介した。
「ざけんじぇねえぞ! 赤薔薇連合舐めてると、殺すぞ、てめえら!」
 ジュンコが威勢よく言い放つが、男たちはにやけたまま、ぎらついた眼で今夜の獲物を見ているだけだった。
「早くやろうぜ。 もう、車の中からチンポビンビンだ。ジュンコちゃんは巨乳だからよ」
そういって、コウイチがキョウコを見た。
「お? おお?」
 全身を舐め回すようにジロジロと見つめている中、ハヤトはコウイチの方へドンッとキョウコを押しやった。彼女は二、三歩前へよろめいて、恐る恐る顔を上げて男達を見た。コウイチと目が合った。
「うっひょー! 結構可愛いじゃねえか! こんな女とヤれるなんて、拉致った甲斐があったな!」
「てめえ! キョウコをやりやがったら、ただじゃおかねえぞ」
 ジュンコがひとりで気合が入っている。
「メデューサにケツまくられてる関東連合が調子こいてんじゃねえぞ! 全員、マムシに殺されりゃいいんだ」
そ の言葉に、ハヤトの目がぎらっと光った。
「こい、コウイチ。この女、しめる」
 ハヤトは一人わめいているジュンコの前に立つと、いきなり顔面に拳を叩きこんだ。悲鳴をあげてジュンコが床に倒れた。ハヤトはジュンコに馬乗りになると、胸倉を掴んで顔を持ち上げ、さらに一発拳を叩きこんだ。
 キョウコの悲鳴が、倉庫に響く。
「男のくせに女を殴るなんて最低だ。やっぱり関東連合はヘタレの集まりじゃねえか!」
 口から血を流しながら、ジュンコがハヤトを睨みつける。
「言うことはそれだけか」
 ハヤトがにやりと笑うと、ジュンコの顔が初めて強張った。
 ハヤトは再び拳をジュンコの顔面に叩きこんだ。二発、三発と叩きこむと、そのたびにキョウコが悲鳴をあげた。
「へ、屁でもねえぞ、くそやろう」ジュンコが強がって悪態をつく。
 ハヤトが再び拳を叩きこんだ。
「このアマ! ぶっ殺してやる。女のくせに男にたてつくんじゃねえぞ、こらぁ! どうせ男に守ってもらわねえと、まともに走れねえんだろうが! 何がレディースだ、こらぁ!お前ら黙ってオマンコ広げて、チンポ突っ込まれてりゃ、いいんだよ!」
 立て続けに殴られ、ジュンコが初めて悲鳴をあげた。しかし、ハヤトは殴るのを止めない。ジュンコの顔が赤黒くなってくる。キョウコが泣き叫んでいる。
 ジュンコの顔面から血が飛び散り、床を汚していく。
「どうした! こらぁ! 何か言ってみろよ、特攻隊長が! このまま殴り殺してばらばらにして埋めてやるぜ!」
 ハヤトは殴り続けた。ジュンコがぐったりして動かなくなった。
「水、ぶっかけろ」
 ジュンがホースで、純子の顔に水をかけた。
 ジュンコの意識がもどった。
「これくらいで気絶してるじゃねえ」そう言って拳を振り上げた。
「す、すみません……。許してください……」
 倍以上腫れた顔に埋もれた唇を震わせながら、ジュンコが許しを乞うた。目から涙をこぼしている。
「初めから素直にそう言ってりゃあいいんだ、この糞女め」
 ハヤテが立ちあがった。ジュンコが倒れたまま、動こうとしない。
「この女、死んじまうんですか」ジュンが訊いた。
「まあ、あれだけなぐられりゃあな」コウイチが笑っている。「こんなつぶれた顔になっちまったら、チンポも勃たねえよ」
 キョウコが涙を流して震えている。「助けて……。助けて……」レディースのヘッドが哀れに涙を流しながら命乞いする様を見て、男たちの欲望に火がついた。
「ようし、この女を全員でレイプしろ。一人何回でもオッケイだ」
 ハヤトがそう言うと、男達は歓声を上げた。
「じゃあ、俺からだ」
 怯えて震えているキョウコを目で犯しながら、コウイチはズボンを脱ぎ出した。

キチガイたちの挽歌 10



 通りの路上に二台の車が停まった。五人の男が車を降りる。脇道に入ると、アパートの前の道で数人の女が固まって話をしていた。近づくにしたがって、闇の中で影がはっきり見えてくる。特攻服を着た女が三人。改造バイクが停めてある。
 彼女たちの姿を横目で見ながら横を通り過ぎ、最初の曲がり角を折れる。
「どうだ、いたか?」
 コウイチが欲望をぎらつかせた目を向けてくる。これからレディースを犯れるので、張り切っている。
「暗くてわからなかったが、多分あの中にいた」ハヤトは角の向こうから聞こえてくる女たちの会話に耳を澄ませた。
「部屋に入ったところを押し込もうぜ」
 コウイチがこれ以上待ちきれないといった感じで聞いてくる。シュウジとジュンとケイタは、黙って指示が下りるのを待っている。
「あまり騒ぎになると近所の住人に警察を呼ばれる。外にいるうちに拉致ってしまおう」
 そう言ってスタンガンを取り出した。スタンガンは二つ。女は三人。同時に二人気絶させても、残った一人が騒がないか。そう思っていると、バイクのエンジン音が聞こえた。
「ラッキー! どこかに行くみたいだ」あとをつけてどこかの暗がりで拉致るか。そう思っていると、横を一台のバイクが通り過ぎて行った。顔を覗かせると、アパートの前で残りの二人が話し込んでいる。
「あの中のどちらかがリーダーだといいんだが」
「とりあえず、あの二人を拉致って犯っちまおうぜ。違うなら、バイクで走っていたさっきの女をあの二人に呼び出させればいい」
「それで行こう」
 ジュンに車のカギを渡し、その場で待機する。裏から回り込んで通りに戻ったジュンとシュウジが、車にのって脇道に入ってきた。残っていた四人が角から出て、二人の女に近づいていく。
 女の傍に近づいた。二台の車が横を通り過ぎる時、四人が脇に寄った。車が停車すると同時に、ハヤトとコウイチが女の首筋にスタンガンの電極を押し当てた。
 崩れ落ちる女の身体を抱えると、前後の車の後部座席に女を引きずり込み、そのまま走り去った。

「この野郎! 降ろせよ、こらぁ!」
 すぐに正気に戻った女は突然のことでしばらく硬直していたが、やがて後部座席で暴れ出した。
 金色に髪を染め、いかにも暴走族ですと言わんばかりの特攻服を着ている。
 これから自分がどうなるのか見当も付かず恐ろしいのか、威勢がいい割には声が震え、歯がカチカチと音を鳴らしている。
「てめえ、コラ! 抵抗すんな!」
 女を押さえていたケイタがナイフをつら突かせても、女は抵抗をやめない。
「キョウコってのはお前か」女がハヤトを睨みつけた。
「だったら、何よ」
「お前の男を呼び出せ。リョウってガキだ」
「ふざけんなよ。赤薔薇連合のヘッドが自分の男を裏切るわけねえだろ!」
「どうせ、俺たちの言うことを聞くことになるんだ。痛い目見る前に言うこと聞いておけ」
「ふざけんな!」叫びながら掴みかかってくる。さすが、気の強い女だ。
 キョウコの腹にハヤトが拳をめり込ませた。
「うげっ」
 強烈な鈍痛にキョウコが息を詰まらせた。車の中で吐かれると困るので力を抜いたが、女相手なので結構効いたようだ。苦痛に顔をゆがめ、彼女の目尻から涙が零れ落ちた。
「これくらいのことで泣いてんじゃねえよ。これからどんな目にあわされるのか、わかってんのか?」
「あたいをどうすんのさ!」
「殺して埋めちまうんだよ」
「やれるもんなら、やってみろ!」
 ハヤトはキョウコの胸倉を掴んで引きよせた。
「いいか、女だからって手加減してもらえるとは思うなよ。俺たちは関東連合なんだ。殺されなくても、その顔をズタズタにされることくらいは覚悟しておけ」
 そういって、指にはめているスカルリングでキョウコの頬を撫でた。ハヤトの低く唸るような声に、キョウコが顔をこわばらせた。

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キチガイたちの挽歌 9



 赤坂一つ木通りのシティ・ホテル下の道路沿いのレストラン。
 陽子はフレンチ・トーストと珈琲で遅い朝食をとっていた。白いポルシェから降りた平田がニコニコと笑いながら近づいてくる。
「やあ、陽子。お店の外で会うのは始めてだな。太陽の下でも、やっぱり君は綺麗だよ。艶かしくて惚れ惚れする」
「あら、社長。相変わらずお口がお上手ですこと」
「今日は、私とデートしてくれるんだってな。北原って人から連絡があった」
「ええ、いつもいつも社長に親切にしていただいているんですもの。今日は、私がお返ししますわ」
「どこに行こうか」
「すべて、社長におまかせします」
「今夜は私と最後の一線を越えてもいいと覚悟していると、北原くんは仄めかしていたが、本当にそうなのかな?」
「はい、社長、そのつもりでいます」
 わざと顔を赤らめて答える。
「結構、大胆なんだな。気に入ったぞ。このまま、上のホテルに直行してもいいんだけれど、それじゃあ、即物的過ぎで、情緒も面白みもないよな。まずはどこかでおいしいものを食べて軽く飲もうか。君のこと、いろいろ聞きたいしな」
「すぐばれるから、先に言っておきます。私、食い意地の張った、セックスに貪欲な女なの。社長、本当の私の姿を知ったら、がっかりなさるわ」
「面白いことを言うなあ。普通の女は自分からそういうことは言わないぞ」
「本当のことなんです。私、おしとやかで、上品だと思われているから」
「無理じいはしないからな。俺とやるのが嫌になったら、何時でも言ってくれよ」
「ですから、私、セックス大好きなんですの。私から嫌になることはありません」
「ハハハ、面白い子だなあ。さあ、食べにいくぞ! 車に乗った、乗った。それから、陽子に乗って、君の大好きなセックスだ」
「腹が減っては戦はできない、でしょ」
「ハハハ、でも、俺はそんなに出来ないぞ。一発か二発だぞ」
「女は、内容がよければ、回数なんかに、こだわらないのよ。パパ」

 立ち上がった平田の股間は、もうはちきれんばかりに膨らんでいた。
 平田がベッドに座ると、代わりに彼の足元に陽子がひざまずいた。
 ズボンのファスナーを下ろすと、勢いよく勃起したペニスが飛び出した。
 赤く剥き出しの先端を指の腹で摩ると、平田がビクリと身体を震わせた。
「陽子……跨いでごらん」
 平田に促された陽子は、立ち上がるとベッドに座った平田の股間を跨いだ。
 陽子は黙って平田のペニスを掴んだ。そして、指を添えて角度を確かめながら、そのまま、ゆっくり腰を落としていった。
 ヌメっと平田のペニスの先が陽子の膣口を押し広げた。半分ほど入ったところで、陽子は腰をくねらせた。
 上半身を屈めて、二人の性器が結合している一点を見つめながら、陽子は歓喜の声をあげた。
 喉元から絞り出された平田の唸るような声を聞きながら、陽子はゆっくりと腰を落として、根元まで剛直を挿入していた。
 陽子はぴったりと股間を合わせ、円を描くように股間を擦りつけていた。平田は陽子の腰に両手を回して抱き寄せた。そして、髪の毛の匂いを嗅ぎながら、腰を下から突き上げ始めた。
 顔に押し付けられた陽子の大きな乳房を、平田が手で乱暴に揉みしだいた。
 固くなった乳首を指を摘ままれて、陽子は小犬のように泣いた。
 やがて陽子は大きく上体を逸らして絶頂に達した。
「ああ……私……もうだめ……」
「何言ってるんだ、陽子。これからだぞ」
 平田は陽子をベッドにうつ伏せに寝かせると腰を持って引き上げた。
 陽子はベッドの縁に両手を突いて平田に尻を突き出した。平田は両手で陽子の尻を掴み、背後から貫いた。
 陽子が、高い声をあげながら、背中を弓なりに反らした。平田は陽子の尻肉つかむと、さらに奥に到達するように、ぐん、とペニスを突っ込んだ。
 陽子はシーツに乳房を押し付け、張りのある尻をさらに高く掲げた。
「陽子はいやらしいなぁ……そんなに好きなのか?」
 ますます、スピードアップしていく平田の腰の動きに、陽子は悲鳴のような声をあげ続けた。
 やがて平田も切羽詰った声を上げ、陽子の中で弾けた。
 二人の動きが止まった。つい先ほどの淫らな嬌声が嘘のように、部屋は静寂を取り戻した。
 しばらくして、忘れていた呼吸を思い出したように、二人は、息を整えた。そして、快楽に潤んだ瞳で、お互いを見つめ合った。
「ああ……よかった……」
 陽子はシーツに腹ばいになって尻を高く掲げたままぐったりしていた。
 陽子から出た平田はベッドに座ると、タバコに火をつけて一息吸い込んだ。
とうとう、平田社長に、身体を許してしまった。しかし、別にどうってことはない。いつもの手続きだ。
 所詮、私は、節操のない、緩い女。不潔で淫らな女。
 だから、どうだって言うの。
 純潔や貞操という言葉には、昔から縁がない。
 携帯が鳴った。平田がベッドの上でうとうとしていた。
「はい」
「俺だ」
 田村からだった。

キチガイたちの挽歌 8



 午前五時。陽が暮れると、嬌声をあげて笑いあいながら腹を探り合う、夜の蝶たちと金を持った男たちで賑わう通りだが、今は人影はない。
 ふらつく足で何とかクラブ「ムーンライト」のドアまでたどり着いた。
 ドアを開ける。床に大理石が敷き詰められた、男たちが集う夢の世界。ソファに座るだけで数万円かかる、ゴージャスな異空間が広がる。
「おつかれ様です」護衛の若いメンバーに迎えられフロアーに入ると、奥のソファに金村ツヨシと木村タクヤがすでに座ってグラスを傾けていた。
「なんだ、そのツラぁ。元気ねえな」金村が笑う。
「陽子にとことん吸い取られたか」
 事情を知っているタクヤが笑う。この店はタクヤの店で、彼女を雇っているのもタクヤ総長の指示で陽子をタクヤに届けたのも彼だ。
 店の開店は午後七時から。バーテンもまだ来ていない。関東連合の幹部会はいつも開店前のムーンライトで開かれる。
「九州に帰れと突っぱねてやったぜ」
 金村は自慢げにそう言い放ち、グラスのスコッチを煽った。それをみて、タクヤが大きくため息をついた。
「なんだよ、タクヤ。不満なのか?」金村とタクヤはタメで、お互い幹部だ。
「道仁組は筋を通している。よそのシマに土足で上がり込んで来たわけじゃない。きちんとした組織同士が互いの信頼関係のもとにビジネスをやっていたところに、俺たちが割り込んでいったんだ。ルールを破ったのはこっちだ」
 東京では、覚せい剤は極東会と住吉会の二大組織が独占的に捌いている。そして商品を卸しているのが道仁組だ。
 金村が木村タクヤに厳しい目を向けた。
「俺が言いてえのは、なんで九州の田舎ヤクザが調子こいてここいらで薬局やってんのかってことだよ。俺たちだって見ぬふり出来ねえじゃねえか」
「卸売と小売では役割が違う。今も販売は関東勢がやってるんだ。九州も喧嘩を売ってきたわけじゃない」
「おめえ、腑抜けになったんじゃねえのか?」金村の目がギラリと光る。「クラブだぁ、芸能プロダクションだぁ、何かと女使って合法的にやりやがって。俺たちの基本はシャブだろ」金村がタクヤを睨んだ。「俺たちは以前からシャブ売ってきたんだ。道仁組からやいのやいの言われる前からよぉ。それを今さら俺たちから仕入れろったあ、どういうことだ。しかも今の仕入れより高く吹っかけやがる。それに、ここらが奴らの縄張りだって誰が決めたんだよ。欲しいものは力でぶんどる。それが俺たちの世界のルールだ」
「道仁組とやり合うのか?」
「向こうはたかが二百人の組織だ。こっちは声をかければ二千は集められる。それに、ハヤトみたいなキチガイもいるんだ。なんなら、博多に乗り込んでもいいぜ」
 金村がハヤトの肩を叩いた。「お前はどう思う?」
「全員ぶち殺せば、いいじゃないですか」
 金村が満足げな顔でハヤトの肩を叩いた。タクヤがまたため息をついた。
「今後、道仁会と揉めることになるので用心しろ。今夜の幹部会でも伝達があるはずだ。とことんやってやるぜ」
 金村がタバコの煙を吐き出す。
「ハヤト、メデューサのリョウってガキとその女にヤキ入れてこい。女はキョウコとかいうレディースの頭だ」
 メデューサは敵対する暴走族だ。
「知ってますよ。赤薔薇連合とかいうブスの集まりです」
 金村が大笑いする。
「それに、キチガイにやられた。リョウスケが襲われたんだ。重傷だ」リョウスケは関東連合の幹部だ。
「やったのはマムシだよ」
 ハヤトの目がぎらっと光った。マムシ。メデューサOB。正真正銘の極悪キチガイだ。
「マムシの奴、中防にシャブ食わせて兵隊にしている」タクヤが言った。「ナイフで刺させるんだ。相手は十六歳未満だ。別荘暮らしも一年くらいで済むからな」
「えげつねえこと、やらせやがる」
 シャバにいてはいけない男。中学時代からポン中で、メデューサOBでもマムシと関わりたくない者がほとんどだ。相手がヤクザでもむかついたらすぐに刺し、女だと攫って強姦する。中学の頃から強盗、リンチ、強姦の常習者で手が付けられない本物のキチガイだ。笑ったとかいって女子生徒を半殺しにしてレイプした事件は有名だ。
 そんな極悪人だから、中学二年の時少年院に収監され、出所した十七歳のとき、路上で肩が当たったといって文句を言ってきた大学生を刺殺し、少年刑務所にぶち込まれた。二月前に出所したばかりだ。
「奴にけじめをつけるんだ。このままじゃ、沽券に関わる」
 ハヤトは「やります」と力強く答えた。
 しかし、マムシは用心深い男だ。自分の居場所は仲間にも言わないし、襲う相手のことを徹底的に調べて奇襲をかける。気合を入れてかからないと返り討ちにあってしまう。
 会合は一時間ほどで終わった。
「陽子はどうだった?」
 金村が後輩を連れて店を出て行ってから、タクヤが訊いてきた。
「いやあ、ありがとうございました。凄い女ですよ、あれは」
「そうだろ。すげえ高い女なんだ」タクヤが笑いながら、バランタインをグラスに注いだ。
「どこかで誰かが糸を引いているかもしれない」
「えっ? 何がです?」
「関東連合をつぶそうとしているのか、道仁会をつぶそうとしているのか、あるいは両方か。お前も用心しろよ」

キチガイたちの挽歌 7



 洒落た和風創作料理の店。ここの日本酒がうまいと隆志が勧めていた店だった。
「陽子、でかい仕事が決まったんだ」
 オールバックヘアが今日も決まっている。建設業界の大物の息子。陽子の上得意だった。
 最近までは……。
「そう。どんなお仕事?」
「今度東京で建設予定のテーマパーク関係の仕事さ。倍率が高かったんだけどうまく潜りこめた。やりがいのある堅い仕事なんだ。これで陽子にもいい思いをさせてやれると思うんだよ」
「すごいわね」
 嘘だ、と陽子は察した。嘘と判断する理由があったわけではない。直感だ。男の微妙な表情の変化で、男の嘘は手に取るようにわかるようになった。
 佐田隆志は、親のコネと資金で自分の建設会社をつくった。成功しているときはもちろん羽振りも良く、陽子にも大金をふるまってくれたが、ここのところ事業が失敗続きで会社も赤字に転落してしまっている。
「私、欲しいマンションがあるの。六本木なの。とてもいいお部屋なのよ。好きなときにあなたが会いに来れるわ」
「六本木か。いいねえ」隆志が視線を逸らせた。
「ねえ、買ってよ」
 これでマンションを買ってくれれば、この男ともうしばらく付き合ってもいい。しかし、最近は月々の手当まで出し渋っているありさまだ。
 マンションを買ってくれないと別れると言って隆志が怒ったら、その時はその時。私との別れを口にしたら、その程度にしか私を愛していなかったということ。
 私は男にすがってなんか生きない。隆志なんかあてにしない。
「そうだな、買ってあげよう」
「本当?」
「ただし、二か月待ってくれ。二か月、延期してほしいんだ」
「そんなに待っていたら売れちゃうわ。とてもいいお部屋なのよ。私じゃ手付も払えないけど、隆志なら大丈夫でしょ?」
 隆志の顔が赤くなっている。
「どうしたの? そのくらいのお金、隆志ならなんとかできるんでしょ?」
 いつも調子こいて大ぼら吹いているから、こんな目に会う。この男からは散々巻きあげた。そろそろ切っておかないと、面倒なことになるかもしれない。
「私って、隆志に迷惑かけてるかな」
「そんなことないよ」
「これ以上、隆志に迷惑かけたくないわ」
「そんなこと言って、俺と別れるつもりじゃないだろうな」
 隆志の顔がますます赤く変わり、唇が震えてきた。
「このことだけははっきりさせておく。俺はお前とは別れないからな。俺の言う通りにしろ!」
 だったら、払うもの払え、馬鹿野郎。
「なにそれ? 隆志って私の亭主なの? 相手が亭主でも、私は自分の思い通りにするわ」
 怒りで血走った隆志の鋭い視線が突き刺さってくる。握り締めた拳が震えていた。
 金を出し渋る以上、この男に従う必要はない。
「なあ、クラブのホステスをやめて、俺だけの女になってくれよ。一生楽をさせてやるから」
 そんな言葉、信用できるはずもない。
「もちろん、隆志が養ってくれるなら、やめてもいいわよ。でも、お金って、どうなるかわからないじゃない」
「俺が事業に失敗すると思ってるのか?」
「確かな将来なんてないもの。現在を犠牲にするなんて、勇気のいることなのよ」
「お前、俺のこと全然信用してないじゃん。少しは自分というものを抑えることを覚えろ!」
「あら、私は抑えられない女よ! そのことは隆志もよく知ってるじゃない」
「まあな。確かにそこが君の魅力でもある」
「隆志こそ、口に出しては言わないけれど、心の中ではお金お金っていつも言っている私のことを蔑んでいるんじゃないの」
「そんなことないよ」
 陽子の目から涙がこぼれた。
「悪かったよ、陽子。マンション買ってやるから、泣きやんでくれ」
 隆志が陽子を抱きしめた。

 騎上位で身体を躍らせる。
 タプタプとイヤらしく形を変えながら上下に揺れる乳房を隆志の目が追う。
 隆志は股間に手を伸ばして、指先で陽子の敏感な場所を摘んだ。陽子の頭の中に火花が弾けて飛び散った。
 強い刺激を受けて激しくなる腰の動きに、勢い余って時折ペニスが抜ける。
 闇雲に何度も何度も突き上げられて、陽子は背中を弓なりに反らして悦びの悲鳴を上げ続けた。
 顎が上がり身体が硬直して、息が出来なくなる!
 切羽詰まった隆志の声に、陽子もすぐ目の前に迫った絶頂へ駆け登る。何度も波のように襲う絶頂感に飲み込まれながら、隆志の最後の瞬間を待つ。
 引き絞るような隆志の声が聞えた途端、陽子の中でペニスがビクビクっと震えた。
 頭の中が真っ白くなって、全身の感覚が抜けていく中、まだ固さを失っていない隆志のペニスの感覚だけが感じられる。
「隆志、すごかったわ」
 腰を落として陽子は隆志にキスをした。この男とこうやって性を交えるのも、これが最後かもしれない。
プロフィール

アーケロン

Author:アーケロン
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