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鮮血のエクスタシー 7


鮮血のエクスタシー 7

 桜並木が立ち並ぶ通りを進むと、そのホテルはあった。ホテルの地下駐車場に車を入れる。ベンツやBMWといった高級外車が並んでいる。金持ちたちが昼さがりの情事を楽しんでいるのだろう。
 車から降りてエレベータで地上階に上がる。ドアが開くと高級感漂う空間が広がった。床には大理石が敷かれ、三階まで吹き抜けの天井には、豪華なシャンデリアがいくつもぶら下がっている。ロビーに置かれたソファーには、多くの客たちが談笑していた。そのほとんどが外国人だ。
 都内でも有数な高級プリンスホテル。しかし、こんな高級ホテルにも広域暴力団は潜り込んでいる。
 ホテルのロビーの横に、大きなラウンジがあった。吉井組組長、吉井勝が裏で経営しているラウンジだ。
 席に着くと、ウエイトレスが注文を取りにやってきた。メニューを手に取り、ダージリンティーを注文する。紅茶一杯が一二〇〇円とは笑わせる。
 メニューを閉じてラウンジ内を見渡す。
 毎月定例会議の後、吉井は子分たちを連れて必ずこのラウンジにやってくる。今回の仕事でもっとも仕留めるのが難しいターゲットだ。
 大島から入手した資料に基づき、三日間かけて、吉井の最近の行動を検証した。吉井は用心深い男で、毎日移動する道を変えている。ベンツの窓ガラスが防弾ガラスであるのは大島が確認しているし、そんなことは車の窓を見ればわかる。
 移動中に狙撃でしとめるのは不可能ということか。どのみち、自分のライフルの腕では無理だ。動く標的に命中させる自信がない。ライフル狙撃は自衛隊にいるときから苦手だった。
 準備を整えて待ち伏せることができるのは、このラウンジしかない。しかし、人目も多く、隠れる場所もない。今までのように簡単にはいかないだろう。
 紅茶が運ばれてくる。一口含む。確かに美味しい。さすが高級ホテルのラウンジの紅茶だった。一二〇〇円も取るだけのことはある。
 ラウンジ内を、バッグに隠したビデオカメラで撮影する。ラウンジの入り口を入った正面奥に従業員専用のドアがある。陣取るならあのドアの傍の席だろう。窓から離れているし、何かが起こったら吉井は真っ先にあのドアから逃げようとするはずだ。
 アンナは目を閉じて、吉井勝襲撃プランを練った。

 ホテルを出て、近くのバイパスに入る。もう一人のターゲットが必ず顔を出す場所をめざした。
 閑静な住宅地にはいる。住宅街の交差点ごとに若い男が立っている。スポーツウェアを着た丸刈りの男たちで、一目でチンピラだとわかる。
 アンナの車に鋭い視線を向けてくる。住宅街全体を監視しているのだ。
 ターゲットの家の前を通り過ぎる。黒い金で建てた成金趣味丸出しの豪華な邸宅だった。邸宅の前に若い男たちが立っている。この家にはターゲットの妻と出戻った娘と、孫が住んでいる。
 ガードは固い。
 ターゲットは愛人宅を泊まり歩いていて、ほとんどこの邸宅には顔を出さない。しかし、ここにターゲットが必ず顔を出す日がある。孫の誕生日だ。
 問題はどこから狙うかだ。ライフルを使えればいいのだが、ライフル射撃は得意ではないし、大きな荷物を抱えていれば見張りの注意を引いてしまう。

 自宅マンションに戻るなり、身に着けていた服と下着を脱ぎ捨てた。熱いシャワーを浴び、インターネットで購入した海外ブランドのボディーソープで身体を洗う。
 身体が疼く。最後に沙羅の身体に触れてもう半月。メールを送ると、風邪でダウンして寝ていると返事が返ってきた。
「両親に紹介してあげるから、部屋に来て慰めてくれる?」
 絵文字入りの彼女の誘いに「ご両親にはまだ用はない」と冷たいコメントを入れて送り返した。
 一日動き回り、微かに疲労を感じる。体力はある方だし、自衛隊にいるときはもっと激しい訓練をしてきた。しかし、調査活動は苦手だ。ある程度の情報は仲介屋からもらうが、どこでターゲットを仕留めるかはアンナが考えなくてはならない。
 昔から頭を使う作業は苦手だった。疲れる。
 バスルームから出て身体を拭う。鏡に映った自分の裸体を眺める。筋肉で引き締まっているが、グロテスクではない。アスリートに近い身体。胸も尻も大きい。悪くない。この身体を見た男は、誰もが欲情するだろう。しかし、女を欲情させるには、この裸は役に立たない。
 身体が疼く。沙羅に会えないとわかると余計に火がついてきた。
 今夜、久しぶりにあの店に行くことを決めた。
 裸のままベッドに入る。股間に指を滑らせる。自分でしても沙羅に攻められたときのように深い満足感は得られない。しかし、この身体の疼きを少しくらいは抑えられる。このままでは夜までもちそうにない。

 タクシーを降りてレンガ造りの壁を見上げる。地下はビヤホールになっていて騒がしいが、上の階には静かな店が入っている。エレベータで三階に上がる。
 豪華な樫のドアを開けると、カウンターに座った女たちの視線が一斉に集まった。カウンターの中から店員が微笑みかけてくる。
 男性が立ち入り禁止のビアン。バー。カウンター席だけの店で、二十から三十代の女性客五人がいた。
「何になさいます」
「バーボンをロックで」
 両隣から、ちらちらアンナを盗み見てくる。端の席に座っている太った女と目が合った。男が目もくれないような女だが、レズビアンにはそんな女を好む者が多い。
 並んで座っていた客が席を立った。一方はOL風で、もう一方はかなり幼い。もしかしたら十代かもしれない。おそらく今夜この店で知り合ったのだろう。
 席を一つ明けた横に座っていた学生風の女の前に、店員がカクテルを置いた。きょとんとしている女に「あちら様からです」と耳打ちする。太った女が学生風の女を見て微笑んだ。はにかみながら学生風の女が頭を下げてドリンクを飲んだ。横に来てもオーケーというサインだ。太った女がさっそく移動してくる。二人で耳元でひそひそと会話を始めたが、内容は聞こえてこない。
 アンナはバーボンのグラスを傾けながら、入り口に近いほうの端の席を見た。地味な女が一人で座っている。おとなしそうな女だ。二十歳前後の若い女だ。さっきからアンナのほうを盗み見していたことは気づいて。
 淡い青のシャツに白のカーディガン。裾の長い花柄のスカート。夜の街で遊ぶにしては場違いな格好だ。青空の下で若者が集うショッピング街を歩くような恰好だった。どうやら、この手の店に来るのは初めてなのだろう。
 自分が場違いな場所にいるのを自覚しているのか、どこかそわそわしている。アンナは店員を呼んだ。
「あの子にストロベリーフィズを」
「あんな子が好みなの?」馴染み店員がそっと耳打ちした。
「可愛いじゃない。まだ学生のようね。ここのルールも教えてあげて」
 アンナがグラスを傾ける。しばらくして、女の前にストロベリーフィズが置かれた。店員に耳打ちされると、女が驚いた顔をこちらに向けた。さらに何かを耳打ちされると、女が慌てて視線を逸らせて俯いた。最後に一言、店員が耳打ちして微笑むと、女の傍を離れた。
 アンナは女を見ていた。女もアンナの視線を感じているはずだ。
 やがて、女は戸惑うようにストロベリーフィズのグラスを手に取り、口に運んだ。アンナがゆっくり席を立った。その気配を感じた女が身体を固くしたのがわかった。
「こんばんは。横に座ってもいい?」
「あ、はい……」
 アンナは彼女の横に座った。
「アンナよ」
「私……梨香といいます」
「ここは初めて?」
「はい……」
 彼女の身体が緊張で震えている。髪から安物のシャンプーの匂いが漂ってくる。ここに来る前に身体を清めてきたのだ。
「学生さん?」
「はい」
 膝の上に置いていた彼女の手に触れた。彼女の身体が感電したように震える。
「綺麗な手をしているわ」
「そうですか?」
「私の手、堅いでしょ?」
 彼女は戸惑った様子で黙っていた。訓練で鍛えている腕も掌も、体中が固かった。
 彼女の髪に触れる。髪を救って耳にかけ、指を彼女の指にはわす。彼女の耳が次第にピンク色に染まっていき、息が荒くなっていく。太った女が学生風の女を連れて店を出た。出ていく二人を、梨香がそっと盗み見た。
「私たちも出ようか」
「えっ?」
「私の部屋に来ない? すぐ近くなの」
 梨香が小さく頷いた。

 マンションの前まで来ても、アンナはまだ戸惑っていた。
「どうしたの?」
「あの……ご家族の方は……?」
「私、一人暮らしなの」
「こんな大きなマンションに一人なんですか?」
「そうよ、1DKなんて貧乏くさい部屋で暮らすなんて、耐えられないの」
 鍵を開けて玄関に入る。リビングに入っても、梨香は落ち着かない様子だった。アンナはソファに腰掛けた梨香の横に座り、ゆっくりと彼女の唇に優しくキスをした。
 梨香が唇の異変に身体を震わせた。アンナはゆっくりと彼女の唇から離れた。少しでも多くこの至福の時を味わっていたかったが、彼女に時間を与えてしまったら、臆病な彼女の決心を揺らがすかもしれなかったから。
「ごめんなさい……。あなたが可愛いから、ついキスしちゃったの」
「いえ……。私も嬉しいです……」
 腕を彼女の肩にまわすと引き寄せ、もう一度口づけをする。今度は軽い子供のキス。ワンテンポおいて、さらに口づけ。今度は甘い大人のキス。彼女の口の中を舌で味わってみる。少し抵抗する彼女を引き寄せて、うごめく体をおとなしくさせる。ゆっくり彼女の舌に絡ませて止め、そしてまた動かす。
「ん……。んんっ」
 彼女の声がアンナの体の中に直接響く。梨香は顔を赤くしながら唾液を口から溢れさせていた。目からは涙が流れていた。アンナは彼女の唇から離れ、涙を指ですくう。
「嫌だった?」
 梨香はかぶりを振った。「嬉しかった……」
 アンナはソファに梨香を押し倒し、彼女に覆い被さって耳元で囁いた。
「気持ちいいこと……したい?」
 ゆっくりと微笑すると、彼女の頬が赤く紅潮していった。
「したいんだよね?」
 指先で梨香の頬から唇、顎、首となぞっていく。赤くなった梨香に問いかけたものの、答えを待たずに顔を近づけて舌を入れた。指先は鎖骨をなぞり、ボタンを上から順番に外していく。
 シャツの中に手を入れ、ブラのホックを外す。
 初めて彼女が声を上げた。
 彼女の息は荒かった。スカートの中に手を入れて彼女の足をなぞった。ストッキングは履いていなかった。
 太ももの外側から内側。右足から左足へ。そしてパンティに手を入れる。
 梨香は驚いてアンナの腕をつかんだ。
「大丈夫 すぐ気持ちよくなるから。ほら、こんなに濡れてるじゃない」
 梨香の性器は濡れていて滑りがよかった。指で一往復させると、彼女が大きな声をあげた。初めて他人に触れられるのだろう。とても敏感な反応だった。
 スカートとパンティを脱がせた。慌てて股間を隠した梨香の両手をはずす。剥き出しの性器はとても綺麗なピンク色だった。
 指を動かすと、梨香の足が真っ直ぐ延びた。力を入れているのだろう、足は少し痙攣している。彼女は唇を噛んだ。声は出さなかった。

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