「ぽあんとしてきた」
ストローから口を話した陽菜が、にっこり微笑む。ハヤトがさらにアルミホイルを炙ると、また白い煙が上がってきた。陽菜が器用にストロー煙を吸い取っていく。
「効いてきたか?」
不意に背中を指でなぞると、陽菜が「あっ……。んっ……」と喘いで体を捩った。
「すごく効いているじゃないか。身体が敏感になってるぜ」
「あん……。ねえ、して……」
バスタオルを剥ぎ取ると、陽菜は恥ずかしそうに両手で胸を隠した。彼女をベッドに押し倒し、胸の前から両手をどける。
「あ、ちょっと……明るいじゃん……」
その言葉を無視して、ハヤトは彼女の乳首を口に含んだ。陽菜がびくと体を震わせる。確かに、いつもより敏感になっている。陽菜の身体をうなじから鎖骨、胸へと舐めながら降りていく。
「あっ……。あんっ……」
ハヤトの唇が足の先までおり、再び這い上がってくる。シャブをきめているので、どこを舐められても、たまらないくらい気持ちがいいはずだ。
「あっ……。あ、あん……。ダメぇ……」
陽菜の脚を開いて、既に潤っている女の部分に舌を這わす。陽菜はハヤトの舌に合わせて腰をびくびく動かした後、エビのように身体を反り返らせ、大きな声を上げて果てた。
ぐっしょり濡れた膣に指を挿入すると、ぐったりしていた陽菜が叫び声をあげて腰をよじた。ゆっくりと指を動かし、中をかき混ぜる
「あんっ! あ……んっ! いやっ! 感じる……」
陽菜の腰の動きがどんどん早くなってくる。
「あっ。あんっ! いやぁ……。イッちゃぅ……だめぇ! んっ……イクイクイクッ…っ!あん! あん……」
オーガズムを迎えた陽菜の身体が、細かく痙攣する。
「あん……」
陽菜が体を起こして股間に顔をうずめてくる。丁寧に陰嚢を口に含み、陰茎の根本やサイドを舌や唇をフルに使ってゆっくり亀頭の方に上がっていく。その快感に思わず身震いをする。一七歳の女子高生とは思えないテクニックだ。
「どうやっていじめて欲しいんだ?」
陽菜がペニスを口から離し顔を上げた。
「じゃあ……バックから」
陽菜は自分から四つん這いになり、尻を向けてきた。バックから陽菜の入り口を勃起したペニスの先端でゆっくりなぞるように動かしている。
「あんっっ……早くぅ……。」
もう早く欲しくてたまらないといった感じで、尻を振ってくる。
ペニスの先が中に少しだけ入っただけなのに、陽菜は大きな声を上げ、身体を大きく痙攣させた。ゆっくりと奥まで入っていく。奥に進むにつれて陽菜の声と身体の反応が大きくなってゆく。
そして、奥まで入り、腰をゆっくり動かす。
「あぁ……あっ! めっちゃ、奥に……あ……当たってるぅ……。あんっ……ヤバいょぉ……」
バックで二十回ほど突くと、陽菜は再び叫び声をあげて達してしまい、四つん這いからうつぶせに倒れた。それでもハヤトは彼女の上に乗って後ろから激しく突き続ける。
陽菜がイッても突くのを止めない。シャブで敏感になった女の身体は、貪るように快感を求めるものなのだ。
その後もハヤトは体位を変えながら、ずっと陽菜を攻め続けた。何度オーガズムに達しても、陽菜は更なる快感を求め続けた。
「もぅ、そろそろイクぞ」
「ん……うんっ……」
「中に出してもいいか?」
「あん……中は……だ、だめ……。で……できちゃうから……そ、外に出し……てぇ……」
シラける女だ。関東連合の女になりたいのなら、ピルくらい飲んでおけ。
ハヤトは正常位に変えて再び陽菜の弱いとこを激しく突いた。
陽菜がたっすると同時にハヤトはペニスを膣から抜いた。精液が彼女の首もとまで飛んだ。
「よう、鈴奈」
「ツヨシ、迎えに来てくれてありがとう」
屈託のない微笑を浮かべた鈴奈が、金村の胸に抱きついた。
「飯、食いに行くか」
「ん……。店で食べてお腹いっぱい」
「じゃあさ、あそこの公園にいかね?」
「公園……? あ、ちょっと、ツヨシったらっ」
金村が鈴奈を公園に連れ込んだ。隅にある公衆トイレまで引っ張っていく」
「もしかして、ここでやる気?」鈴奈が眉を潜める。
「燃えるだろ」
「いやよ、こんなところで……きゃっ!」
金村は鈴奈の声を無視して、身体障碍者用の広いトイレに鈴奈を連れ込んだ。中は明るくきれいに掃除されていた。
金村は鈴奈の白いミニスカートに手をかけてパンティーごと引きずり下ろした。鈴奈が小さな悲鳴を上げる。
ブルーのニットシャツだけの姿にされた鈴奈。金村がズボンを脱ぎ捨てた。ペニスが激しく硬直している。
「エッチしようよ、エッチ」
金村が鈴奈の首筋を軽く舐めながら、猫撫で声で甘えるように鼻を鳴らした。
「ふう、すっきりしたぜ」
金村は鈴奈からペニスを抜くと、半分萎えたそれをパンツの中に押し込んだ。
「ねえ……ツヨシ……」
「なんだよ」
「私って処理用?」
股間から流れ出る金村の精液をトイレットペーパーで拭いながら、鈴奈が窺うような目を向けた。
「なんだよ、それ」
「だって、大切な彼女とは、こんなところでやっちゃったりしないんでしょ?」
「そんなことねえよ。マンネリ解消のために、仲のいいカップルも普通にやってるよ」
射精してすっきりしているときにこんな話をされるほど、鬱陶しいことはない。金村は鈴奈がパンティを引き上げるのを待ってトイレのドアを開けた。
公園を出て駅に向かって歩いていく。鈴奈が少し離れて後ろをついてくる。ここまで重たい女だとは思わなかった。
そろそろ切り時だな。
タクシーでも捕まえようと通りに出ようとした時、数人のグループが目の間に現れた。
首筋にまで刺青を入れている危なそうなモヒカン野郎が、胸を反り返らせてタバコを吸っている。それに、黒髪を短髪にした柄の悪い如何にもヤクザでございといった風貌の男と、中坊が二人。ご丁寧にも日本刀を持ってきている。
「なんだあ、お前ら」
普通の人間なら、金村の強面のメンチと怒号で震え上がったであろう。しかし、五人の男たちはにやにや笑っているだけで、ひるむ様子もない。
ささやかなツッパリか。金村は笑ってしまった。念のため、地面に落ちていたビールの空き瓶を拾い上げた。これで十分。しかし、どうしてこんなところにビールの空き分が落ちているんだ。そう思うと、金村はまたおかしくなって笑った。
「へらへらしてんじゃねえよ。お前は馬鹿か」刺青モヒカンの目がぎらっと光った。
「はあ? 何言ってんの、お前」
「余裕こいてんじゃねえよ。お前、これから殺されるんだぜぇ」
「あのさぁ、てめえら、俺を誰だと思っているんだ」
「金村だろ、女を食い物にしている社会の屑。ついでに関東連合のゴキブリ四天王様だ」
「なんだぁ、こらぁ」
関東連合を馬鹿にされた以上、許すわけにはいかない。
「てめえら、全員殺すから」
中防が日本刀を抜き放った。
「やってみろよ。人は動くからな。まな板の上で、大根を切るようにはいかないぞ。自分の身体を傷つけるなよ」
相手の動きに応じられるよう、自然体の正しい姿勢で、ビール瓶を構える。
中防がかかってきた。盲滅法に日本刀を振り回す。すぐに、息を切らす。
「お前、素人すぎ」そういって目の前の中防の股間を蹴りあげた。中防がもがき苦しみながら地面を転がる。金村は地面に落ちている日本刀を足で蹴って脇にのけた。
「ケッ! 偉そうなのは口だけか。おい、そこの角刈り」
その言葉に、角刈りの男の身体がぴくっとした。
「さっき、なんて言った?」
金村はゆっくりと、角刈り男に近づいていく。
「あぁ? 聞こえなかったのか? 関東連合のゴキブリ四天王だって言ったんだよ! 大したことないくせに偉そうにしやがって! ふざけんじゃねぇぞ、この野郎!」
男の怒号と、ビール瓶の破片が飛び散るのと同時だった。
あっという間だった。
ビール瓶が男の頭上に叩きつけられ、男の頭から紅い鮮血が吹き出した。男は、瞬く間に地面に倒れこんだ。
血で染まった割れたビール瓶を持って、金村は男を見て佇んでいた。周りの中坊たちは、一瞬何が起こったのかわからなかった。
「悪い。聞こえなかった。もう一回言ってくれ」
金村は地面に倒れこんだ男の顔面に、革靴を履いた足で蹴りを入れた。
「俺の気のせいだよな?」
次に足は、男の腹に叩き込まれた。
足は男の内臓に深く食い込み、男は吐瀉物を吐き出した。
「気のせいだと思って聞き流した。もう一回言ってくれ」
金村の足は、もはやどこを狙うのかも適当だった。適当に、男の身体に蹴りを容赦なく叩き込む。
「たしか、『関東連合のゴキブリ四天王』って言ったよな? 俺の聞き間違いか?」
頭をビール瓶で叩き割られ、何度も蹴りを叩き込まれたが、男にはまだ意識はあった。
「い……言ったぜ……」
「……は? ん? じゃ何か? 関東連合四天王のことゴキブリ呼ばわりして、無事でいられると思ったわけ」
革靴の蹴りが無慈悲に、何のためらいもなく、何度も男に叩き込まれた。あまりにも凄まじい出来事に、中坊たちは呆気にとられていた。
「そのへんにしとけや、こらぁ」
刺青モヒカンが口元をゆがめた。怒気を孕んだ顔は、街灯の灯で蒼白だった。金属バットを持っている
「こいつ、やばいよぉ……」
鈴奈が泣きそうな声を出す。中坊たちはまだ立ち竦んだままだった。
「そうか、思い出した。そのまぬけ面、メデューサのマムシだな」
男の顔が変わった。
「ふざけんじゃねえぞぉ! こらぁ」
暗がりの中に怒声が響いた。マムシが金属バットを持って猛然と突っ込んでくる。
「殺ってやる!」
しかし、金村は素早くマムシの懐の飛び込むと、そのまま地面に投げ飛ばした。
「この腐れボケェェがぁぁッ!」
憤怒に顔面を赤銅色に染めた金村が、怒鳴りちらしながらマムシのドテッ腹を殴りつづけていた。強張る首筋の筋肉に、脂汗がぬめついた。
「ふざけんじゃねえぞぉぉッッ、関東連合の四天王をゴキ呼ばわりして無事に済むなんて思うんじゃねえぞよぉぉぉッ! ああぁッ?」
顔をさらに歪ませながら、金村がマムシの顔面に唾を吐き捨てた。
苦痛に腹部を押さえ、うめくマムシの横顔に、金村の容赦ない拳が飛んだ。顎に当たり、マムシの唇が切れた。
「ふざけんじゃねえぞ、このガキがぁッ、テメエらガキに舐められてたまるかぁッッ!」
モヒカンの髪の毛を引っつかみ、何度も揺さぶりながらマムシの耳元で金村がわめく。唾がマムシの頬に飛んだ。マムシがあえいだ。
そのとき、身体がぐらっと揺れた。右の脇が熱く焼けるように痛い。鈴奈の悲鳴が響いた。お前、まだそこにいたのか。
「なんだぁ?」
ゆっくり振り返る。日本刀を持った中坊が、その場に立ちすくんでいた。
「ガキが」そういって立ち上がった金村の傍に、中坊がさらに日本刀を突き刺した。
「痛ってえなぁ」
そう言ったと思った。しかし、それは金村の言葉ではなかった。立ち上がったマムシが、金属バットを持ってこちらを見下ろしていた。
金属バットが金村の頭部に振り下ろされた。鈍い音が立て続けに響いた。金村は地面に叩き伏せられた。
そして、宴会が始まった。
ハヤトは席を立ち、タクヤと押尾が座る席に行った。陽子が二人についている。
陽子と目が合うと、彼女はふっと視線を逸らした。タクヤはそれに気づいたのか、うっすら苦笑いを浮かべた。
「お久しぶりです、押尾さん。ご活躍はテレビで存じてます」
「おう、ハヤトだったな」
押尾は芸能人でありながら、関東連合幹部。女を薬漬けにして犯すのが趣味の男だ。局のディレクターに上玉の女をあてがい仕事を手に入れている。この世界では、女は貴重な貢物である。
「新しいドラマとCMが決まったそうだ」タクヤが言い添える。
「それはおめでとうございます」
「こいつ、今度のドラマで何の役をやると思う? 心優しき小児科医だってよ。笑っちゃうだろ」
「子供は苦手だ。作るのは得意だけど」といって、押尾が笑っている。
「陽子、ハヤトの相手をしてやれ。こいつには世話になったんだ」
「だから、私も世話したもん」
「そういうな」
タクヤに促され、陽子がハヤトの横に来た。
「私、この店辞めようかな」
ムーンライトの人気ナンバーワンホステスが、疲れた調子で呟いた。
「は? 辞めてどうするんだよ」
「真面目に会社に勤めたい。OLとか」
「会社? お前が?」
はは、と乾いた笑いが口をついた。
「なんで嗤うのよ」
「お前には向いてないだろ。だいたいお前、事務仕事で我慢できるのか? 給料だって今の何分の一も下がっちまうんだぜ」
「ふん……」
もちろん、陽子にそんな気がないことはわかっている。拗ねているだけだ。
「ここ、やめないでくれよ。寂しくなるだろ」
「私が辞めたら、タクヤさんに怒られるからでしょ?」
はっきりと言い返す言葉もない。ハヤトは口ごもった。
「ここにいる男たちって、みんな女から甘い蜜啜ってるのよ。あの三人の芸能人だって、いろんな男に抱かれてきたんでしょ?」そういって、広末涼子たちのいる席を見た。
「その代わり、女だっていい思いしているじゃねえか。お前だって、ここにきて金持ちになれただろ? それに、芸能界にもデビューできる」
「なんか、虚しいの。華やかな生活のために、好きな男にも会うことができなくなるのが」
そういって、潤んだハヤトの目を見た。
「近いうちに連絡する。タクヤさんには内緒だぞ」
「ほんと?」
陽子の顔がパッと明るくなった。
陽子の膝を叩いて立ち上がると、コウイチの待っている席に戻った。ソファに腰を下ろすと、コウイチの真顔が目に入った。
「何の話をしているんだ」
「マムシだよ。この前、中坊に仲間が刺し殺されただろ」
「シャブ中の中坊だったな」
「マムシの奴、中坊を兵隊にしているんだ。あいつら少年法に守られているから怖いものなしだろ。マインドコントロールして連中を煽っているんだ」
コウイチのいう通り、中学生に怖いものはない。少年法に守られているので、喧嘩で刺すのは当たり前、殺したら英雄になれる。少年法に守られているから殺人でも一年ちょいで娑婆出れる。高校以上は5年は食らうが、中学ならまだ軽い。そういわれ、ガキどもはみんな騙される。
年少くらいでヒーローになれるんだから、喜んで殺そうとする。これまで何人も殺して何人も懲役いっている。そこらのヤクザなんかよりよっぽど危ない。
それを利用してメデューサのOBのマムシが中学生を少年ヒットマンとして大量生産しているという噂があった。
「ガキもかなりイカレているらしい。シャブ食ってパーなんだよ」
「そう言えば、マムシは道仁会の組員だったな」
「いや、それが入れてもらえなかったらしい。危なすぎて。ヤクザにも入れてもらえねえくらいやばいって、どれだけやばいんだよ」
「ちょっと、話してもいい」
弾むような綺麗な声にハヤトは顔を上げた。AV女優の飯島愛だった。
「タクヤさんから聞いてるわ。陽子の彼氏なんでしょ?」
「彼氏?」いつからそんな話になったのだ。
「私、陽子の友達なの」
「俺たちもあんたの活躍はよく知ってるよ」
「じゃあ、抜いてくれたことあった?」
愛の言葉に周囲が笑う。
「今度試してみるよ」
「タクヤさんがあなたのこと、気に入っているみたい。クラブ関係の仕事を任せるみたいなこといってたけど」
それで、この女は俺に話しかけてきたのか、とハヤトは思った。
「クラブにもヤクザが目付けだしたから、タクヤさんに呼ばれているだけだ。単なる用心棒だよ」
都内のライブの利権は、ほとんどタクヤが掌握している。パーティー券を後輩に捌かせたりしているし、クラブでは薬も売り捌く。
渋谷、新宿、六本木のクラブやパーティー系は、タクヤの指示で関東連合が全部仕切っていた。どんなところがサークルしているかの報告は、すぐに関東連合に入る。関東連合に話し通さないと、すぐに潰しにいく。それがハヤトの役目だった。
クラブもイベントもパーティーも開けないから、誰もが金を払うのだ。
「では、皆様お待ちかねの、今夜の女たちです」
司会が、後輩の幹部に代わっていた。カウンターの奥から女たちがぞろぞろ出てきて、壁に沿って並んでいく。
フロアーのあちこちから拍手の手があがる。
「なに? なに?」
愛が目を丸くして顔を上げ、壁のほうを見る。
「今夜のお土産さ。幹部たちはあの中から好きな女を抱けるんだ」
「わあ!」
この幹部会の楽しみの一つである。
各グループ幹部が経営するキャバクラで働く新人が、この役をあてがわれる。金は会費から出る。関東連合の会費は年1億を超える。女たちにとっていい臨時収入になるのだ。だが、陽子のような高級な女は今回のような会合の土産には入らない。
裏社会で金と力を持つ奴の共通項は『女を押さえる』ことに尽きる。幹部たちの会社を調べると、行政や経団連企業のお偉いさん達が天下っている。何でこんな大物がこんな会社にと思うほどに。
答えは簡単だ。そんなお偉いさんたちに斡旋してる女の質がハンパじゃないからだ。
有名なAV女優はほぼ押さえてるし、金髪外人も凄いのがいる。
ここにいる連中は、暴力と女で強烈な力を得て、この裏社会でのし上がっているのだ。
壁に並ぶ女たちを見て、現役の暴走族のトップたちが顔を輝かせている。
「では、この幹部会を最後に現役を退き、我々OB会の仲間となる四名に、石元総長からのプレゼントを渡したいと思います」
各暴走族のトップが席を立ち、誰がどの女を抱くか相談している。
「では、先輩たちのありがたい贈り物をいただきたく、私は3番のマイカさんをお願いします!」
男の声に会場が拍手で包まれる。
「ご指名ありがとうございまっす! あなた、なんてお名前?」
「千歳台黒帝会総長、金井誠也です!」
「元気いいわね、今日は溜まってる?」
「はい! 溜まってます!」
「そんなときは?」
「やっちゃう!」
「パーっとやっちゃう?」
「やっちゃう! やっちゃう!」
「じゃあ、行きましょう!」
「ありがとうございまーす!」
乗りのいい二人のやりとりに、会場は大いに盛り上がった。マイカはソファの間を通って金井のところにいくと、豊満な胸を押し付けるように金井と腕を組んで、フロアの出口から退散していった。
そして同じやり取りで残り3人も女を選び、フロアを出て行った。
「では、これで本日の幹部会を散会いたします。他の幹部の皆様も、前に並びます美女たちでお気に入りの物がありましたら、この場を連れ出して結構ですよ」
次々に手があがり、女を連れて幹部たちは続々と会場を出ていく。
よし、行ってくるぞと言って、コウイチが飛び出していった。
「ハヤトはいかないの?」
「ああ、俺はいい」
ハヤトが席を立って出口に向かった。目があった陽子に睨まれる。
「ねえねえ、場所代えてこれから一緒に飲もうよ」
飯島愛が誘ってくる。
「それでね、そのあとホテルに行こうよ」
愛は明らかに陽子に聞こえるように言っている。
陽子がつかつかと寄ってきた。
「彼にはもう一滴も残っていないわよ」
「もう復活してるわよねぇ」
陽子に睨まれ、ハヤトは肩を竦めた。
「じゃあ、3人一緒に飲みに行こう」
ビルの外に出て、愛がよくいくという高級クラブに向かった。愛と喋ることで、陽子の機嫌もいつの間にか直っていた。
「タクシーを捕まえるから待っていろ」
ハヤトが道路に出て通り過ぎるタクシーに向かって手を上げるが、遅い時間帯なのでなかなかつかまらなかった。
ホスト風の男が三人、向こうから近づいてくる。彼らを見た飯島愛の目が暗くなるのがわかった。
「よお、コンクリート」
すれ違いざまにそう声をかけると、男たちはそのまま立ち去って行った。
「何よ、あいつら」陽子が不機嫌そうな目で三人の背中を見ている。ハヤトは愛の顔を見た。強張った顔から、血の気が消えているのがわかった。
ガードレールを超え、大急ぎで二人のところに戻った。
「どうしたんだ?」
ハヤトが聞いても、愛は答えない。
「あいつら、ヤキを入れてこようか」というが、「いい」といって、愛はひとりで歩き始めた。
午後七時半。
東京の繁華街に立つ。今夜も多くの女たちが、花に群がる蝶の如く集っている。
ハヤトは、都内で随一、高級クラブがひしめく華やかな界隈にぽつんと立っていた。エントランスからしてきらびやかなビルを見上げて、ゆっくりとため息を吐いた。
こんな場所にクラブを出すタクヤは、やっぱりすごいと思った。
このビルの二階に高級クラブ『ムーンライト』がある。ハヤトは足を踏み出してエスカレータに乗った。俺だっていつかは追いついてやる。
二階に登ると、正面に黒光りする重厚で華麗なドアが待ち構えていた。ドアを開けると、当番の後輩が玄関に立っていた。
「お疲れ様です」
「みんな来てるか」
「はい、だいぶお揃いのようです」
磨き込まれた大理石の上を歩いてフロアに出る。
輝くシャンデリアの下、高級なソファや調度品がラグジュアリーな空間を演出している。きらびやかなドレスをまとったホステスたちが泳ぐようにソファの間を縫い、幹部たちに笑顔を振りまいている。
三か月に一度の幹部会。そして、関東連合OB会の権威を示す集会でもある。
フロアを見回す。芸能プロダクション経営者、AVプロダクション幹部、クラブのオーナー、イベント会社の役員。あと、闇金融、不動産、格闘関係、店舗経営、水商売で活躍の面々がそろっている。芸能人も何人か来ているようだ。
だれもが一癖も二癖もある顔をしている。
暴走族の域を遥かに超えたネットワークを張り巡らせている関東連合OB会。年に数十億もの金を動かす、この組織に、ヤクザだって迂闊に手が出せない。
「よう、ハヤト」先に来ていたコウイチが手を挙げた。ハヤトはコウイチの横のソファに腰を下ろした。
「お前、あのキョウコとかいうレディースの女を囲ってるらしいじゃねえか」
「まあな」コウイチがタバコの煙を天井に向かって吐き出す。
「あそこの締まりは抜群だし、巨乳だし。きつそうな顔がたまんねえんだ。命令通り素直に客とってくるしよ」
「阿漕なことしやがる」
タバコを咥えると、ソファの間を泳いでいたホステスがやってきて火をつけたライターをさしだした。マナだった。
「ヒトミは? 今日は来ていないのか?」
「あの子、売掛け溜まってバックレたらしいの」マナが暗い顔で唇を突き出した。
「はああ? いくら?」
「相当溜めてたみたいでさ……一千万超えてるの」
「相手は?」
「川辺とかいう、鉄工所の社長。ツケ取りに行ったら、会社が倒産していて、本人は雲隠れしたらしいの」
「しょうがねえなぁ」
ハヤトが煙を吐き出して頭を掻く。
「ねえ、彼女、助けてあげてよ」
「わかったよ。俺が行って、ツケ、取り立ててきてやる」
「ほんと? でも、半分とか持っていくんでしょ?」
「馬鹿いえ、仲間には手数料はタダだよ。ただし、これは貸しだ」
「コイツの貸しは高いんだぜ」といって、コウイチが笑っている。
ヒトミに連絡するようにマナに言うと、彼女を仕事に戻した。
「借金しか残ってないやつからどうやって金取るんだよ。娘でもいりゃいいんだが、ブサイクじゃあ金にならないぜ」
「なんだっていいさ。むしりとるものが何もなけりゃ、まあ、角膜か内蔵くり抜けば金になる」
「やくざだねぇ」コウイチが高々と笑った。
カウンターに近い奥の席に、飯島愛、広末涼子、蒼井優の姿も見える。三人とも「関東連合の女」だった。数年前まで関東連合の男たちに性欲処理用として抱かれまくっていた女たちだが、今はいっぱしの芸能人にまでのし上がっている。
手前のソファには、押尾守がタクヤの横に座っている。押尾は関東連合OBでタクヤとはタメだ。
来ている芸能人はこの四人。それぞれ関東連合の組織力を背景に、芸能界で名を売った。押尾は子飼いのキャバクラ嬢を、女たちは自分の身体を、業界の実力者にあてがってその地位を築いたのだ。
陽子がカウンターの奥から出てきた。フロアをぐるりと見回してハヤトを見つけた。
「こんばんは」
近寄って話しかけてくる。
「世話になったな」
「あれくらい、大したことないわよ。あなたももう復活したでしょ。どれだけやっても若い男の子は一日で復活しちゃうもんね」
ハヤトの前に跪いてドリンクを作ると、膝の上に置いていた手を握ってきた。
「この後、私、暇なの」
「俺には用がある」
笑顔が消え、陽子の顔が険しくなった。「なにさ」と言って立ち上がり、去っていった。
「ここのナンバーワンだよな。あいつとやったのか?」
「例の件のご褒美だといって、タクヤさんから一晩預かったんだ。小便臭い女だったよ」
「贅沢言うなよ。一晩ウン十万の女だぜ。それに、さっきも誘われてたじゃねえか。どうしてやらねえんだ」
「タクヤさんに黙って勝手なことできねえよ」
「律儀な奴だなぁ。とくにタクヤさん相手だと」
「あの人はすごいよ、ほんと」
あと五分で幹部会が始まる時間だ。五分前にはすべての幹部が勢ぞろいしていた。会議に遅れてくることは許されない。
杉並区や世田谷区を拠点とする「関東連合」は全部で4グループからなり、構成員は約百二十人。現役は、「千歳台黒帝会」総長の十八歳、「用賀喧嘩会」会長の高校三年生十九歳、「宮前愚連隊」リーダーの高校一年生十八歳、「高井戸魔天使」頭の十八歳。いずれも未成年者で、この会終了後、後輩にトップの座をゆずってOBの仲間入りを果たす。
各グループのOBでまとまってそれぞれグループを作り、夜の街に巣食い、利益を貪る。そしてこの4グループが相互に連絡を取り、定期的に幹部会を開いてはお互いのメンバーの絆を強め、「関東連合OB」としての組織を維持している。そして、その総勢はいまや二千名を超える。
仲間がやられたら他のグループも含めて集合し、復讐をする。やりかえすのではなく、十倍にして返すのだ。相手がヤクザであろうが関係なし。いまや、ヤクザでも関東連合に逆らうものは少なくなった。
各グループのトップの下に、小さく枝分かれしたサブグループがいくつもくっつく。ヤクザのような何段にもわたる階層ではなく、グループトップの下は建前ではすべて平等に扱われる。実際は現役時代に暴走族のトップについた経験のあるものが幹部になり、いくつかの小さなグループをまとめて管理することになっている。ヤクザと同じ上納金を納める制度だが、それほど重い負担にはならない程度のものだ。
ハヤトは「千歳台黒帝会」十六代目総長で、幹部となってからは、5つのサブグループを率いている。金村もタクヤも「千歳台黒帝会」出身だ。
「関東連合OB会」の各グループトップは四天王と呼ばれ、その中からOB会の総長が決められる。現在の総長は石元。
「それでは、お集まりの皆様。これより幹部会を始めます」四天王のひとり、金村が司会を務める。
総長の石元がソファから腰を上げた。
「関東連合は、道仁会と戦争をすることになった」
開口一番、石元が言い放った。会場から拍手が起こる。
「各自、気を引き締めろ。敵の拉致に気をつけろ。道仁会とつながりのある奴を徹底的に叩け」と檄が飛んだ。フロアが拍手喝采であふれる。
四天王からの挨拶と報告が続く。各グループの幹部も緊張している様子だった。
江利香に対する男たちのレイプは、もう五時間にも及んでいた。
誰もが汗だらけで腰を振り続けているだけの猿だった。
入れ替わり立ち代わり男達に犯されて、だんだん意識が遠のいていき、このまま死んでしまうのではないかとすら思えた。
裸を見られるのが恥ずかしいなんて、そんなことを感じる余裕はなかった。
もう何人の男とセックスをしたのかすら分からない。本来なら、おそらくは人生の中で片手に納まるかどうかの人数としか経験しなかっただろうことを、一日で軽く超えてしまったことになる。そう思うと、とっくに枯れ果てたはずの涙が溢れ出して頬を伝った。
「おーい! なにグッタリしてんだよ、江利香ちゃんよお!」
順番を待っていた最後の男が、まだ正常位で繋がっている最中のベッドに上がって来た。
「ケツ掘ってやれば目が覚めるんじゃね?」
江利香を犯している男はそんなことを言いながら江利香を引き起こして、自分は仰向けになった。
「うっ……」
騎上位の体勢を取らされて、男のペニスが根元まで埋まった。
「しゃーねえなあ。……江利香ちゃんさあ、ケツの穴にチンポ入れたことあるかなあ?」
ベッドに上がってきた男は、無駄に大きな声を出しながら、江利香の後ろ側に回り込んだ。尻たぶを掴まれてグイッと左右に開かれると、江利香の尻の穴が露出した。
もう羞恥心を感じる余裕なんかないと思っていたけれど、排泄器官を剥き出しにされて、江利香の顔はカッと熱くなって真っ赤に火照る。
「小っちぇー! こんなんで俺のチンポ入るのかあ!? ま、強引にいれちゃうけどね!」
「ひ……」
男のペニスが江利香の尻の穴にピト、と狙いを付けたのが分かり、江利香は上擦った声を漏らした。
「や、やめて……やめてください……」
「お? もう目ぇ覚めてきたか? けど遅せえよ。今さら止められっかよ」
後ろの男が腰を突き出し、亀頭がグイグイとお尻の穴を押してくるが、何の準備もしていない窄まりは当然口を開かない。
それでも諦めずに押し込み続ける男は、江利香の腰をしっかりと掴んで、無理矢理ねじ込んできた。男のペニスを受け入れるにはあまりにも窮屈な穴が、メリメリと強引に押し広げられていく。
「か、はっ……」
江利香は口をパクパクさせながら空中を仰ぎ見た。前と後ろを塞がれた圧迫感で、頭がどうにかなりそうだった。
「うひょー! マジきっちぃ!」
後ろから尻を犯している男は、狂喜しながらペニスを奥まで入れると、力付くで出し入れを始めた。ほぐれていない尻の穴が限界を超えて出血する。
「あああ……」
「うら! うらあ!」
激痛に咽び泣く江利香に構わず、男は後ろからガンガン腰をぶつけてきた。
「おい! 少しは遠慮しろよ! てめえが動いてると、こっちが動きにくいだろうが!」
仰向けになっている前の穴を犯している男が怒鳴り声を上げると、江利香を後ろから犯している男も負けじと怒鳴り返す。
「うるせえ! ちょっとくらい待ってろ!」
「俺が先に入れてたんだぞ!」
「んなの知るかよ! やったもん勝ちだ!」
短い応酬の後、二人の男は我先にと腰を前後させた。江利香の身体は激しい動きにガクガクと揺さ振られる。
「う……うぅ……」
江利香はただ前後の穴を犯される痛みに呻いていた。
しばらくすると下の男が静止して射精した。ピュル、と気持ちの悪い液体を中に放たれる感触と、それがジワリと暖かく広がっていくおぞましさは、もう何度目のことか……。
直後に、後ろの男も江利香の尻の中に精を放つ。直腸に射精されたのは始めてのことで、また新たな場所を汚されたという思いがして、嫌悪感に全身がブルッと震えた。