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キチガイたちの挽歌 26



 陽子の頬に、激しい平手打ち。右から一発、左から返し。さらに、右から強烈な一発。陽子が床に崩れ落ちる。田村が陽子の髪をつかんで、部屋の中を引きずりまわす。
「田村さん、もうぶたないで! お願い! おとなしくするから」
 田村の眼がギラリと光る。暴力を行使したことで気分が高ぶっている。
「じゃあ、まず服を脱げ!」
 陽子は素直にシャツを脱ぎ、スカートを下ろし、ブラジャーを取る。まず田村を怒らせないことが第一。両手で乳房を押さえ、うずくまった。レイプされるのを覚悟する。
「もう1枚、脱げ。パンティーもだ」
 片足ずつパンティーから震える足を抜く。恐ろしさで恥ずかしさは感じない。
「立て! ポーズを取れ!」
 立ち上がり、乳房を押さえ震えていた。黒い茂みが田村に丸見えだった。
「いい身体をしているな。平田社長も惚れるわけだ」
 田村はますます興奮。顔が崩れて笑っている。
「乳房から手を取れ。そこに座って股ぐらを開け!」
 手を乳房から外し、尻の横につく。金縛りにあったように股がなかなか開かない。
「もたもたするな!」
 田村は、アーミーナイフを口に挟み、強引に膝をこじ開けた。黒い茂みの中にぽっかり桜桃色の肉塊部が現れる。田村、恍惚とした表情で見とれる。唾をつけた指を入れる。こねまわす。舌をねじ込み舐め回す。陽子は眼を閉じてじっと耐えた。
 目を開けると、田村が顔を寄せ、亀裂を広げじっと見入っている。
「いい眺めだ。ピンクの内臓。ぐいぐい来るぜ。いい。いい。最高だ!」
 田村の興奮は頂点にさしかかっている。涎がたれている。眼が異様に輝いている。硬直した肉塊に突き刺されるのは時間の問題だった。
 陽子を腰抱きにして股座の上に乗せると、田村はキチキチに固くなった逸物を陽子の秘唇へとこすりつけた。
「ほぐしておいてやらんとなあ……」
 下卑た笑いを浮かべる田村。
「ううぅ………んっ!」
 敏感な肉襞で田村の剛直を感じ取った陽子は、おぞましさに喉をつまらせた。ビクビクと脈打つ田村のペニスを秘唇にこすられる。
 やがて、膣壁をおしやって、ペニスが侵入してきた。
「あっ………ああ、あんっ! きゃうんっ!」
 亀頭のエラが肉壁をえぐるたびに、陽子の唇から淫媚なあえぎ声が噴出す。
「来た来た来たああっ! その調子だぜっ!」
  田村はますます腰を振り陽子の細い腰を上下に振りたてて摩擦を強めた。パンパンッと田村の股と陽子の薄い尻がぶつかり合う肉音が、汗と愛液を振りまきながら部屋中に響き渡る。陽子の肌のなめらかさと熱く濡れそぼった秘貝の感覚に、田村もまた頂点を極めようとしていた。
「出るぞ! 出るぞっ! 出るぞおおおっ!」
「やめてぇ!」
 陽子は激しく上半身をよじらせた。
 田村の欲望を股間で受け止めた時、目から涙がこぼれた。
「股ぐら、洗ってこい」
 ペニスを抜いた田村の気持ちが沈まっている。さっきの狂気が消え失せている。

 どれくらい時間が経っただろうか。凌辱されたショックでぐったりしていると、ドアがノックされる音で目が覚めた。
 ドアが開く。田村の予期尾に立っている男。顔じゅうがピアスだらけ。やばい男だと、本能が警笛を鳴らす。
「どうだ、マムシ。ムーンライトのナンバーワンだぜ」
 マムシ……。ハヤトたちが追っている男だ。
「どうだ? 一発やっていくか?」
「いらんよ、こんな腐れマンこ。お前らが汚しまくってんだろ」
 へへへ、と田村が下卑た笑いを浮かべる。
 そのまま二人が部屋をでていった。ドアの向こうから二人の話声が聞えてくる。
 何を話しているのか。話の内容によっては、ハヤトの役に立てるかもしれない。ドアの傍に寄って聞き耳を立てるが、話の内容がうまくとらえられない。
 やがて、二人の話が終わり、玄関のドアのしまる音がした。
 マムシは帰ってしまったのか。
 そう思って耳を澄ましていると、突然ドアが開いた。
「やっぱり聞き耳を立てていやがったな。マムシの言っていた通り、お前も関東連合の女なんだな」
 田村が陽子の頬を張り倒した。悲鳴をあげて陽子が床に倒れる。
「陽子。お前とはずいぶんやりまくったよな。俺よ、そろそろお前に飽きちまったぜ」
 ケダモノの不気味な低い声を聞き、陽子が薄目を開けた。田村は口から煙を吐きながら陽子を見下ろしていた。
「実はな、お前の代わりに新しい奴隷をつれてくることになった。結構いい女だぜ。女子高生だぜ。胸なんてメロンみたいにでけえんだ」
 そう言って、田村が笑った。陽子は身体を起こして田村を見た。
「だからお前はもう用済みだ。このまま帰して警察に駆け込まれるのもつまらねえから、殺してその辺に埋めてやる」
「いや、赦して、殺さないで」
 陽子は身体をぶるぶる震わせて泣き始めた
「何でもします! だから殺さないで!」
 陽子は田村の脚にすがりついて泣きじゃくった。
「だめだ」
 田村は立ち上がると、陽子の頸に手をかけた。陽子は恐怖のあまりその場で失禁した。
「けっ! 小便漏らしやがって。でも、恐怖で震える女ってのも興奮するぜ。へへへ、チンポがまた硬くなっちまった」
 田村は股間で凶暴に猛り狂った肉棒を陽子の前に突き出した。
「殺しちまう前にもう一発やっておこうか。この身体も見納めだな」
 田村はそう言って陽子にのしかかってきた。
「いや!」陽子は叫び、覆い被さった田村の股間を蹴り上げた。
「ウオオオ!」
 田村はうめき、前のめりに倒れこむ。
 陽子はすばやく田村を押しのけて立ち上がり、部屋を飛び出して玄関のドアに向かって跳躍する。
 しかし、ドアは鍵がかかっていた。陽子はガチャガチャとノブをゆすり、
「助けて! だれかあああああ!」
 声の限りに叫んだ。
 我に返った田村が、陽子に飛びかかって彼女を取り押さえようと迫った。陽子はその手に噛み付いた。
「おう!」
 田村が怯んだ隙に、陽子はもう一方にある非常口へと萌香は逃れようとした。
「このアマっ!」
 田村が叫び、逃げようとする陽子の髪をつかんで引倒した。 全裸の陽子が床に投げ出される。テーブルからグラスが床に落ちて砕け散った。
「こいつ!」
 手を噛まれた田村が、傷口に血を滲ませながら舌うちした。
 床の上に投げ出された陽子に馬乗りになり、顔面に往復ビンタを食らわせた。衝撃に目がくらんだ。意識が遠のきそうになる。
「おら! どうした! 逃げてみろよ」
 田村は陽子の身体を舐めるように見た。
「たっぷり辱めてから……殺してやる」
 田村は陽子に襲いかかってきた。
「嫌!」
 田村に床に組み伏せられる。
 逃げようと思って床を這おうとすると、手に固いものに触れた。グラスの破片だった。
「いやああぁぁぁ!」
 陽子は手に持ったガラスの破片を無我夢中で振り回した。田村が悲鳴をあげ、目を咄嗟に手で押さえた。血が流れている。
「このアマ!」
 田村が陽子を睨んだ。床に尻もちをついていた陽子は恐怖のあまり足がすくんで動けなかった。ガラスの破片を握りしめた右手が震えている。田村が立ち上がった。
 田村に「体当たりすると、崩れ落ちるように倒れ、そのまま動かなくなった。
 陽子は部屋の隅に落ちていた下着と服を身につけた。服を着るなど何日ぶりのことだろう。
 田村が呻き声をあげている。玄関ドアを出て階段を駆け降りる。建物のドアを開けると、
夜の静寂の中、陽子は走った。
 外へ出られた。逃げることができたのだ。
 陽子は必死で未舗装の細い道を走った。街灯などなく月明かりだけが頼りだ。幸い、今夜は満月である。
 陽子は何度も後ろを振り向いた。あの田村が追いかけてきそうな予感がして背筋がぞっとした。
 道路は意外と交通量が多く、ヘッドライトを照らした乗用車が目の前を次々と通過していった。ここで車を拾えば我が家に帰れる。あの地獄から抜け出すことができる。
 前から車がやってきた。通りに出て車を停めた。若い男が乗っていた。

キチガイたちの挽歌 25



 職安通りが近くなると人影がまばらになる。きらびやかなネオンよりも闇の方が深くなる。行き交う男や女たちは、どの顔も曰くありげだった。
 突然、鼻に付く可塑剤の匂い。シャッターを下ろした店の前で、ドス黒い顔色の男が顔を上げ、ハヤトを見てにやりと笑った。歯茎が腫れて出血している。それと、何とも言えない口臭。右手にはビニール袋。有機溶剤中毒者だ。
「いい加減にしねえと狂うぞ」
 ハヤトの言葉に、男はにやりと笑った。腑抜けのような笑顔だった。
「ほっとけ、そんな奴」
 コウイチが顎をしゃくった。「時間が過ぎてるんだ。タクヤさんが待ってるぜ」
 背後から猛烈な勢いで靴音が迫ってきた。複数の靴音が連続している。緊迫感があった。襲撃か。ハヤトとコウイチは思わず振り返った。
 サラリーマン風の男が走り抜けていった。恐怖で形相がゆがんでいる。後ろを眼つきの鋭い男たちが追っている。
「何だ、あれ」
 ハヤトが訊いた。
「ボッタクリだろ……きっと客が逃げ出したんだ」
 コウイチは事もなげに言った。
「あんな顔で追いかけ回してたら、誰かに通報されるんじゃないのか?」
「そんなことしても無駄さ。警察は民事不介入だと言って助けてもくれねえ。まあ、ボコボコにされて財布とカードを巻き上げられて終わりさ。まず、殺されることはねえよ」
 コウイチは悠長に応えた。この街では珍しいことではない。
 ムーンライトのドアを開けると、華やかな世界が広がった。
「いらっしゃい」
 ホステスたちの愛想のいい笑顔に迎えられ、事務所に案内される。ハヤトは店内を見まわしたが、陽子の姿はなかった。
「遅かったな」タクヤが店に入ってきたふたりを見た。
「ちょっと仕事で……」とだけ言った。
「ふたつある。一つはシャブがらみ。総長から連絡があった。今回の関東連合と道仁会との抗争に、関東ヤクザたちは介入しないことを、各親分たちは宣言したらしい。俺たちは以前からシャブを売っていたし、棲み分けもできていた。どこの縄張りも冒していない。親分さんたちもそのあたりはわかってくれている。それに、どちらが倒れても、関東勢にとってもいいからだろうからな」
 それぞれの組が、どこもやらないのか。
「道仁会が倒れると、他の組はどっからシャブを仕入れるつもりなんでしょうかね」コウイチが訊いた。
「その時は、うちが使っている卸を使ってもらうさ。中国産だがな」
 道仁会が捌いている北朝鮮産より、中国産は品質が悪い。
「そのうち、他のヤクザも道仁会に手を貸すんじゃないんですか?」
「それはないさ。どこのヤクザも関東連合とは揉めたくないはずだ」
 どの組も関東連合と揉めて痛い目を見ている。懲役上等でかかってくるし、ヤクザも恐れない。脅しのきかない相手となると、後は数と気合の勝負。若い奴が多い関東連合の方が有利だ。それも、メンバーが二千人を超えている。正直、どこも関わり合いになりたくないのだ。
「それで、もう一つは何ですか?」ハヤトが訊いた。
「昨日の夜、関東連合のメンバーが殺された」
 二人は息を飲んだ。
「誰がやられたんです」
「今年入った高校生らしいが、一人がバットでなぐり殺され、一人はナイフでめった刺しにされた。やったのはメデューサのマムシだ」
 くそ。コウイチが悔しそうに吐き出した。
「マムシはどこにいるんです?」
「探しているが、まだ見つかっていない」
 マムシは仲間にも居場所を教えないので、なかなか居場所をつかませない。用心深い男だ。
「メデューサと道仁会の幹部を的にかけましょう」コウイチが息巻いた。
「だが、道仁会は関係ないかもしれない」
「道仁会とメデューサが手を組んで、関東連合に襲い掛かっているって、総長もいってたぜ。それに、金村さんの仇もとらねえと」
「だが、マムシのことだから、道仁会とかメデューサに関係なく、自分勝手に動いているかもしれねえ」
「そうだな」とタクヤがいう。「とにかく、マムシを探し出せ。見つけ次第ぶち殺すんだ」
「当然ですよ」
 二人が頷いた。しかし、警察ですらつかめない奴の居所をどう探せばいいのか。
「メデューサでマムシと付き合いのある奴を監視させるか?」
「メデューサで奴と親しくしている奴なんかいねえよ。誰もあんな気違いとは関わりたくない。それに、自分専用のソルジャーまで養成しているっていうじゃねえか」
「じゃあ、そのソルジャーを探せ」タクヤが言った。「奴が使っているのは頭のいかれた中坊だ。探せば見つかる」
 はい、と頭を下げて、二人はタクヤに背を向けた。
「ハヤト」タクヤに呼ばれ、ハヤトが振り返った。
「陽子が行方不明なんだ」

キチガイたちの挽歌 24



 攫ってきた女をこの部屋で監禁し、シャブ中にする。逆らえなくしてから、裏風俗でも稼がせている。中坊たちにもシャブを食わせ、女とマジわせる。頭の感覚を麻痺させて、いざと言うときの鉄砲玉にするためだ。
「あの女、どうします」
 中坊に声をかけられ、マムシは部屋のシミを見た。完全に狂っている女がいる。痩せて使いものにならない。先日コンビニから拉致してきた女、太田江利香だ。
 江利香は来る日も来る日もこの部屋でマムシや中坊たちに犯された。コンビニからの帰り、夜道で攫ってこの部屋に連れてきたときは、まだ初々しい女子大生だったが、シャブ漬にされた彼女の体は、見る影もなくガリガリに痩せ細っており、骸骨のようだった。
 しばらくシャブを与えられていない江利香は、ずっと禁断症状に苦しんでいた。
「寒い……寒いよう……お願い、薬をちょうだい……お尻にシャブ浣腸をして……」
 江利香は部屋の隅にうずくまって一人で苦しんでいる。中坊達は、気味悪がって誰も近付こうとしない。
「ああっ! 虫が! 虫が体の中を這い回っている! 助けてえええ!」
 突然、江利香が発作を起こしたように暴れ始めた。自分で自分の腕や腹を掻き毟り、皮膚が破れて血だらけになる。周囲の中坊や女達は、恐怖に引きつった顔で、後ずさりし、距離を取って江利香を遠巻きにした。江利香は、全身の血管の中を小さな虫が無数に這い回っているような掻痒感に、気が狂いそうになっていた。
「薬! 薬を頂戴! 何でもするからああああっ!」
 マムシがわめき続けている江利香に近寄っていった。
「ねえ、あたしに薬を頂戴! どんなに恥ずかしい事でもするからああっ!」
 江利香が必死の形相で、マムシの足元にすがりついた。
「静かにしろ!」
 マムシが江利香の腹に強烈な蹴りを入れると、彼女は呻き声をあげて床に倒れた。
「もう、こいつはだめだな。シャブを打ち過ぎた」そういって中坊たちを見ると、「この女を捨てにいくぞ」といって、冷酷な目を使いものにならなくなった女に向けた。
 中坊三人で江利香を部屋から連れ出し、車に押し込んだ。
「お前、運転しろ」マムシが車のキーを投げた。
「おれ、免許持ってねえっす」
「だからなんだ。邪魔な奴がいたら引き殺したらいいんだよ」
「わかりました!」そういって中坊嬉しそうに運転席に飛び乗った。
 車の中でも、女は虫が這いまわっていると言って騒いだ。
「虫がいっぱいいるよ」といって、髪の毛をかきむしっている。
「虫がいっぱいいるよ」
「ほらほら、ここにも虫が這ってるぜ」マムシがそういって女の腕を指差すと、女が悲鳴をあげて腕の皮膚をかきむしった。マムシが大きな声で嗤った。
「ほら、ここで降りろ」後部座席のドアを開けて江利香を外に放り出すと、マムシたちを乗せた車がその場を走り去った。道路のまん中で、所在なさげに立っている江利香を見て、車内の男たちがまた嗤った。
「じゃまだな、あいつら」中坊が呟いたので、マムシがフロントガラスの向こうを見た。バイクが連なって蛇行運転している。
「あいつら、関東連合だ」マムシが低い声で唸るように言う。
「後から引き殺せ」といって、後ろから運転席を蹴った。中坊がアクセルを踏み込むと、前のバイクにみるみる接近し、遂に一台のバイクに追突した。バイクが転倒し、運転していた少年と後部座席の少年が道路に投げ出される。
 怒声をあげながら、他の仲間のバイクが車を取り囲んだ。全部で五人。マムシは金属バットを握るとドアを開けて外に飛び出した。
「何じゃ、お前は!」
 眼を怒らせ眉を吊り上げて睨みつけてくる少年の頭に、いきなりバットを叩きつけた。少年が悲鳴を上げて地面に倒れた。
「この腐れボケェェがぁぁッ!」
 憤怒に顔面を赤銅色に染めたマムシが、怒鳴りちらしながらバットで少年のドテッ腹を殴りつづけた。他の仲間が飛びかかってきて、マムシの腹部に拳をめり込ませた。逆流する胃液。胃袋がめくれあがる激痛。拳が何度も腹部を打ち抜いた。痛みに脈拍が上昇した。
 しかし、マムシは倒れた少年をバットで執拗に殴り続けた。
「ふざけんじゃねえぞぉぉッッ、俺を誰だが知ってんか! おおおっ!」
 マムシの耳をつんざく怒号が暗闇に響く。
「やめろよ! 死んじまうだろ!」
 仲間が止めに入ったが、マムシは構わずに、倒れている少年の頭を狙って何度もバットを振り下ろした。
 車にいた他の中坊たちも、手にバットやナイフを持って車から飛び出してきた。それを見た関東連合の連中が、慌てて逃げ出した。中坊の一人が、逃げ遅れた関東連合の少年の脚にナイフを突きさした。悲鳴をあげて地面を転げるよう念の上に乗り、何度もナイフを振り下ろす。
「テメエら、何やってんだよぉぉぉッ!」
 戻ってきた関東連合のメンバーが、仲間の少年を助けに入る。
「お前ら、こいつら全員ぶっ殺せ!」マムシが中坊たちに叫んだ。
「ず、ずいばぜん……た、たすけてぇ……」
 バットで殴られている少年が、必死で命乞いをしたが、マムシは容赦なくバットを振り下ろす。やがて、少年は動かなくなった。
「よし、ずらかるぞ」
 マムシの指示で仲間の中坊が車に乗り込んだ。路上には4人の少年が倒れたまま動かないでいた。残った三人の少年が茫然と見ている中、マムシの車は走り去った。

小説とは(4)



小説は事件を描くものではない。
事件を描くというのが小説の目的ではない。

先日も書いた上の言葉ですが、これは渡辺淳一の言葉です。
小説とは、常識を疑い、その裏にあるどろどろした人間の心理を描くものです。

事件はあくまで人間を描くための舞台や小道具に過ぎません。
ストーリーだけを追うのが、小説ではないのです。
小説とは、主人公がある架空の世界で事件に遭遇する話だと先日書きましたが、その根幹を成すものは、そこに描かれる人間の心理なのです。

これはとても大切なことなので、心に刻んでおいてください。
小説を書き始めたときは、やたらストーリーだけをつらつらと書いてしまうものです。
注意しましょう。

キチガイたちの挽歌 23



 シャブの甘ったるい匂いが鼻腔粘膜を撫でた。溶液のこびりついたスプーンを舌先で舐める。スプーンを口から放した。粘つく唾液が糸を引く。貴重なマブネタを無駄には出来ない。
 シャブは最高だ。まさに神からの贈り物だ。これさえあれば残版でもグルメ料理と同じ味が楽しめ、どんな醜悪な存在でも愛しく思えてくる。
 左腕の肘の付け根をゴム管で縛り上げ、親指を握りこんだ。心臓が激しく胸壁を乱打した。脳髄がビブラートする。浮き出た静脈にニードルをぶち込む。ニードルは、スムーズに血管の中を突き進む。
 注射器を引いて血液と溶液を混ぜて遊ぶ。逆流する血が渦を巻きながら注射器内部の溶液と戯れる。首を鳴らしながらたっぷりと血管に流し込んだ。
 細胞が歓喜に叫んだ。ドーパミンが放出され、脳内が一気に冴え渡った。過剰分泌されるドーパミンが体内を駆け巡った。
 混じり気なし。北朝鮮ルートで九州に入ってくる極上のシャブ、雪ネタだ。
 背筋に氷を押し付けられたような冷たい感触が湧き上がる。身体が芯まで冷え切った。股間の血液が凝固して、オマンコにぶちこむ寸前の童貞ペニスのように、破裂しそうになった。
 内臓がリズムよく鼓膜を打った。心臓は十六ビートを刻みつけ、肺がホルンを響かせた。
 薄汚れた壁にもたれかかった。注射器を投げ捨て、床に視線を落とした。散らばった注射器と針がマムシの目に飛び込んできた。
 白い快楽のはきだめだ。不潔な便所にはよく似合う。メタンフェタミンの恍惚。マムシは喘いだ。イク寸前の女の喘ぎ声がドアの向こうから聞こえてくる。
 ジーンズを脱いで、勃起したペニスを強く握りしめた。脈打つ鼓動が伝わった。しごいた。網膜に広がる極彩色に輝く世界。クスリだけが、全ての苦痛を癒す。クスリだけが、灰色の風景を塗り替える。マムシはシャブに耽溺した。
 便器に精液をぶちまけ、トイレから出た。女の喘ぎ声がひときわ大きくなる。
 ここは女の監禁場所。兵隊製造用施設。キメセクにはまる中防たちの歓喜の声が響いている。
「あっ! あっ……はあぁぁ……っ……」
「どうした? またイきそうか?」中坊の下卑た笑い声。
「あううぅうっ……あっ! あぁぁっ!」
 再び昇りつめようとした女の性器から、中坊が「ちゅぽっ」と指を引き抜く。後ろから女を抱いていたガキが、膝の裏を持ち彼女の脚を大きく広げた。
「え……?」
 呆然とする女の前で、中坊が自分のペニスを取り出した。
 とろとろになり、まだひくひくと収縮している女の性器に押し当てる。
 その瞬間、女は自分が何をされるのかに気が付いた。
「入れるぞ」
「あっ……やっ……あっ! んんっ、んっ!」
 一気に挿入されると、大きな絶頂にあっという間に押し上げられ、文字通り女は半狂乱で泣き叫んだ。
「イったか?」
「あっ、あっ、あっ……! 気持ち……いい……! あっ、あぅっ! ああああんっ!」
 女が中坊に突き上げられる。
「ふぅっ! ふいっ! いっ、うんっ! ああっっ! やあっ、ああああっん!」
 そう切なそうに声をあげた女の眉はたわんではいるが、その辛さも次第に快楽の一部となっていく。
「柔らかいな、それに一生懸命締め付けてくる。この女のオマンコはいやらしいな」
「ああんっ……いっ……ああっ……!」
「へへへ」
「んっ……いっ……あうっ……あんっ!」
「早く出して俺と変われよ」横から別の中坊が、ペニスを握りしめながら急かせた。
「あっ、あっ、あっ……! はあんっ!」
「ちょっと待ってろよ」
「ダ……ダメぇっ、あぁん、あ……んんっ!」
 差し挿れられた男性器の先端が膣の中で大きくなるのを感じたのだろう。射精が近い事を察した女は身をよじって逃げようとするが、腰が溶けてしまいそうな甘い快感の前にもう抵抗することができなかった。
「よし、出すぞ。ちゃんと受け止めろ」
「やだ、やだやだぁっ! 中はいやですっ! あっ、あうぅぅっ! んっ、あっ、あっ、あっ」
「おおおおおっ!」
「んっ……いっ……あうっ……あんっ! あぁぁっ!」
 女の膣に大量の精液が射精される。熱いそれを受け止めて女は深い絶頂に幾度も昇り詰めた。
「早く変われよ」
「はあっ……はあっ……は……。ちょっと待てよ」
 荒い息を吐く女の性器から、中坊がゆっくりとペニスを引き抜く。ぱっくり開いた少女の性器から出されたばかりの精液がこぽこぽと溢れ出た。
「どうだ? シャブ決めると気持ちいいだろ?」
「くぅんっ……」
 鼻を鳴らして女が身を捩った。絶頂の余韻が女の華奢な身体をかけめぐる。
「さ、股開け。もう一回だ。今度は俺だよ」
 順番を待っていた中坊が、女の脚の間に腰を割り込ませた。
「はい……」
 女の受難はまだ続く。

小説とは(3)



小説とは、主人公がある架空の世界で事件に遭遇する話です。
作者が創作した人物を、作者が創作した世界のなかで動かし、事件を語るもの。
そのため、文章の基本も、いつ(When)どこで(Where)だれが(Who)何を(What)なぜ(Why)どのようにしたのか(How)の5W1Hです。

「人間を描くこと」
これが小説の目的なのです。
しかし、初心者たちは、おもしろい話を聞いたり見たりしたとき、「これを小説にすれば何か書けるんじゃないか」って考えてしまいます。
でもそうではないのです。
事件などいくら描いても、小説にはなりません。

感動する小説は、読んでいるうちにその主人公に感情移入してしまうものです。
主人公が事件に巻き込まれてしまう。
問題を解決しようとしても、主人公の力を越えていて、解決は困難。
主人公は悩み、悩みぬく。
どこかに進むべき道があるのだと信じ、必死で探す。
味方に誤解され、敵に邪魔され、主人公は傷つき、苦悩し、迷う。
しかし、最後には満身創痍になりながらも、立ち上がり、困難に立ち向かう。

そして、事件が終わった後に、主人公はこの事件に遭遇する前の自分とは変わっていることに気づくのです。

読者が共感して読む小説はだいたいこういう構造になっています。
それは悩み傷ついた主人公が強く立ち上がろうとするところに読者が共感し、感情移入するからです。
小説は、人間の物語であり、人間が成長する物語なのです。
主人公が迷い傷つくことを乗り越えて強くなろうと努力する物語なのです。
小説を書くものは、それを常に頭のど真ん中においておくべきなのです。

キチガイたちの挽歌 22



 自宅マンションの傍のスーパーの前でタクシーを降りる。買い物を終え、すっかり暗くなった道を、陽子はマンションに向かって歩いていた。
 後ろから車が近づいてきたので、陽子は脇に避けてやり過ごそうとした。
 そして、その車が近くまで来た時、車内から二人の男が飛び出してきた。驚いて逃げようとしたが、男たちは陽子の腕をつかんで引っ張り、車内に引きずり込んだ。
「やっ! 何するの!」
 手足をばたつかせて抵抗する陽子の顔に男の平手が飛んだ。
「きゃっ!」
 乾いた音と陽子の悲鳴が車内に響いた。
「よう、陽子。やっと見つけたぜ」
 陽子は、後ろから抱き着いている男を振りほどこうとしながら、顔を上げて自分を叩いた男を見た。
「うへへっ、俺のこと、覚えてるか?」
 見覚えのある顔だった。
 以前勤めていたキャバクラの客の田村だった。どこかの組の男。店に来るたびに陽子を指名して、陽子をしつこく誘っていたその筋の男だ。
「田村さん……」
「思い出したかい? さんざん金巻き上げといて、一発もやらせねえなんて、ふざけた真似しやがって……。俺をコケにすればどうなるか、きっちり教えてやるって言っただろ?」
「な、何よ! 降ろしてよ!」
 走る車の中で陽子は気丈にも田村につかみかかろうとしたが、傍に居た男たちに抑えられ、両手両足の自由を奪われると服を脱がされていった。
「いや! いやああああ!!」
「へっ、これまでたっぷり金をつぎ込んだんだ。元取らせてもらわねえとな」
 腕を押さえていた右の男はバタフライを陽子に突きつけた。
「わめくと、切り刻むぜ」
「ああ……」
 ナイフを握る男に凄まれ、一層陽子の恐怖感が高まった。
 車内の四人の男たちは、見るからに組関係のチンピラだった。後部座席に陽子を抑える男が二人、運転席に一人。そして、助手席には田村がいた。
「ユウタ! こいつの服脱がせろや」
 ナイフを持った男が左で陽子の脚を抑えていた男に言った。
 ユウタは臭い息を吐きかけながら陽子の服を剥いでいった。
「いやああああ!」
 陽子はただ大声で叫び、力ずくで服を引き裂かれていくしかなかった。
 ユウタは、陽子の服を剥ぎ取り、ブラジャーをはずした。
「ひゅう! 陽子ちゃん、胸あるね~!」
 最後の下着も剥ぎ取られた陽子のむき出しになった胸を見て、田村は口笛を吹いてはやし立てた。
「田村、山に着くまで先に味見してもいいか?」
「おう、でも、オマンコの中は汚すなよ」
 更に、左にいた男が陽子のパンティごと、陰部を激しく揉み始めた。
「くっ! い、いやあ! なにするの! や……やめてぇ……いやあ」
 陽子は必死で抵抗したが、男がナイフを陽子の目の前につき出した。恐怖の余り、陽子は体を震わせた。
「おとなしくしろや、へへっ」
「いやああ! だ、誰か~、助けてぇ」
「いくら、叫んでも無駄だぜ」
 そう言って、ユウタは陽子の豊満な胸を鷲掴みにした。
「いやぁ! 離して!」
「うひひっ、さすが人気キャバクラ嬢だけあって、いいオッパイしてるじゃねえか」
「いや、もう……やめてぇ……あああん」
 服は完全に引き剥がされ、大きな胸のふくらみが露わにされた。
「いやあ!」
 腕で胸を隠し身をかがめようとすると、ユウタは陽子に抱きついて身を起こさせた。
「な、なにするのよ! きゃあ!」
「抵抗するんじゃねって言ってるだろうが! ぶっ殺すぞ!」
 鋭い張り手が、陽子の頬を捉えた。
「あああ……」
「バカな女だ……最初から素直にやらせてくれていればこんな荒っぽい事しなかったのに……」
 助手席の田村は不敵に笑いながら、陽子を見た。
「タカシ、こいつのパンツ剥ぎ取れや」
 田村がナイフを持っている男に声をかけた。
「へへへ……」
 ユウタが陽子の胸を弄んでいると、ナイフを持っていた男が、いきなり陽子のパンティの中に、指を入れ、アソコを激しく愛撫し始めた。
「きゃあ! やああ、やめてぇ、あっ……いやあ」
 陽子が叫んだ。タカシが陽子の陰穴から指を抜き取ると、ネットリとした愛液が、ゆびに間取り付いていた。
「なんだこれは? 嫌がってる割りに、感じてるじゃねえか?」
 そう言い、タカシは無理やり陽子のパンティを剥ぎ取った。
 その後、タカシはジャージのズボンとパンツを脱ぎ、陽子の顔のまえに、欲望と化した勃起したぺニスを陽子の顔に当てた。
「ほ~ら、口を開けろよ」
「い……いやぁ……」
 涙を流す陽子の口をこじ開け、容赦なく陽子の口にペニスを突っ込んだ。
「てめえ、歯立てやがると、鼻削ぎ落とすぜ……」
 タカシに凄まれ、陽子は仕方なくタカシのペニスをしゃぶった。
「こいつ……フェラ、むっちゃうまいぜ……」
 タカシが腰を痙攣させた。やがて、陽子の喉の奥深くでペニスが爆発した。
 濃い精液が陽子の喉の粘膜を叩く。
 大量の精液を喉の奥に注がれ、陽子は嘔吐しそうになった。
「吐き出すんじゃねえぞ、全部飲むんだ。ちょとでも零すと刺すからな」
 タカシにナイフを突きつけられ、脅された陽子は、仕方なくこのケダモノの精液を飲み込んだ。
 陽子たちを乗せた車は街を離れ、薄暗い山道にはいっていった。
 しばらく走ると、周りには民家の明かりも届かず、行きかう車ももなくなった。
「ここらでいいか」
 運転していた男は車を停めた。
 すると、後部座席のタカシが陽子の上半身を押さえ、ユウタが陽子の足を押さえ、下半身の自由を奪った。
「嫌ぁ! やめて!」
 陽子は車の中で暴れたが、男ふたりに強く抑えられ身動きできなかった。
 助手席に座っていた田村が車を降り、後部座席に回ってきた。
「俺からぶち込むぞ」
「いやぁ! 来ないで」
 にやつきながらにじり寄ってくる田村を見て、陽子は恐怖のあまり身体をくねらせて抵抗した。
 田村はズボンのファスナーを下ろすと、勃起したペニスを取り出した。
「代われ。しっかり抑えてろよ」
 田村の指示で、陽子の足を押さえていたユウタと田村が入れ替わった。そして、陽子の足を広げた。
「あっい……いやあ、やだあ……」
 陽子は必死で抵抗したが、田村が腰を押し出すと太いペニスがずるっと陽子の中に入っていった。
「嫌ぁ~!」
「くう、さすがナンバーワンのキャバクラ嬢だぜ」
 田村の腰使いが、さらに、激しくなった。

 その後一時間あまりの間、陽子はケダモノたちに輪姦され続けた。
 ぐるぐると男たちが陽子の体を通り過ぎていった。陵辱は陽子を監禁場所に連れて行く車内でも続いた。
「三発目犯ってもいいか?」
 最後に陽子を犯したのはユウタだった。
 陽子は走る車の後部座席ユウタのペニスに貫かれた。
 そして、到着した倉庫で降ろされる寸前に、ようやく男たちの凌辱が終わった。陽子は、自分の指先でそっと割れ目をなぞった。指の表面にぬめりを感じた。
 陽子は何度も何度も指を膣内深く挿入して、精液を掻き出した。陽子の瞳に熱いものがこみ上げ、それは次々と溢れて、陽子の頬を伝ってあごの先から落ちた。

小説とは(2)




映画と違って、視覚に訴えられない小説では、登場人物がなにを考えているのか、すべて文章で表現しなくてはなりません。
それだけ、小説はよりいっそう、読者を捉える力が強いのかもしれません。

反対に、どうしてものれない小説を読んだときは、むなしく、時には貴重な時間を返せと腹立たしくなります。
どれだけたくさんの言葉を費やしても、小説作法がなっていなければ。何を伝えたいのか、読者が理解してくれないのです。

小説を読むと、架空の物語のなかで主人公といっしょになって怒ったり、喜んだり、悲しんだり、実生活では体験できないさまざまなことが体験できます。
作者が読者にいかにしかけるか。
どれだけ読者を物語世界に参加させることができるか。
読者の共感の気持ちをいかに引き出せるか。
それが言葉をつづる人の目論みなのです。

本を読むことはわくわくすることです。
「この本を開けばどんな世界が広がるのか」
読者はいつも楽しみにしているということを、小説を書くものは常に心に留めておくべきですね。

キチガイたちの挽歌 21




「ああ……ん、よかった……」
 飼い主になつく猫のように、陽菜が腹ばいになってハヤトに擦り寄ってくる。
「ねえ……。今度のイベント、センターで歌いたいよぉ……」陽菜が甘ったるい声をあげて抱きついてきた。一七歳にしては大きく膨らんだ乳房を、ハヤトの腕に擦り付けてくる。
「俺に言っても仕方ねえだろ」
「タクヤさんからプロデューサーに口きいてもらってよぉ」
「お前は、一番後輩だろ」
 百瀬陽菜は、ハヤトが先月スカウトしてタクヤに渡したばかりのアイドル候補生だ。
ハヤトがタバコを銜えると、陽菜がベッドサイドに置いていたライターを手にとって火をつけた。
「だってぇ、端っこで踊っててもぜんぜん目立たないんだもん」
「お前は可愛いからすぐに人気が出るよ。とにかく名前が売れるまではしばらく今の位置で頑張るんだ。タクヤさんだってそう言っていたはずだ」
「だってぇ……」
 少女好きのオタク男たちのために、週に三回、ライブをやっている。名前が売れるまではメディアにはほとんど露出せず、ライブやイベントなど中心に活動する、いわゆる地下アイドルやライブアイドルの類だ。地元での知名度を上げてから、芸能記者を呼んで雑誌やネットで取り上げてもらい、アイドルとしてデビューさせる。
「このまま続けていて、ほんとにデビューさせてくれるの?」
「当然だ。俺もタクヤさんも、今のメンバーの中でお前が一番売れると思ってるんだぜ」
「嬉しい」
 そういって、ぽてっとした可愛い唇を重ねてくる。
 タクヤが芸能事務所を開いて、半年がたつ。タクヤの頼みで街で少女たちをスカウトしてきた。メジャーデビューした少女はまだいないが、どのグループもライブやイベントを頻繁に行っているので、インディーズアイドルとして知名度は上がってきた。入場料やグッズでの稼ぎも上々だ。抱えている少女タレントの誰かひとりでも売れれば、大金を手にすることができる。まさに一獲千金の世界である。
それに、いい女は大きな武器になる。各界の大物に女を貢ぎコネクションを強める。人脈が広がれば、面白いほど大きな仕事が舞い込んでくる。族の先輩たちが甘い汁を吸うのを見るたびに、ハヤトはいつか自分も大きな魚を釣ってみせると奮い立った。
「あのユイって女、なんとかなんないかなぁ……。ギャルぶってるし、自分のこと可愛いと思ってるし。そのくせモデルもアイドルも全部中途半端。はっきりいっていらないよ。邪魔なだけ」
 畑中ユイはタクヤの事務所でも一番メジャーデビューに近いタレントだった。「放課後プリンセス」のセンターで、ファンも多い。歳は陽菜と同じだが、歳不相応なセクシーさが彼女の売りだった。一方、新顔の陽菜は愛くるしく清楚な幼顔で、舌足らずな話し方も加わって、ロリ系のファンの人気を集めている。加入したばかりなのに人気のある陽菜に、ユイが何かと意見することも多く、このままいけば、ふたりはいつか衝突してしまうだろう。
「あんな奴、いない方がいいよ。努力努力ってうっせぇくせに、自分が一番努力してないし。音痴だし」
 畑中ユイのほうがタレントとしての華がある。しかし、この世界でやっていけるのは陽菜のほうかもしれない。先日、タクヤがユイにある業界人に枕営業を持ちかけるよう仄めかしたが、はっきりと断られたらしい。
 アイドルの世界に枕営業は必要不可欠だ。むしろ、各地のイベントを回る地道な営業活動より、効果的な営業手法である。アイドルなんてものは無数にいる。そこから一歩抜け出して有名になるためには、彼女たちはなんでもやる。実力のある業界人やスタッフにチャンスを見つけてはすり寄り、裸になって股を開く。雑草魂が強いのだ。中年オヤジとセックスすることを嫌がっていては、たとえメジャーデビューを果たして一時期人気を博したとしても、その先アイドルとしての成功はない。その点で、百瀬陽菜は畑中ユイを越えていると、ハヤトは思っている。
「頼みがある。酒井法子の件なんだ」
 夜にかかってきたタクヤからの電話を思い出した。
 酒井法子。一年ほど前、夫と覚せい剤を吸引してセックスしたことが暴露されたタレントだ。恋人が捕まって酒井法子の覚せい剤使用が疑われた。彼女はすぐに行方を消したが、後日警察に出頭し、逮捕された。薬が抜けるまで日本中を逃げ回った挙句、体調不良とかで入院して点滴を打ちまくり、薬を体外に追いだそうとしたが、毛髪中に覚せい剤が検出されアウト。判決は懲役一年六月、執行猶予三年。その後、恋人に無理やり覚せい剤を打たれてしまった、いわば被害者だという記事を子飼いの記者に書かせて汚名回復キャンペーンを図った。元恋人にも多額の口止め料を渡したうえに大物ヤクザが脅しをかけたので、真実を闇に葬りさることはできたが、いまだに大きな仕事はこないらしい。
「キメセクが晒されて以来、ぱっとした仕事がないんだ。薬がらみなだけに、スポンサーがつかない。法ピーは中国で人気があるんで中国進出を目論んだんだが、間が悪いことに中国で薬物撲滅キャンペーンが始まっちまった。そこで、法ピーを政府の危険ドラッグ撲滅キャンペーンのイメージガールとして適用してもらおうと考えている」
「ギャグですか?」
 電話の向こうでタクヤが大声で笑った。
「まあ、冗談みたいな真面目な話さ。芸能界の時間の流れは速い。このままじゃ、法ピーは過去の人物になって忘れ去られてしまう。だから、ショック療法をやるのさ」
「俺はどうすればいいんです?」
「厚労省の薬物対策室長の沖永っておっさんが、実は法ピーの大ファンらしい。ただ頼むだけじゃだめだろうが、法ピーと一発やらせればなんとかしてくれるだろ。笹川さんの名前を出してもいい。沖永に会って法ピーと会ってもらえるよう交渉してくれ」
 笹川宏。各界に顔の広い右翼の大ボスだ。
「俺みたいな若造が行っても大丈夫ですか?」
「一席設けて法ピーを沖永に渡せば、あとは法ピーがうまくやる。オマンコ使った交渉には慣れているからな。せっかく金かけて恋人に泥をかぶってもらったのに、このままじゃ芸能界引退だ」
 ハヤトは大きくため息をついた。この手の仕事にはいつもうんざりする。
「なによぉ、ため息なんかついて」
「なんでもないさ」
「一発終わったあとのそういう態度が、女の子を傷つけるんだぞぉ」
「明日からはじまる仕事のことを考えていたんだよ」
 枕元で携帯が鳴った。タクヤからだった。
「ハヤトです」
「どうだい? 自分がスカウトしてきた将来のアイドルの味は」
「上々です」
「そうか。なあ、ハヤト。落ち着いて聞けよ」
「なんすか?」
「金村が殺された」
「え……?」
 いきなりベッドの上で上半身を起こしたため、陽菜が小さな悲鳴を上げた。
「日本刀で刺された上、バットで頭を叩き割られちまった。さっき中坊が自首したらしいんだが、ヤク中だ」
「金村さんが、中防にやられるはず、ないじゃないですか」
「ああ。やったのは道仁会。たぶんメデューサのメンバを使った。あそこのOBが幹部をやっている。激怒した石本総長が、道仁会幹部を殺すようにいってきた」
マムシ。あのキチガイがやったんだ。
「やったのはメデューサのマムシです。俺にやらせてください」
「まあ、落ち着け。慎重に作戦を練る必要がある。失敗しましたじゃあ、すまねえんだ。今、石本さんが道仁会幹部全員の愛人の名前とマンション、勤めている店を聞き出しているところだ。情報が集まるのは来週あたりだな」
 石本はヤクザにも情報網が広い。
「決行は集めた情報を吟味してからだ。お前には仕事を頼んでいたはずだ。作戦が決まるまで、そっちに集中してくれ」
 タクヤとの電話を終えても、ハヤトは携帯電話を持ったまま、拳を握り締めていた。体がブルブルと震えていた。
 横から陽菜が、怯えた目でこちらを見ていた。

サイ密猟者、ゾウに踏みつぶされ死体はライオンの餌に




南アフリカのクルーガー国立公園で、サイの密猟者がゾウに踏みつぶされて死亡し、その死体をライオンに食べられるという出来事があった。

共犯者とみられる人物が、死亡した男の家族に対して男がゾウに踏みつぶされたと伝え、その後レンジャーらが通報を受けた。

男の共犯者たちも加わり、2日間にわたり空と陸の両面から捜索活動が行われた結果、男の死体が発見されたとのこと。
但し、見つかったのは密猟者の頭蓋骨だけ。
周辺にはライオンの群れがいたことから、ライオンが男の死体を食べたと判断された。

なお、共犯者のうち、これまでに4人が逮捕されたとのことだ。

密猟者が返り討ちに遭ったという痛快な話。
サイにもゾウにもライオンにも罪はない。
動物達はただ日常を生きているだけだ。
でもこれはひと握りにもならないくらい、アフリカには密猟者は多い。

忘れてはいけないのが、動物の体の一部を娯楽品贅沢品に使うと言う需要があることだ。
これがもっとも悪い!
一部の富裕層だけの為に、サイだけでなく年間数多くの野生動物が殺されている。
こちらをもっと何とかしないと密漁は無くならない。

イルカとクジラを守れと叫んで犯罪者でもない相手にギャアギャアいっている動物愛護活動家グループは、こちらのれっきとした犯罪者である密猟者や富裕層にそのエネルギーを向けるべきだろう。
動物愛護団体が本来の活動を行っていれば、もっと密猟は少なく出来るはず。
密漁には犯罪組織が絡んでいる。富裕層のバックにもいろいろ怖い人が……。
怖い相手には何もしない動物愛護活動家グループの目先だけの運動には呆れるばかりだ。

プロフィール

アーケロン

Author:アーケロン
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