鮮血のエクスタシー 15
思わずスキップしてしまいそうになった。足が弾んで仕方ない。少し歩いては通帳を覗きこむ。最高に幸せな気分だった。
吉井勝を葬った報酬、三千万が振り込まれた。通帳には五千万の預金。一生働かないで生活できるとまではいかないが、この調子で続ければすぐに億に手が届く。
殺しているのは悪い奴ら。殺されて当然の男たちばかり。きっと世のためになっているはずだ。
途中でタクシーを捕まえ、久しぶりに自宅マンションに戻った。
マンションの前に、ピンクのスカートに白いブラウスの若い女が立っている。
「梨香!」
梨香が顔をあげ満面の笑みを浮かべた。
「どうしたのよ。電話しても出なかったじゃない」
アンナが梨香の華奢な身体を抱きしめると、彼女の顔が急に曇りだした。
「実は……携帯電話を盗まれちゃって……」
「ちゃんと止めたの?」
「それはもう手続きしたんだけど、実は、怪しい男につけられているの。ストーカーかもしれない」
「ストーカーって?」
「あたし……ずっと誰かに付けられているみたいなの」
「えっ」アンナが絶句する。「付けられているって誰に?」
「わからないんだけど、目つきの鋭い人なの。男の人。私、怖いわ……」
彼女は深刻そうな表情で言った。冗談で言っている訳ではなさそうだ。
「ネットカフェにもついてきているみたいなの。個室に入っても、隣で聞き耳を立てられてる感じで……」
アンナはマンションの周囲に視線を走らせた。人気はない。
「顔は見たことあるの?」
梨香が頭を振る。
「マンションの場所も知られちゃってるみたい。今日も走ったりして撒いたつもりなんだけど……。さっき振り向いたら、遠くから睨みつけてくる人がいて……」
もう一度周囲を探ったが、怪しい奴はいない。
「私が振り向いたときに隠れちゃうから、顔ははっきりと分からないの……」
「警察には相談したの?」
「うん。でもね、実害がないならこちらは動けないって言うの。マンションはオートロックだし部屋のドアの前には来ていないし。ただ後を付けられているだけ。それでも気味が悪くて……」
「そいつ、とっ捕まえよう」
「やめて、何か刃物でも持っていて刺されたら大変だから」
「とにかく、中に入って」
アンナは梨香を自分の部屋に連れ込んだ。閉め切っていた部屋の空気を入れ替えたかったが、エアコンを入れただけで窓は開けなかった。
「他に何かされていないの?」
「はっきりしているわけじゃないんだけど……。ゴミ袋なんだけど…いつも私のだけ盗まれているみたい……」
彼女は口を少し尖らせながら困った表情で言った。
「アンナさんに迷惑かけちゃうとって思ったんだけど、ここに来るしかなくて……」
「いいのよ、そんなの。梨香は可愛いから変な男に狙われるの。気をつけなくっちゃ……」
そっと彼女を抱き寄せる。柑橘系のコロンの匂いが鼻をくすぐる。久しぶりに嗅ぐ梨香の匂いに、身体の奥が疼きはじめた。
アンナは優しく微笑むと、梨香にキスをした。キスをしながらアンナが上になり、二人でベッドに横たわった。
「ちょっと休ませてください」
立て続けにアンナに指で何度もいかされ、梨香はまだ息が荒かった。
「だぁめぇ……」
アンナが硬くシコり起った梨香の乳首を舌で擽り、転がし、乳輪を舐め回しては吸った。梨香が可愛いい声で鳴く。アンナは体をズリ下げながら梨香の両脚の間に体を入れ、両膝の裏に両手を入れて持ち上げた。その膝を梨香に持たせると、自由になった両手で大きく拡げ、梨香の恥ずかしいところを間近で覗き込んだ。
紅い粘膜が丸見えになるまで指先で拡げ、舌を伸ばすと粘膜をじっくりと舐め回した。
強い刺激に、梨香が声をあげて果てた。
「もう……駄目です」
梨香が背中を向けた。アンナが梨香を仰向けにし、冷えたシャンパンを梨香の腹に垂らした。梨香が小さな悲鳴を上げた。
「冷たい……」
アンナが梨香の腹に溜まったシャンパンを舐めている。
「私、いつから失神してたの?」
「意識がなかったのは五分ほどよ」
「全然覚えていないわ」
アンナがシャンパングラスをテーブルに置いて、梨香に抱きついた。彼女の身体が熱く火照っていた。彼女の身体が性的に満たされている証拠だった。
「何かあったの? アンナさん、今夜は一段と激しかった……」
「まあね、ひと仕事終えたの。最高の出来だった。だから、今夜は最高の夜にしたかったの」
「最高の夜になった?」
「あら、夜はまだ終わりじゃないわ」
アンナが梨香に唇を重ねた。
鮮血のエクスタシー 14
バイクのエンジンを止める。そばを通る自動車のエンジン音だけが響いている。信号で停車している車の中で、男が火のついたタバコをくわえたまま、ハンドルを握っている。
後部座席に括り付けていたバッグを持ち、サングラス越しに二十七階建ての白亜のホテルを見上げる。大島からの情報では、あと一時間以内に、ここに奴らが現れるはずだ。ホテルの周囲の道路はどこも渋滞していて、夕方までは解消されないことは調査済みだ。
頭にかぶったウィッグの先が首筋に触れて痒い。足が震えている。大仕事の前の武者震いか、それとも恐怖しているのか。地面を強く足で踏みつけ、アンナはホテルに向かった。
ホテルの入口。目の前に、車が急停車した。不意をつかれて身構えたが、車はそのまま走り去っていった。
ホテルのロビーに入り、右手のラウンジを覗く。午後一時。客はまばらで、人の出入りはまだない。
ラウンジに入り、入り口付近の席に着く。すぐにウェイターが寄ってくる。昼食はまだだが、食欲などない。コーヒーを注文し、気持ちを落ち着けるためにセーラムライトに火をつけた。
周囲の地理は頭に入っている。バイクも、決めた場所に置いてある。あとは待つだけだ。
横の椅子に置いたバッグにそっと触れる。フルフェイスヘルメットと防弾チョッキ。二丁のベレッタが入っている。カバンを開ければいつでも抜ける。
三日前に、丸一日下見をした。周辺の道路、人の動き、路地という路地、派出所や警察署の位置、襲撃現場となるホテルのラウンジ。ラウンジを出てエントランスと逆の方向に走れば、従業員専用通路があり、外に出られる。外に出て左に曲がれば、バイクを置いてある駐車場に出ることができる。
バイクを走らせ山に入り、山上公園まで突っ走る。ヘルメットと防弾チョッキを外してライダースーツに着替え、バイクのプレートを取り換え、すぐにその場を離れる。ヘルメットと防弾チョッキはバッグに入れて池に沈めることを忘れてはいけない。
頭の中でシュミレーションを繰り返していると、一時半になった。
一目でその筋とわかる、黒ずくめの男たちが入ってきた。三十代が十五、六人。若い男は二人しかいなかった。吉井の姿が見えない。まだ時間前だ。それにこれほど子分たちが集まってきているのだ、まさか、ここにこないということはないだろう。
十分後、ずんぐりした身体つきの男が、四人の男を従えてラウンジに姿を現した。吉井だ。集まっているのは、全部で二十人。
一度、深く息を吸った。席を立って伝票を手につかむ。
「申し訳ございません」
レジでさっきのウェイターが申し訳なさそうに頭を下げた。風体の怪しい団体がきたので店を出ていくのだと思われたようだ。
「いいの、気にしないで」
支払いを済ませてラウンジを出る。入り口の脇に見張りの男が一人立っている。まずはあれを始末しないと、後ろから反撃されることになる。
すぐ横の女子トイレの個室に入ると、バッグを開けた。ジーンズの上からつなぎの作業服を着て防弾チョッキをつける。弾倉を抜いて二丁のベレッタに弾が込められていることを確認した後、一丁と予備弾倉四本を腰に差し込み、もう一丁を脇にぶら下げる。最後にフルフェイスマスクをかぶって個室を出た。
鏡に映ったその姿を見て、笑いそうになる。トイレの翳からそっとエントランスを覗きこむ。見張るの男が暇そうに視線を辺りに泳がせていた。腰のベレッタを抜き、胸の前に構える。
呼吸を、二つ数えた。ふっと、頭の中が白くなった。アンナはトイレから飛び出した。
見張りの男が背中を向けている。心の中は空っぽだった。本能に従い身体を動かす。そう決めていた。気が付けば、気配に気づいて振り向いた男の眉間を打ち抜いていた。
ラウンジに飛び込む。銃声を聞いて、数人の男たちが席を立っていた。タバコを口にくわえたままこちらを見ていた吉井と目があった。ひときわ大きな体をしているので、吉井はラウンジの中でも目立っていた。大きな標的に、外す気がしなかった。
吉井が立ち上がった。そばにいた男が慌てて吉井の前に立ちふさがった。ベレッタを構え、二連射する。男が吹っ飛ぶ。吉井は恐怖に満ちた眼をむき出しにしている。
女性の悲鳴や叫び声が聞こえてきた。まだラウンジの席にいた堅気の客のようだ。組員たちが一斉にテーブルを倒して盾にした。
ひとりの男が立ちあがって怒りをあらわに向かってくる。肝の据わった男だということを見せつけたいのか。男の頭に狙いをつけて引き金を引く。男の頭が吹っ飛んだ。血と肉片の飛沫が周囲に降り注ぐ。その様子を見ていた男たちがテーブルの後ろにしゃがみ込んで身を隠した。脅しではなく本気なのだということが分かったのだろう。
吉井が隠れているテーブルに狙いを定める。顔を出してこちらを確認した吉井が、すぐに頭を引っ込めた。
「どこのもんじゃ、こらぁ!」
吉井の怒声が響いた。テーブルに向けて発砲する。破片が飛び散り、吉井が悲鳴を上げた。また一人立ちあがった。走り去ろうとする男に向けて発砲する。後ろに吹っ飛ぶ。男の胸元に開いた穴から血が吹き上げている。
「狙ってんのか? 俺を」
再び吉井の声。返事の代わりに彼のひそんでいるテーブルに向かってまた発砲する。そばの男がテーブルを持ち上げて立ちあがった。テーブルを盾にしてこちらに向かってきた。脚を狙う。脚を撃ち抜かれた組員が床に倒れた。のた打ち回る男に向け、ベレッタを連射すると、男は血を噴いてすぐに沈黙した。
アンナは両手でベレッタを構え、テーブルを挟んだ位置にいる吉井に銃口を向ける。倒したテーブルの後ろに隠れていた吉井が飛び出した。
一発の銃声とともに吉井の左胸に穴が開く。吉井が倒れた姿勢から苦しそうに上半身を上げ、傍にいた組員のテーブルに隠れる。防弾チョッキをつけていたのだ。
離れた場所にいた男が二人、立ち上がった。銃口を向けて引き金を引く。撃発音とともに一人が吹っ飛んだ。もう一人が走った。その体を追い、ベレッタが吠える。背後をとられるわけにはいかない。男の脇腹が弾けて床を滑り、叫び声をあげながらのた打ち回った。
誰も反撃してこない。どうやら全員丸腰のようだ。いつ警察に身体検査を受けるかわからないので銃を持ち歩けないのだ。
誰もがテーブルからテーブルへがむしゃらに突っ込み始めた。組長を守ろうと、アンナをかく乱しようとしている。男たちが立ちあがるたびに銃声が鳴り響く。このまま時間を稼いで警察が来るのを待つつもりらしい。
絶対に逃がさない! アンナは銃を握る手にさらに力を込めた。
「頭を下げろぉ!」
どこかで男が叫び、頭を抱き込んで身をかがめる。銃声が響き、吉井のすぐそばのテーブルに着弾して削り取られた砕片が飛び散る。そばにいた男に跳弾が当たり、もんどりうって倒れる。
アンナは発煙筒の蓋を開け、蓋の頭を擦り付けて煙を起こした。吉井が隠れている辺りに放り投げる。
爆弾が投げ込まれたと思った男たちが一斉に立ち上がった。くそ、くそ、くそ、と誰かが呪文のように唱えている。
男が一人、テーブルを飛び越えて、眼前にまで迫っていた。そっと近寄ってきていたのだ。銃を持ったアンナの右手を両腕でつかもうとする。男がアンナの手首を掴んだ。右腕をグッと内側へ押した。銃口をアンナの心臓に向けようとしていた。アンナは左手でもう一丁のベレッタを引き抜いた。男にむけると、慌てて手を離した。右手に持ったベレッタを男に向けた時、視界の隅に立ちあがる吉井の姿を捉えた。
右手の銃を吉井の頭に向け、引き金を引く。頭を撃ち抜かれた吉井が床にドッと倒れた。頭から脳漿が飛び散るのを、アンナの目ははっきりととらえた。
「親父!」
誰かが叫んで、危険を顧みずにテーブルから飛び出して吉井のもとに駆け寄った。仕事は終わった。アンナはベレッタを連射しながら、一気に出口までダッシュした。アンナの姿を見つけたフロントの係員が悲鳴を上げた。
フロントを出て左に曲がり、従業員専用門を目指して走る。扉を開け外に飛び出す。金網フェンスの向こうに、緑に包まれた丘が見えた。コック姿の男が三人、喫煙所で煙草をふかしながらこちらを見ている。彼らに背中を向けて駆け出す。
駐車場に出る。たかだか三十メートルの距離がこれほど長いと感じるのは初めてだった。息を切らせながらバイクに跨る。休む暇はない。キーを回し、スターターを回す。エンジンが心地良い唸りをあげる。
レバーに置いた手が、荒い息遣いと一緒に揺れていた。ゆっくり、バイクを駐車場から出す。荒い息は、まだ収まっていない。時々視界が暗くなった。
道路は渋滞していた。極度な緊張を強いられる状態に置かれていたうえ、激しく走り込み、その上シャツとジーンズの上に体型を隠すつなぎの作業服と防弾チョッキを着ているので、身体は汗まみれだった。渋滞の道路を途中で脇に折れ、住宅街を走る。団地、一戸建て住宅、分譲地が混じっている。少し走り、空き地が目立ってきた。
検問はまだ敷かれていなかった。走り出してから十分といったところだ。
山道に入った。いくらか汗が引き、呼吸も楽になっていた。制限スピードを守りながら走る。この辺りで防犯カメラを気にする必要もない。
平日の午後。山上公園に人影はまばらだった。人気のないところまで山道を登り、バイクを停める。ヘルメットを外し、防弾チョッキと作業服を脱ぎ捨てると、一気に溜まっていた体温が逃げていく。爽快感に思わず声をあげた。
バイクのキーを抜き、ナンバープレートを正規のものに取り換える。外したナンバープレートと防弾チョッキを作業着に包んでカバンに入れ、ヘルメットをその上から押し込んだ。
公園の中に入る。老夫婦が二組、池のそばのベンチに座っている。彼らから離れた場所まで来ると、持っていたバッグをそっと池に投げ捨てた。
ベンチに座る。設置された灰皿に気づき、タバコが吸いたくなった。セーラムライトに火をつける。
ニュースを見た大島が、明日には大金を振り込むだろう。キャッシーにも、日本での自分の活躍は伝わるのだろうか。もしグアムでこの事件が報道されたなら、彼女は気が付くだろう。
頭上を名前も知らない鳥が鳴きながら飛んでいる。腕時計を見た。街に降りるバスの時間まであと三十分もある。警察はもう検問を始めているだろう。乗り捨てたバイクが発見されるのは、いつになるだろうか。
心地よい疲労感。何も頭に浮かばなかった。肺に入ってくる煙に含まれるミントのかすかに冷たい刺激だけを感じていた。煙草は、すぐに短くなった。
「あ……」
体の奥から何かが流れ出てきた。沙羅が欲しくなった。
鮮血のエクスタシー 13
足元に跪くと、少女は岩丸のベルトを外した。そしてファスナーを開けて、ズボンを下げた。ためらうことなく陰部を覆っているトランクスを膝まで下ろし、露になったペニスを口に咥えた。
大きな音を出して少女がしゃぶる。唾液をたっぷりと陰茎に塗りつけながら左手で優しく扱き、口に陰嚢を含んで舌を絡ませる。淫らな舌使いは素人離れしている。
まったく、最近の女子高校生というのは救いようがないな。上から少女を見下ろしながら、岩丸はにやりとした。
少女が上目遣いに岩丸を見る。女子高生の目じゃない。まるで娼婦だ。
「金が欲しけりゃ、気合を入れてやれ」
その言葉を合図に、少女は岩丸のペニスを激しく咥え込んで舌を絡ませた。舌使いも激しさを増していく。
岩丸が、テーブルに置いていた小さな注射器を少女に翳した。
「注射器……ですか……?」
「そうだ。中身はなんだかわかるか?」
「……」
「風邪薬じゃねえことくらいわかるだろ? ま、いい。とにかく、こいつをおまえに注射すん
のさ」
「え……」
少女が呆気にとられているうちに、岩丸は左手で少女の右腕をつかみ、血管を探る。
「シャブ、食ったことあんのか?」
少女が首を横に振る。しかし、眼は完全に好奇心に魅せられていた。
岩丸は少女の腕の血管を指で押さえた。少女の動きが止まった。岩丸は浮き出た血管に針先を挿し込んだ。
「ひっ!」
「動くなよ。折れちまうぜ」
そのままぐうっと押し込み、シリンダーを押した。
「あっ……」
血管の内部に薬液が入る違和感に、少女は顔を歪めた。見る間に薬液はすべて少女の血管に注射された。
「お前を天国に連れてってくれるクスリだ」
そう言いながらゆっくりと少女の乳房を揉み込む。
「あ……」
岩丸の愛撫に身を委ねていた少女の身体に、すぐに異変が現れた。
「感じるだろ?」
「なんか、身体の中が熱い……」
岩丸が少女の股間に手を伸ばした。少女が小さな悲鳴を上げる。股間がもう濡れていた。乳首も肉芽も痛いほどに屹立している。
「へへ、さっそくシャブの効果が出てきたようだな」
少女の変化に、岩丸がニヤニヤしながら言った。少女をクスリ漬けにするつもりだった。この調子で毎日注射すれば、一月もしないうちにそうなるだろう。火照った裸身をうねらせて身悶え始めた女子高生を満足そうに眺めながら、岩丸は自らの腕にも覚醒剤を注射した。
「ああ……は、早く……」
性に狂った女子高生は、焦れったそうに岩丸のペニスに手を伸ばしていた。細くしなやかな指で何度もさすっていたが、そんなことせずとも岩丸の肉棒は臨戦態勢だった。
「あ……すごい……」
赤黒くそそり立ったペニスを潤んだ目で見つめていた少女は、それを掴み、口へ持っていこ
うとする。岩丸はそれを止め、少女を乱暴に押し倒した。
「すぐにでもお前を天国へ連れてってやるぜ」
そう言って少女にのしかかった。シャブの快感にとり憑かれた少女が、美しく見える。肉に狂う少女の美貌、甘い息遣いが、何倍にも感じられた。
シャブを打てば、視覚も聴覚も嗅覚も鋭敏になりすぎる。もちろん触覚も、そして性感もだ。ドクン、ドクンと動悸がするごとに、ジャッキアップするみたいに性欲がどんどん高まっていく。
そしてそれが尽きることがないのだ。もう面倒な愛撫などしていられなかった。
腹にくっつくほど勃起した硬い肉棒を掴むと、いきなり少女の媚肉へと乱暴に突っ込んだ。
「ああああっ!」
少女は既にぐっしょり濡れていて、難なく岩丸を飲み込んだ。
どんなに濡れていても、クスリで淫乱になっていても、女子高生はきつく締まりがいい。まるで肉布団の隙間に、無理矢理ペニスを突っ込んでいるかのような感触だ。
詰まった肉洞を強引に押し開き、その先が子宮口にぶち当たった時、少女は熱に冒されたような熱い肢体をぶるるっと震わせて絶叫した。岩丸は少女の痙攣を手で押さえ込んだ。
「なんだ、もういったのか?」
「ああ……すごくいい……」
「よぉし、存分に犯ってやるからな」
少女の返事を待つまでもなく、岩丸は腰を使い出した。ぐうっと腰を送って少女の最奥を抉り、硬い肉棒で女の膣内をこねくり回し、腰を引いて抜き、そしてまた深く突き入れる。蜜を掻き出すような律動を繰り返す。その動きに応え、少女の膣は荒々しく押し入ってくる肉棒を、襞を総動員して受け止め、愛撫した。その絡みついてくる襞を引き剥がすようにして、岩丸も激しくピストンする。
岩丸はは腰の動きを休めることなく、少女の乳房を握りしめた。子供とは思えない豊かな乳房に岩丸の指がめり込む。熱く固く勃起していた乳首を指で弾かれると、少女が大声をあげた。
仰け反る少女の首筋に唇を這わせながら、乳房を揉み続けた。胸と媚肉から怒濤のように快感を送り込まれ、少女の性感はあっという間に頂点に届いた。
ガクガクッと身体を痙攣させて、少女はまた達した。達した勢いで捩った腰を岩丸に掴まれた。
まだペニスは挿入したままだ。逃がさないよう抱え込んだ腰が、岩丸の腰に押しつけられる。胎内に埋め込まれていた肉棒が、さらに奥まで入っていった。
少女は見違えるほどに性反応を露わにしていた。あられもなく乱れ、身悶えて喘いだ。シャブで得られる快感は強烈だ。絶頂に達したまま、そこから降りられないのだ。女は連続的にいきまくることになる。
岩丸を離すまいと、少女が背中を掻き抱いている。いくたびにグッと力が籠もり、背中に爪を立てるのだが、岩丸は厭きることなく少女を責め続けた。
全身体液まみれだった。上半身は汗。下半身は腰だけでなく腿や臀部まで少女の粘液でねとついていた。結合部は、律動のたびに、粘度の高い音がしている。
性に狂った少女は身も心もどろどろにとろかされている。腰はくにゃくにゃと力が入らず、岩丸の力強い突き上げを受け、ガクン、ガクンと大きく仰け反っていた。その細腰は今にも砕かれてしまいそうだが、その実、大きな臀部が男の攻撃をしっかりと受け止めていた。
岩丸の方も、徐々に意識が虚ろになってくる。クスリが効いてきているのだ。欲望のままにこの少女を犯したかった。セックスの快感だけが思考を占めるようになっていた。
「よぉし、きっちりいかせてやるからな」
少女は妖しい苦悶の表情でガクガクうなずいた。それを見てから岩丸は、力の入らない少女の腰を掴むと、今まで以上に凄まじいほどの律動を加えていった。大きくぶるんぶるんと揺れる乳房に吸い付き、乳首を咬み、肌にキスマークが残るほどにきつく責める。
一段と激しくなった責めに、少女はたちまち追い上げられた。
少女は全身で岩丸を受け止めていた。彼の手が乳房に迫れば、胸を反らせて揉みやすくする。
腰を捻って奥まで突き入れようとすれば、自分でも腰を動かしてより深くまで受け入れた。もう口からは、セックスの快美に応える声しが出てこない。
岩丸も今度は耐え切れそうにない。唸りながら、思い切り腰を打ち込み、少女の子宮口に亀頭部を何度も叩きつけた。
少女は激しい絶頂に達し、ペニスを食いちぎりそうなほどの収縮を受けた岩丸は、たまらず射精した。
射精された瞬間、少女はたて続けに達した。
射精したというのに一向に性欲が収まらなかった。まだ何度でも出来る。これが出来るからわざわざ自分にも覚醒剤を打ったのだ。射精の快感の余韻が冷め切らぬまま、またしても少女の媚肉を犯していく。
射精してもまるで衰えない肉棒に、恐怖とたくましさを感じた少女は、つきあうように腰を動かし始めた。
少女はベッドの上でぐったりしていた。規則正しく、胸が上下している。股間の恥ずかしい穴から岩丸の放った精液が大量に零れ落ちているが、それを隠そうともしていない。シャブを仕込んでセックスすれば、女はだれでもこうなる。
くわえた煙草に火をつけた時、テーブルに置いていた携帯電話が鳴った。
「女の情報が入りました」幹部の男からだった。
「スナックのママの証言通りの女を見つけました。完璧なボディーで、175センチの背の高い、ぞくっとするほどいい女です。今度こそ間違いないですよ。今確認にいかせています」
店に多いタイプの女だが、徹底的に探して絶対見つけてやる。
「片っ端から面通しして、絶対女を捕まえろ。あと、明日の夜に新しい組長の部屋に極上の女を連れて行くんだ」
「へい、いいのが入ったところです。23の女で、いい身体しています」
「身元は大丈夫だろうな。今度下手売ったらお前も無事じゃ済まねえぜ」
「大丈夫です。裏取ってますから」
「あとで俺が確認する。それに、明日の幹部会の準備、抜かりの無いようにやれ。ラウンジの方は押さえたのか?」
「大丈夫です。ただ、当日は堅気の客もいるといわれて」
「構わねえよ。とにかく、組長はあのラウンジのコーヒーがお気に入りなんだ。コーヒーさえ飲めればいいだろうよ。あとは部屋で女としっぽり濡れるんだから」
「明日、楽しみですね」
「まあな」
岩丸は吸殻を灰皿に押し付けた。俺にもついに運が向いてきた。
鮮血のエクスタシー 12
激しい訓練も七日目にはいった。ベレッタと長銃身のルガーブラックホークでの狙撃練習。そして、襲撃現場となるホテルのラウンジを模して造られた倉庫での模擬訓練。素早く動きながらベレッタを連射する訓練も、そつなくこなせるようになった。357マグナムにもだいぶ慣れ、50メートルの距離で標的を外すこともなくなった。
そして、訓練を終えると、キャッシーとの激しいプレイで疲れを癒した。
格闘後の訓練を終えると同時に、キャッシーはアンナの腕をつかんで、ソファの上に組み伏せた。
アンナの性器を弄びながら、「ほら……もう、ぐちょぐちょじゃない。あなたはマゾなのよ」と囁き、アンナの股を開く。キャッシーの目の前で性器をむき出しにされる自分の卑猥な姿を想像し、アンナは身体を震わせた。
射撃場での最後の訓練の日を迎えた。
照明の明度は落とされ、標的の周囲だけが明るく照らされている。右足を半歩前に出し、脚を肩幅に開く。
立射の姿勢で、右腕をまっすぐ水平に伸ばし、左手は軽く腰のベルトに添えた。基本通りの射撃体勢で、呼吸を整えると、25メートル前方の的に意識を集中する。深い呼吸からゆっくりと静かな呼吸を繰り返し、息を止める。
静止した的の中央に狙いを定め、引き金を引いた。
手元のモニターには、標的の拡大画面と点数、トリガーを引くまでの反射速度などのデータが表示される。
アンナは、一連の動作を繰り返し、精密射撃を30発打ち終わると、今度は両手で銃を構えた。右手でオートマチックのグリップを握り、左手を軽く添えた。精密射撃の後、ランダムに動く的で速射を50発。それを2セット繰り返すのが、キャッシーの組んだメニューだった。
『Attention!』
防音用のヘッドセットからの警告と、開始の電子音。立て続けに25発の銃声が射場にこだました。一度腕を降ろし、呼吸を整え、あと25発分のスタートボタンを押す。さらに25発を連射。
モニターに目をむける。悪くない。
すぐ横のブースからキャッシーが出てきた。アンナがバイザーとヘッドセットを取り外す。キャッシーがブースのモニターを覗く。
「大したものね」
アンナの射撃データを見て呟く。
「全て満点とはいかないまでも、全弾命中している。特に精密射撃の成績が良いのには驚いたわ。シークレットサービスや狙撃手が務まるほどの腕ね」
「教官が優秀だったのよ」
「その通りよ」
アンナは、苦笑する。
「速射は苦手だったんだけど、だいぶスコアがよくなったわ。実戦向きなメニューを組んでくれたおかげ。200万の訓練費じゃ足らないくらいね」
「足らない分は身体で払って貰うわ……」
顔を寄せて囁くと、指先でアンナの唇を掠めるように触れる。
「硝煙の匂いがするわよ……」
「いいわ」
そのままキャッシーの手がアンナの頬を包み込み、唇が重ねられた。角度を変えて施されるキスにうっとりする。躊躇いがちに伸ばされたアンナの腕が、そっとキャッシーの腰に添えられる。キャッシーが、ますますキスを深くして、アンナに理性を捨てさせようとする。
ひとしきり互いの唇の感触を味わった後、キャッシーがアンナから離れた。
「硝煙の匂いって、結構くるわ」
キャッシーに頬を両手で包まれて、またキスされた。舌を絡め、口腔内を舌先がなぞるたびに、背筋がぞくりとする。
激しく求められ、煽られて、アンナもその気になってきた。キャシーもまた息を荒げていた。
「シャワー……浴びてくるわ……」
「私はあなたの生の匂いが好きなの」
「今日は硝煙のにおいがきつすぎるわ」
「その気にさせて悪かったけど、これから少し付き合って」
「え?」
これだけ煽っておいて、このまま放置する気なのだろうか。焦らされているようで、余計に燃えてくる。
「私の理性を砕いてみたかっただけ?」
キャッシーに背を向け銃とカートリッジを片付け始めた。キャッシーは腕を組んで壁に身体を預けながら、じっとその様子を見つめていた。
アンナが、モニターの電源を落とし、キャッシーへ向き直る。
「怒ったの?」
「あなたの勝ちよ。私のあそこはもうぐしょぐしょ」
口元に勝ち誇った笑みを浮かべるキャッシーに怒ったように答えた後、つい吹き出してしまった。
「楽しみはあとにとっておくわ」
「そうして。実は今夜、ジュディに会って欲しいの」
医者らしからぬダイナマイトボディーを思い出す。先日彼女に子宮口を直接刺激され、何度も達してしまったことを思い出した。
「また、分娩台に固定されて刷毛で身体の中をいじられるのかしら?」
「ああ、あれね。子宮に少し傷が付いちゃうから、一週間はあけないとだめなのよ」
「そう、残念だわ」
「彼女はいろんなプレイを知っているので、あなたを退屈させないわよ。でも、その前に彼女のカウンセリングを受けてほしいの」
「カウンセリングって?」
「きっとあなたの仕事にも役立つことよ」
そういって、開きかけたアンナの唇をまた塞いだ。
ホテルのリゾートビーチのそばにあるバー。薄暗い空間がアンナの目の前に広がっている。明かりは、天井にある頼りないライトの他はカウンターから漏れる灯りだけだった。
店内は人影もまばらで、アンナとキャッシーの他は、5、6人程度の客が静かに酒を啜っている。
「いらっしゃいませ。今日はお連れ様がおありですか」
グラスを拭くバーテンが低く鼻に掛かる声でキャッシーを見る。どうやら彼女はここの常連らしい。ふたりはテーブル席に腰を降ろした。
「いつもので宜しいでしょうか?」
「ええ。ストロベリー・ブロンドをお願い。彼女にも」
「かしこまりました」
苦い酒は好きではない。キャッシーはアンナの好みをよく知っている。カウンターでバーテンがシェイクされたピンク色の液体をカクテルグラスに注いでいる。その淵にストロベリーが射し込まれた。
繊細なバーテンの指先が、女を優しく扱うようにそっとグラスに添えつける。
「おまたせしました」
差し出されたグラスを顔の前にかざし、しばらくそのピンク色を見つめた後、軽く口をつける。じんわりと喉を通り過ぎるウォッカの温かさが身体の中に広がる。
ふう……と息を吐く。
ストロベリーの甘い息がグラスを持つ手をなぞる。フルーツベースだから飲み口がいい。口の中で甘く広がるカクテルは、その後ゆっくりと身体も溶かしてくれる。
「あなたの心の中には、弱点があるわ」
キャッシーが唐突に口を開いた。
「どうしたの、いきなり」
「私じゃないわ。ジュディが言ってたの。彼女、精神科医だし」
「あら、産婦人科医だと思ってた」
「なんでもできるのよ。でも、専門は精神科。それも催眠療法のね」
いらっしゃいませ、とマスターの声。ブルーのキャミソールにシフォンのスカートを身に着けたジュディが、こちらを見て微笑んだ。足はブランド物のサンダルに収められている。とても医者には見えない。
「ちょうど、今夜の目的をアンナに話していたところよ」
彼女がキャッシーの横に腰を降ろした。バーテンがジュディに注文も聞かずにシェイカーを振り始めた。彼女もここの常連のようだ。
「催眠療法をしていただけるの?」
「そう。深層心理の中からトラウマを取り除くの」
「トラウマって?」
「過去の出来事が、あなたの心に悪い影響を及ぼしているの。もしかしたら、日本でのお仕事にも影響するかもって思って」
アンナは息を呑んだ。
「どうして……」
「私にはわかるの。専門家だし、肌を合わせた相手となると特にね」
バーテンが近寄ってきたので、彼女は口を噤んだ。透明で綺麗な黄色の液体の入ったシャンパングラスが、ジュディの前に差し出された。軽くアンナの格好を見つめた後、ジュディが黄色の液体を啜った。ジンの香りが届く。
「そのお酒、なんて言うの?」
「これ? アラスカ。飲んでみる?」
「うん」
差し出されたグラスに黄色の液体が揺れている。アンナが口をつけた。ジンの香りが強い。その綺麗な色からは想像できないくらい、喉の奥まで届く刺激に少し顔をしかめる。
「綺麗だけど、アルコール度は高いわね」
「そう。でも、私はそこが気に入っているの」
ジュディが身を乗り出した。
「催眠術に興味はある?」
「なくはないわね。でも、うまくいくかしら」
「頭が良くって素直な人は催眠術にかかりやすいの」
「じゃあ、私は無理だわ」
「そんなことはないわ。あなたは賢い。それにすごく素直だったわ、ベッドの上では」
ジュディの横で、キャシーが笑っている。
「そうね。じゃあ、軽く体験してみようかしら。どちらに移動すればいい?」
「ここで」
「この店の中で?」
アンナは自分の中で、好奇心と恐怖心が葛藤しているのを感じた。あの時のことを思い出すのが怖かった。
「じゃあ、お願いするわ」
アンナは覚悟を決めた。ジュディはトートバッグからブックノートを取り出した。
「じゃあ、この絵を見て」
ジュディがブックノートを広げてテーブルに置いた。焦点をずらして見ると3Dになる絵に似ていた。
「絵の中に、2つ黒い点があるわよね。左の点を左目で、右の点を右目で見て。そうすると、絵が立体的に見えてくるから」
ジュディの説明通り、何とか立体的に見ようと絵に集中した。
「難しいわね」
暫くして、笑顔でアンナが顔を上げた。
「大丈夫。集中して……」
ジュディが低い声で、ゆっくりした口調でアンナに話しかける。再び、アンナは絵に眼を落とし集中し始めた。
「集中してると……まわりがぼやけて……黒い点しかみえなくなってくるわ……」
点を見つめる、アンナの瞼がピクピク動き出した。催眠状態に入る予兆かもしれない。
「だんだんと……周りの音も小さくなって……私の声しか聞こえなくなってくるわ……」
アンナの瞼が重たくなってきた。さっき飲んだアルコールが身体から脳にまで染み込んできて、感覚も思考も麻痺させているようだった。
気持ちいい。
「瞼が……だんだんと重く……なっていくわ……だんだんと……だんだんと……。ゆっくりと……瞼が閉じていく……ゆっくり……ゆっくり……閉じていく……」
アンナの瞼が、ジュディの言葉通りに閉じ始めた。
「ゆっくり……ゆっくり閉じて……ぴったりと閉じてしまう」
アンナの瞼が、ぴったりと閉じた。
「私がいいというまで……もう……開くことが…できないわ……」
閉じた瞼の下で、アンナの眼球が動いている。アンナは、自分が催眠状態に入ったのだとわかった。意識ははっきりしているのに、どこか別の世界にいるように感じる。これが催眠に落ちた状態なのだろうか。
ジュディが肩を優しく押してソファの背もたれに沈みこませた。
「あなたはいま……催眠状態にはいっている……。私の声も聞こえているはず。あなたは……これからもっと心の深いところに降りていくのよ……」
ペースを乱さず、ゆっくりとジュディが話しかけてくる。いつの間にか、店内に静かに流れていた音楽が消えている。彼女の声しか聞こえなくなっていた。
「これから……十から一まで数えるわ……。ひとつ……数が減るたびに……あなたの身体から……どんどん……力が抜けていくの……。そして……ソファに……どんどん……身体が……しずんでいくの……。それにあわせて……あなたは……心の…ふかぁいところに……降りていくの……。十……九……八……」
ゆっくりとカウントダウンしていく。
「七…六…五…」
数が減るごとに、アンナの身体が弛緩していく。
「四……三……二……一……。さぁ……心の一番深いところに……ついたわ……」
アンナは、全身から力が抜けて、ぐったりとソファに沈み込んだ。
「私の声が聞こえていたら……返事……しなさい……」
「ええ……」
アンナは、眼を閉じたまま、ゆっくりと答える。酔っているような感覚。でも、頭は覚醒している。
「初めてオナニーしたのはいつ?」
「中学の時……」
ためらいもなくこたえられた。これまで自慰については決して他人にうちあけたことはなかった。
「初めてセックスしたのは?」
「16……」
「相手は誰?」
「街で知り合った……男……」
「日本では誰とセックスするの?」
「沙羅……それに……梨香……」
「女としかしないの?」
「そう……」
「男にひどい目に遭わされたことは?」
「レイプされた」
「誰に?」
「暴走族の男……攫われて……何度もレイプされた……見つけた……ペニスを切り落とした……」
「男が憎い?」
「殺したい……」
「殺したの?」
「男が憎い……。男を殺したい……」
「初めて男を殺したのはいつ?」
「男が憎い……。男を殺したい……」
「初めて殺したのはだれ?」
「知らない……知らない男……」
血まみれの男が倒れている。若い男。血の付いたナイフ。血の匂い。暗い倉庫のそば。人気のない道路。
「我慢できなくなったの……?」
ナイフを見て男は眼を見開いた。初めて見る顔。ナイフが肉を裂く時の感覚。
息ができない。苦しい。助けて! 声が出ない。助けて! 体が動かない! 息が出来ない! 死んじゃう!
「アンナ」
眼が開いた。息をしている。キャッシーが心配そうな顔でこちらを見ている。彼女が頬に触れたので、眼が開いたのだ。
ジュディがハンカチでアンナの額の汗を拭った。額から流れ落ちる汗が、顎を伝ってしたたり落ちる。
「もう、大丈夫よ」
ジュディがアンナを抱きしめた。
ベッドの上で、キャッシーの大きな乳房に、顔を埋めていた。そばに坐っているジュディ―が、優しくアンナの全身を撫でている。三人とも、全裸だった。女の匂いが、部屋中に満ちていた。
人を殺したいという衝動を、ついに抑えられなくなってしまった。あの日、真夜中に人気のない道路をわざと歩いた。獲物を捜すために。暗闇から男が出てきて、抱きついてきた。そして、誰もいない倉庫に連れ込もうとした。胸がときめいた。気が付けば、ナイフをポケットから取り出して刃を起こしていた。
男の胸を刺した。男は胸から血を流しながら震えていた。やがて男は動かなくなった。
それから部屋で一人震えていた。怖かったからじゃない。人を殺したくてたまらなかったから。その衝動を抑えられなかったから。
酒を飲み、死んでいく男の姿を思い出しながら自慰をした。
新聞も読まずテレビもつけなかった。警察も来なかった。結局、自分が殺したのが誰だったのか、知る機会はなかった。
「満足した?」
キャッシーが頭を撫でた。二人がかりで、粘膜という粘膜を犯された。何度達したのか、覚えていない。
「今でも、その男のことを思い出すと欲情するの?」
アンナが黙って頷く。
「初めて男を殺した衝撃が強烈だったのね」
ジュディが乳房に触れてくる。
「人を殺したいという願望は誰にでもあるの。あなたのが場合、レイプされた経験がそれに火をつけてしまったのね」
「自分のことを、異常者だと思ったわ。いえ、今でもそう思っている。異常な快楽殺人者」
「そうね。でも、私はそんなあなたを受け止めてあげる。これからも」
キャッシーに抱きしめられた。全身の力が抜けていく。今夜は一晩中、三人で愛し合いたかった。
鮮血のエクスタシー 11
ジュディはショーツを脱ぎ、下着姿で立っているアンナの手を取って引き寄せると、彼女の下着に自分の人差し指を引っ掛けずり下ろした。
露わになったアンナの下半身を見て、ジュディがほほ笑んだ。足の先から下着を抜き取ると、ジュディの指が太ももを這い上がってきた。
ジュディの指が、敏感な個所に触れる。
「あなた、感じやすいのね。わかるわ」
ジュディはアンナのブラを外した。形のいい大きな乳房がぷるっと震える。ジュディがその乳房を掌で包んで揉みはじめた。乳房が卑猥な形に歪む。
「ここに上がって横になって」
ジュディが分娩台の上に横になるように言った。いうとおりにすると、アンナの足をM字に開き、足乗せ台に乗せてベルトで固定した。分娩台に固定されるなど、生まれて初めてのことだった。
アンナの姿を見下ろし、ジュディは満足げに笑顔を見せている。恥ずかしい部分をジュディの前にさらけ出し、アンナの胸がさらに高まった。
「いい眺めよ」
キャッシーがほほ笑みながらキスしてくる
「茶化すのなら降りる」
「怒らないで。絶対いい思いできるから」
ジュディは右手をアンナの股間に入れると、無遠慮に膣口に指を押し付ける。ジュディの指は膣口を押し付けるようになぞり、敏感な秘所の上で左右に揺れる。
「あぁ……」
「気持ちいい? 気持ちいいでしょう?」
ジュディは紫色のローターをアンナの股間に近づけた。
電気が走るような快感に思わず叫び声をあげた。
「どう……?」
ジュディがほほえみながら、アンナの顔を覗きこんできた。それは慈しみの表情であり、そして興奮の表情だった
「気持ちいいでしょ……?」
「ああ……ん……あ……」
「どうなの? 言わないよやめるわよ……」
「あ……気持ちいい……」
「もっと気持ちよくしてあげる」
ジュディが細い棒のようなものを取り出した。産婦人科医が子宮頸がんの検査に使うものなのと言って、アンナの眼の前に差し出す。先には毛のようなものがついていて、これを子宮口にこすり付けて細胞を採取するのだという。
ジュディが股間を覗き込み、棒を差し込んできた
ぞわぞわした初めて経験する奇妙な感覚が這いあがってきた。ジュディはゆっくりと棒の先についた刷毛で、あんなの子宮口を刺激し続けた。
くすぐったいような感覚に、アンナが身を捩る。
「もう少し我慢して……すぐに気持ちよくなるから」
体の中が次第に錯乱してくる。そばに立つキャッシーの股間が近づいてくる。彼女の恥毛が頬に触れる。
「ほうら……アンナ、私も手伝ってあげる」と言って、キャッシーが乳首を口に含んだ。
いつの間にか全身から汗が滲み出ていた。顔にへばりつく髪の毛もそのままに快楽に耐え、ゆっくりと絶頂が近づくのを感じていた
「ほら、来るのを感じるでしょ。すごいのが来るわよ」
突然、ジュディの甘い喘ぎ声が聞こえた。いつの間にかアマンダが真っ黒いバイブをジュディの赤く腫れあがった膣に入れてピストンしながら、紫色のローターをクリトリスに擦り付けていた。異様な光景に、朦朧とした意識の中でアンナの性感が高ぶっていく。
アンナは分娩台の上で身体を仰け反らせ、激しく達した。
ジュディの施術は巧妙だった。快感のポイントをものの見事に攻めてくる。アンナは子宮口を繰り返し刺激され、何度も快感の頂上に上り詰めた。
目が覚めると、ベッドの上にいた。身体を起こして部屋を眺める。二人の女が部屋の隅で絡まり合っていた。ジュディとアマンダだった。室内は彼女たちの喘ぎ声で満たされている。
「眼が覚めた?」
キャッシーが全裸のまま、シャンパングラスを持ってそばの椅子に腰かけていた。
「あなた、失神したのよ」
今まで経験したことのない快感に、気を失ったらしい。
キャッシーがしがみついてきた。プアゾンの香りが漂う。
「あなたを開発したのは私なのに、ジュディにあんなに感じちゃうなんて」
彼女が手に双頭バイブを持っている。
「眼が覚めるまで待っていたの。でも、我慢できなくなってきたので、そろそろ起こそうと思っていたのよ」
ベットには、バイブやディルド、ペニスパンツ、ローターなどが無造作に放り出されている。「いつもはその日のセックスに合わせてチョイスしているんだけど、今日はハードなセックスを楽しみたい気分なの」
そういって、彼女が極太バイブを手に取った。
キャッシーがベットに腰かけて、アンナ相手にねっとりとしたキスを楽しみ、乳首をしゃぶる。糸を引いてしまうくらい愛液がしたたっているのが、アンナにもわかる。
キャッシーの手が股間に伸びた。
「濡れ濡れだわ」
指であふれだす愛液を少し掬いとる。キャッシーがアンナの股間を広げると、バイブの先端をあてがった。
バイブを膣壁を押し広げながら侵入してくる。スイッチが入る。中の粘膜とクリトリスを刺激され、アンナが身悶えする。
アンナが感じているのをみて、キャッシーも興奮しているのがわかる。アンナがキャッシーの股間に顔をよせる。性器全体を丁寧に舌でえぐられると、タチのくせにキャッシーがあえいだ。
「アンナ……気持ちいいわ……」
キャッシーもアンナが咥えこんでいるバイブを出し入れしながら、指で性器をなでまわす。
アンナはキャッシーの中に指を入れて、肉の壁の感触を確かめるように、ぐりぐりと回すように指を動かした。
大量の粘液が溢れてくる。アンナは指を抜き、代わりに太いバイブを入れた。
じらすようにゆっくりと入れる。奥まで入れると、スイッチを入れた。バイブは低い音を立ててうねりはじめ、同時にぶるぶると振動した。
アンナにバイブを出し入れしながら、キャッシーがアンナの脚にしがみついて、そのまま絶頂は迎えた。
アンナも身体を小さく震えて、達した。
キャッシーはのろのろと体を起こして、バイブのスイッチを切って自分で抜き、双頭バイブを入れた。バイブで拡張されていた彼女のそこは、容易に極太のバイブを飲み込んでいく。
キャッシーが覆いかぶさるように重なってきた。正常位の体勢で、バイブの先端をアンナの膣口に押し当て、少しずつアンナの膣に含ませる。じわっと快感が広がる。
バイブをアンナの膣の奥まで入れ終わると、キャッシーはほうっと息をついた。
お互い腰を動かすと、アンナとキャッシーの中で双頭バイブがうねりはじめた。
抱き合ってみつめあっていると、ペニスをもっていなくても、セックスしているという実感が得られる。
キャッシーは腰を動かして、バイブを味わっている。アンナも自分から腰を動かして、自分の膣とキャッシーの膣に快楽を与える。
夢中になって二人で腰を振り、何度も絶頂を迎えた。ぐったりと力尽きるまでふたりでセックスを楽しんだ。
ソファでは、まるでスポーツでも楽しむかのように、アマンダとジュディが汗を流し合っていた。ふたりとも、女のエロティズムを全開にしていて、思わず見とれてしまう。そこらのポルノ女優にヒケを取らないナイスバディーと色気のある顔立ち。そんな二人の美人がベッドの上で乱れまくっている。
「そっちは終わったの?」
アマンダが顔をあげてアンナを見た。
「じゃあ、ちょっとお邪魔していいかしら……」
アマンダはそう言うと、ジュディをソファの上に寝かせた。キャッシーが笑いながら尻をずらす。
「東洋人は好きだけど……日本人は初めてなの……。あなた、引き締まったいい身体をしているわね。軍隊にいたんだって? 陸軍?」
「そう。日本では自衛隊って言ってるけどね」
アマンダはベッドに寝転がるアンナの股間に顔を埋めた。イイ女だった。海兵隊の兵士にしておくにはもったいないくらいの色気だ。
そばでキャッシーがその様子を眺めている。ジュディがソファから降り、後ろからキャッシーの股間にそっと手を差し伸べると、「うふふふふ……」と微笑んだ。
アマンダが本格的にアンナを攻めはじめた。唇で挟んで刺激していたかと思うと、急に強く吸ってくる。堪らず大声を上げて身体を仰け反らせた。
「あなたも味わいなさい。ラテン民族は初めてでしょ。キャッシーみたいなアングロサクソンとは違った味がするのよ」
アマンダはそう言うと、ベッドの上にふんぞり返り、自分の股間をアンナの顔に押し付けた。
「さあ、舐めて……」
アンナはアマンダの股間に唇を押し付けた。アンナの濡れた舌がアマンダのクリトリスを這い回った。舌で丁寧に敏感な突起をなめながら、アマンダの中に指を入れる。彼女の襞がアンナの指に絡み付く。
アマンダは呻きながらアンナの髪を掴んだ。彼女の太腿が痙攣している。それを見計らっていたかのようにジュディがキャッシーの股間に顔を埋めた。二組のカップルの、唾液が性器に絡む卑猥な音が、部屋の中に谺する。
「あなたも、こっちの方がいいんでしょ?」
さっきジュディとアンナが使っていた双頭バイブを手に取り、アマンダの股を大きく開いた。これから得られるであろう快感に胸ときめかせいているのか、アマンダの顔が、期待に満ちて潤んでいる。
アンナが先端をアマンダにあてがうと、彼女は自分からグッと腰を突き出した。バイブが彼女の中に滑り込んだ。
アマンダが大きな悦びの声をあげる。
「じゃあ、私たちも……」
キャッシーはジュディをソファの上に横向きに寝かせると、背後からがっしりと抱きつきながら股を開かせ、彼女にバイブを突き立てた。
「どう? ちゃんと奥まで見える?」
バイブを抜いて中を覗きこんでいるアンナに、アマンダが言った。
「ラテン民族のあそこを見るのは初めて」
「もう十分見たでしょ……? 早く続きをして……」
アマンダはバイブを持ったアンナの腕を掴んで、自分の股間に引き寄せた。
鮮血のエクスタシー 10
午前中はマグナムの強烈な反動になれるため、レンジでブラックホークを撃ち続けた。肩の関節が外れそうな強い反動にようやく慣れたころ、キャッシーの元にスタッフから連絡が入った。
「用意ができたわ。米軍キャンプのすぐそばの倉庫よ」
テーブルに置いてあったベレッタとマガジンを五つ、9ミリパラベラムの詰まった箱をカバンに入れると、アンナを手招きした。アンナには彼女がこの訓練を楽しんでいるように見える。
昨夜のベッドでの情景が、一瞬頭を過ぎった。攻められ、息遣いの荒くなっていくアンナを見つめていたキャッシーの全身が、ほのかにピンク色に染まっていた。アンナの猥らな姿に興奮した彼女の股間もぐっしょり濡れていた。
「さあ、出発よ」
凛としたキャッシーの声が、猥らな回想からアンナを現実に呼び戻した。
島の中心部に入ると、周囲がうっそうとしたジャングルに覆われた。戦後数十年たって旧日本軍の兵士が見つかった場所の近くまで来たが、小さい島なのにその兵士が見つからなかった理由が納得できるほど、深くて暗い未開の森が広がっていた。
三十分ほど車で走ると、ジャングルが途切れ、目の前の視界が急に開けた。雲一つない青空の下に、使われなくなってもう何年も経っていそうな、廃墟のような倉庫が佇んでいる。
「ここ?」
「そうよ。ここには誰も来ないわ。軍の土地なんだけど、最近使われていないの。軍には許可を取っているから大丈夫よ」
先にキャッシーが中に入った。アンナも彼女の後に続く。倉庫の中は埃っぽくかびの匂いがした。天井が所々崩れ落ちていて、抜け落ちた穴から晴天の青空が見えている。床には丸テーブルとイスが並べられていて、各テーブルにはマネキン人形まで置いている。
「どう?」
「すごいわ」
襲撃ポイントとなるホテルのラウンジが完全に再現されている。キャッシーに訓練を依頼して正解だった。彼女の仕事はとても合理的で緻密だ。
「さあ、始めましょう」
キャッシーがベレッタのマガジンに弾を込めている。いったいどんな目的でこのようなセットを組んでトレーニングを行うのか、キャッシーは余計なことは聞いてこない。ただアンナの要求通りのトレーニングを計画し、アンナの技量を高めるために実行するだけである。
アンナは倉庫の隅から隅に視線を這わせた。あのホテルのラウンジで、吉井組組長、吉井勝が座る席はほぼ決まっている。一番奥にある、スタッフ専用ルームのドアの傍にあるテーブルだ。吉井は何か起こるとスタッフルームに逃げ込み、窓から外に逃げるつもりなのだろう。窓の外に手榴弾でつくった罠を仕掛けるのも計画済みだ。
「撃っていいかしら」
「どうぞ」
アンナはキャッシーから受け取った銃を構えて、一番奥にあるマネキンの頭部に狙いをつけると、立て続けに三回トリガーを引いた。大きな反動で銃が跳ねる。最初の一発は命中したが、後に撃った二発が外れた。
「反動で身体全体が揺れているわ。連射するときはもっと脇をしめて腰を落としなさい。重心を下げるとだいぶましになるわよ。マグナムほどじゃないけど、9ミリ弾も結構強力だから」
キャシーの指示通り腰を落としておなじマネキンを狙う。三回指を引く。今度は三発とも命中した。
「あなたはいい教官に巡り合えて幸せね」キャッシーが腰に手を当てて微笑んだ。
それから、激しい射撃訓練が始まった。外から倉庫に入ると素早く周囲を観察し、ターゲットを確認する。そして間髪入れずに腰に差した銃を抜く。ターゲットに照準を定め、初弾を放って命中させる。この一連の動作を一秒以内にできるようになるまで訓練を繰り返した。ターゲットとなるマネキンの位置は、毎回キャッシーが入れ替えた。実際の狙撃現場では、不審者を見つけた見張りのガードが近寄ってくる。その時間を二秒と見積もっている。
訓練を繰り返し、ようやく所定の時間内で動作を完璧に行えるようになった。初弾を外すこともなくなった。続いて連射で標的の周辺にいるボディガードを射殺するための訓練を始めた。これまでの訓練通り初弾をターゲットに命中させた後、振り返って後ろに置いてあるマネキンを撃つ。素早く場所を移動すると、銃を連射させてターゲット周辺のマネキンたちを撃っていく。実際の狙撃では、ホテルのラウンジに入り、一秒以内にターゲットである組長の吉井を初弾でしとめなくてはならない。そして後ろから自分に近づいてくるガードを仕留めた後、視線を戻して撃たれたターゲットを連れだそうとするボディガードたちを撃ち殺すのだ。すべてを終えるまでの目標時間は三分。その後、隠しておいたバイクで現場を立ち去る。ボディガードを始末するのは、彼らからの追撃を振り切るためだ。
訓練は二時間続けられた。
「射撃練習はここまで」
ベレッタのマガジンを空にしたころ、キャッシーが手を叩いた。二人は倉庫の外に出た。高台にある倉庫からは、タモン湾の全景が見渡せる。風に首筋を撫でられ、肩を竦める。
「この調子じゃ、三日もあれば完璧になるわよ」
「筋がいいのよ」
「そうね」
キャッシーがアンナの肩を撫でた。腕を取られたと思うと、身体が草の上に落ちた。
「何をするのよ!」
いきなり投げ飛ばされ、アンナがキャッシーを睨んだ。
「射撃の後は格闘技の訓練。身体を動かすと、命中率もよくなるの。それに、下は草だから怪我もしないでしょ? ちゃんと手加減してあげるから、かかってきなさい」
キャッシーの挑発的な言葉が、アンナの負けず嫌いの性格に火をつけた。かっときたアンナが立ち上がってキャッシーにとびかかっていったが、キャッシーはアンナの腕を取って軽く捻った。悲鳴を上げると同時に足をすくわれ、アンナの身体が宙に浮く。
「やったわね」
すぐに起き上ると、今度は足を狙ってタックルする。上からのしかかられ、腕を首に巻かれた。慌てて両手で腕に絡みついているキャッシーの腕を外そうとしたが強い力にびくともしない。ふっと宙に浮く感覚に包まれ、意識を失った。
背中に衝撃が走る。激しくせき込んだ。立ち上がろうとしたがふらつき、地面に転がる。絞め技で落とされてしまったのだ。
キャッシーが上にのしかかってくる
「格闘技じゃ、まだまだ私にかなわないわね」
キャッシーの勝ち誇った顔に、屈辱感が湧いてくる。身体が熱い。下半身から漏れ出す感覚に、身震いした。キャッシーに痛めつけられ、興奮していた。
アンナは下からキャッシーの身体を抱きしめると、彼女にキスをした。キャッシーも舌を差し込んで絡めてくる。
「虐められて興奮した?」
顔を離したキャッシーの目も欲情していた。
「本当にMっ気が激しいのね。以前と同じ」
もう一度キャッシーの唇を奪おうとした時、彼女が身体を離した。
「今はダメ」
「どうして?」
「今夜楽しみにしていて」
キャッシーがアンナの腕をつかんで起こした。
家族を持って間もない米軍兵士が使用する、小さい庭のある二階建ての家だった。キャッシーが呼び鈴を押すと、中から上品そうな女が出てきた。背が高く抜群のプロポーション。一見モデルにみえるが、産婦人科のジュディだとキャッシーから聞いている。
「キャッシーの日本のお友達ね」
ジュディと名乗った女が握手の手を差し出してきた。二十代にしか見えないが、もう三十半ばだと、彼女が言った。
彼女が一人で暮らすには広すぎるが、ホームパーティー好きなジュディは特にこの広い家を持て余すことはないようだ。
ダイニングに通されると、すでに客は来ていた。黒人の女はアマンダといって、海兵隊所属の女兵士だった。大きな胸と筋肉質な身体は、レズビアンの女たちにはたまらない。アマンダが微笑みながら手を差し伸べたが、その目に一瞬、肉欲の色が浮かんだのを、アンナは見逃さなかった。今夜は楽しい夜になりそうだった。
テーブルにはすでに料理が並んでいた。スープにサラダ、キチンのパイ。それに分厚く切ったステーキ。
「本来ならバーベキューのほうがいいのかもしれないけれど」
そういってジュディが意味深な目を向けてくる。人の目に触れさせたくないようなことになるかもしれないじゃない、とその目が語っていた。
ディナーが始まった。料理はすべてジュディ一人で用意したらしい。費用もすべて彼女持ちよ、とキャッシーが言った。アメリカ本土でも有名な病院の跡取り娘らしい。
ワインとシャンパンも美味しかった。アンナはワインには詳しくなかったが、口に含んだだけで高価な酒はすぐにわかる。
酔ったアマンダが上機嫌にアンナに話しかけてくる。元同業者のアンナに親近感を持っているのかもしれない。
彼女たちは本当によく飲んだ。ワインとシャンパンの空瓶が何本もテーブルに並んでいく。アンナも酔った勢いで、これまでのセックスについてアマンダやジュディにかなりきわどいな話を聞いていた。
「いつもは三人で楽しんでいるのよ。でも、最近マンネリ気味になってきちゃってね」
酒に酔ったキャッシーが、アマンダの大きな胸を揉んでいる。横に座っているジュディが、さっきからアンナの太腿を撫でていた。
「飲みすぎたわ」
アンナがジュディの肩にもたれると彼女の顔が被さってきた。アンナの唇を割って、ジュディの舌が侵入してくる。目の前でキャッシーとアマンダがお互いの唇を貪りあっている。
「あなたのためにいいものを用意しているの。病院からわざわざ持ってきたのよ」
悪戯っぽく笑いながら、ジュディがアンナの手を引いて隣りの下手に入った。
「何、これ」
ソファの置かれたリビングの中央に、分娩台が置かれている。
「虐められるの、好きなんでしょ? キャッシーから聞いているわ」
ジュディがアンナの髪を撫でながら耳元で囁いた。急にアンナの胸が高鳴り始めた。