魔女の棲む街 3
ホテルからカップルが出てきた。中年男と若い女。見たところ、不倫のようだ。やりたてのほやほやかよ。股間から湯気があがっているぜ。
にやつく安尾をみて、カップルが足を速めた。
安尾は視線をホテルに戻した。ちょうど制服を着た女子高生が出てきた。中年男と手をつないでいる。にこやかに手を振って、ホテルの前で男と別れた。タバコを道路に捨て、女子高生に近寄っていく。
安尾に気づいた女子高生が、微笑んでカバンを開けた。財布を取り出すと中から一万円を取り出して安尾に手渡した。
「今日は稼げたな。明日も街に出てこれるか?」
「学校が終わったらすぐ」
「じゃあ、四、五人はいけるな」
「そんなにしたら、あそこが擦り切れちゃうよ」
女子高生がけらけら笑っている。
「稼げるときに稼いでおけよ。客はジャンジャンまわしてやるから」
「やった!」
客の紹介とケツ持ち。それが安尾の仕事だった。安尾が中年親父を女子高生たちに紹介し、事が終わった後、一万円を受け取る。これが面白いように儲かる。いつの時代も、中年親父たちは幻想を追い求め、女子高生の身体を金で買う。これからもじゃんじゃん儲けてやる。
弟分の慶太や義雄にも、もっと金づるを連れて来いと、発破をかけたばかりだ。それも、可愛い女子高生を連れて来いと。女子高生というだけで客をとれる時代はとっくに終わっている。上玉の女を引きこむことができれば、面白いように稼げるはずだ。
最近は、ちょっと甘い顔をすればつけあがる女子高生も多い。生意気な奴がいれば、いくらでも俺がシメテやる。
本間真紀子も稼いでくれるようになってきた。あれもいい身体をしている。それに、金を欲しがっている友人もいるらしい。援交をやりたがる友達をどんどん紹介しろよといってある。
そういえば、あいつも本間真紀子の友達だったな。
榎本春姫。
メロンのような胸にプリッと張り出した尻。女子高生離れした、いい身体をしていやがる。あれは稼げる女だ。しかし、ビッチのくせに大物ぶっているのが気に入らない。
先日、ケツ持ちを持ちかけたが、乗ってこなかった。高価なブランドのバッグとアクセサリーを持っているので身体を売っているのは間違いないのだが、どこで客を取っているのかがわからない。真紀子の話だと、金持ち親父の愛人をやっていたらしいが、最近別れたらしい。
あいつだけは、一度痛い目に合わせないといけない。いつかあの生意気な女をひいひい言わせてやる。俺もやくざなのだ。いつまでも下っ端ではいない。あんな女に舐められてたまるか。
それに、兄貴も俺を頼ってきている。最近は上納金もきっちり納めている。上納を納められるようになれば、ヤクザは一人前なのだ。
胸ポケットに入れた携帯電話が鳴った。弟分の慶太からだ。
「あ、兄貴。準備できました」
「サカキバラは?」
「もうこっちに来て、カメラのセッティングをやってます」
「よし、十分でそっちにいく」
表通りに出てタクシーを捕まえ、ホテル街を出る。駅前を通るにぎやかな大通りだが、五分も直進すると、行きかう車の数が急に減る。
町はずれの住宅街を抜けると、倉庫や町工場の集まった地域に出た。タクシーを降り、街灯もない道を歩いていくと、ポツンと建つプレハブ倉庫が見えた。倉庫の扉を開けて中に入ると、慶太と義雄が待っていた。
撮影準備はもうできていた。いつものように、サカキバラが部屋の隅で死人のような顔で立っていた。本当に気味の悪い男だ。
倉庫の打ちっぱなしのコンクリート床に、両手を後ろ手に縛られた若い女が転がされている。
「これ、この前の突っ込みを編集したやつです」
慶太がマスターDVDを安尾に渡した。
「さっき、サカキバラに中身を見せてもらったんですが、うまく編集できていました」
「すぐにダビングに回せ」
安尾が床に転がっている女を見た。女子高生だと聞いている。髪を金色に染めた不良娘だ。この女を攫うように、サカキバラがリクエストしてきたのだ。
数日前、街でサカキバラが出会いがしらでこの女にぶつかった。女に文句を言われて唾を吐きかけられ、連れの男に顔を張り倒されたらしい。
その連れの男が、先日殺されて心臓をえぐり出された。
まさか、サカキバラがやったのか? しかし、あのひ弱そうな男に人殺しなどできるはずがない。
「いい身体をしてますよね」
義雄が色欲に満ちた目で女の身体を舐めるように見ている。身体を縛られ猿轡を噛まされて、女が涙を流して震えている。
サカキバラが壁から離れて傍に寄ってきた。カメラを女に向けてスイッチを入れた。
「じゃあ、やるか」
安尾の合図で、慶太が頭から目だし帽をかぶり、ポケットから覚せい剤のパケを取り出した。サカキバラがカメラを慶太に向けている。慶太は注射筒でペットボトルから水を吸い上げると、スプーンの上に取り出した覚せい剤の結晶に水を注いで溶かし、再び吸い上げた。
「天国に連れていってやるぜ」
怯えた目で男たちを見ていた女子高生の腕を取り、慶太がニードルを血管に突き刺した。シリンジが押し込まれ、覚せい剤の水溶液が女の身体の中に消える。
義雄が女の口から猿轡をはずした。
「お願い、助けて……。家に帰して」女が泣きながら懇願している。
「そう邪険にすんなよ。今から気持ちのいいことしてやるぜ」慶太が女の腕をすっと撫でると、女が悲鳴をあげて身体を捩らせた。
「へへ、効いてやがる」
安尾のその言葉を合図に、目ざし帽をかぶったふたりの男が、少女に襲いかかった。少女の悲鳴が倉庫に響く。しかし、ここには誰も助けに来ない。
サカキバラがカメラのファインダーを覗き、衣服をはぎ取られている少女を撮影している。全裸にした少女の腕を義雄が押さえつけた。慶太がズボンを脱いだ。ペニスが勃起している。慶太が少女の脚を開き、少女の股間に腰を割り込ませると、ペニスをねじ込んだ。
少女の悲鳴が上がる。しかし、それは苦痛からくる悲鳴ではない。シャブを決めた女たちは、みな同じ声をあげる。
「たまらねえ! もっと顔をこっちに向けろ! そうだっ! なんだ、感じてる顔じゃないか!このスケベ女め!」
わめきながら義雄も勃起していた。サカキバラは一人、黙ってビデオカメラのファインダーを覗いている。この男の撮るアングルは病的に執着していた。これでもか、これでもかという変態じみたカメラアングルだった。結合され、軋まんばかりの局部、耐えきれず流れ出す少女の体液の一筋さえ、撮り逃がさないとするようだった。
激しく出し入れする度、ヒクヒクと痙攣する局部と激しく喘ぐ少女の顔を、サカキバラが舐めるように撮影する。
少女が大声をあげて達した。シャブセックスのいいところはこれからだ。最高の絶頂感が治まることなく持続する。
湿った音とともに、怪異な塊を、少女の膣は飲み込んでいった。その様をサカキバラのビデオカメラが静かに収めている。
少女は叫んで、のけぞった。シャブセックスの快感に抗える女はいない。 むちっとした健康的な脚が、大きくMを描いていた。 巨漢の義雄に抱えられ、剥き出しの性器に勃起した巨大なペニスが出し入れされる。
少女は汗だくになり、涙を浮かべて首を激しく立てに振った。
カキバラのカメラアングルは相変わらず執拗だった。 喘ぐ少女の顔をアップで撮り、そのままカメラを舐め上げられる乳首におろす。義雄の舌で濡れ、ピンクの可憐な狂おしいまでに上をむいて勃起している。そして、激しく出し入れされ、激しく収縮する少女の性器に接近する。
少女が立て続けに絶頂に達する。それでも、慶太はやめない。
少女の身体の中に、慶太の熱い液が注がれた。
女がうわごとのように呟くのが聞こえてきた。
慶太は全てを少女の奥に注ぎ終わると、ペニスを抜いた。少女の腟口から精液が太股に流れ出した。
入れ替わるように義雄が少女に覆いかぶさった。少女が犯されシャブ中にされて堕ちていくのを撮影する。サカキバラのアイデアだ。その過程を編集してDVDに焼いて裏DVDとして売る。
がちレイプの裏DVDは高値で売れる。
高価な編集機械はこの少年が持っている。あとはマスターを受け取ってダビングするだけ。シャブ中になった少女は闇風俗に売り飛ばす。まだ高校生だ。買い手はいくらでもいる。
まったく、笑いが止まらない。
義雄が腰を振るわせながら、少女の奥深くに注ぎ込んだ。少女は息も絶え絶えにぐったりとしている。
仕事を終えた男たちが、だらしなく弛緩したペニスを露出したまま、タバコを吸っている。全裸のまま床に横たわっている少女が放心状態のまま身体を痙攣させていた。
サカキバラが撮影機材の片づけをはじめた。
「マスターができたら連絡してくれ」
「僕、もっと自分で納得いく映像を取りたいんだな」サカキバラが振り向いて微笑した。その不気味な表情に、安尾の背筋がぞっとした。
「映像? どんな」
「綺麗で悪い女を見つけてきてほしい。魔女のような女。街を探してもいないんだ」
「そうかい」ふと、春姫の顔が思い浮かんだ。この男のカメラの前で屈辱に歪む春姫の顔は、きっと美しいはずだ。
「わかった。いいのを探しておいてやるよ」
サカキバラは不気味に微笑むと、撮影機材の入ったバッグを背中に背負い、倉庫から出ていった。ミニバイクのエンジン音が遠ざかっていく。
「気味の悪い奴だな」安尾が床に唾を吐いた。
「でも、あいつといると金になりますよ」
儲け話があるといって、向こうから近づいてきた。DVD自主制作仲間が喜ばそうと思ってやっているんだけど、闇で捌くと結構儲かる、手を組もうと言ってきた。
サカキバラは安尾たちが、女子高生を風俗に紹介しているということを知っていた。安尾はサカキバラのことを怪しんだが、ひ弱な奴だったので、一度言うとおりにしてやったが、この男が編集したDVDのマスターが百万で売れた。それ以来の付き合いだ。
まあ、今のところは問題ない。あのガキをさんざん利用して、儲けるだけ儲けてやる。