鮮血のエクスタシー 21
鮮血のエクスタシー 21
「服を脱いで」
アンナの言葉に頷き、梨香がブラウスのボタンに手をかけた。
梨香を呼び出し、ランチの後、今、シティーホテルの一室にいる。
部屋のテレビで、ヤクザの組長が射殺された事件が報じられていた。大島は報酬を振り込んでくれただろうか。
アンナはテレビを消した。
梨香は最後の一枚を脱ぎ終えた。
肌は透ける様に白く、やわらかな曲線に縁取られ、まさしく天使だった。
「恥ずかしい……」
「ううん。すごくきれいよ」
笑った梨香が、どうして今まで気付かなかったのかと思うくらい、とても可愛く思えた。
アンナは梨香の手を取って自分の胸に引き寄せた。
やわらかで弾力のある乳房。乳首だけが他の肌と違い、唇のような感触。
「あ、アンナさん……?」
「ここ……どきどきしてる」
「うん……」
梨香は何も言わず、アンナの手をショーツの中へと導いた。
「濡れてるわ……」
黙って梨香と唇を重ねる。
舌を絡め、唾液を吸い合い、お互いの体温が上昇するのを感じる。ショーツの中の指をゆっくりと動かすと、梨香はそれに合わせて小さな吐息を漏らす。
アンナも服を脱いだ。再び彼女を攻める。アンナの指や舌に反応する梨香。ソファの上でお互いの胸を揉み、茂みの奥をかき回し、唇をむさぼる。
梨香との新しい生活が始まってから、一日のほとんどをお互い裸で過ごしている。梨香はいつも恥ずかしがっているが、そんな彼女を見ていると、すぐに抱きたくなる。
お互い、相手の全身に舌を這わせ、性器をむさぼりあいながら何度も激しく果てた。
どれくらい経っただろう。気が付けば、二人ともベッドで眠っていた。
携帯電話が床で鳴っていた。気だるさの中で時計を見ると、針はもう午後五時を越えていた。いつの間にか、深い眠りに落ちていった。
梨香は気持ちよさそうに寝息を立てている。手を伸ばして携帯電話を手に取る。仲介屋の大島からだった。
アンナはベッドから降りてバスルームに移った。
「振り込みは確認してくれたかい?」
「まだだけど、信用しているわ」
「報酬の五百万、きっちりと振り込んでおいたよ。今回はずいぶん忙しい思いをさせたね」
「おかげさまで、ずいぶん稼がせてもらったわ」
「インターバルを空けるわけにはいかなかったからね。でも、これでしばらくゆっくりさせてあげられると思うよ」
「本当?」
「約束する」
「どうだか」
「先週の件で、連中は君を探している。用心するんだ。行動パターンも変えるように」
「もう、やってるわ」
「それと、岩丸という男が、君の正体に気づいた」
思わずため息が漏れた。
「もしかして、今、私と付き合っている女の子のせい? 連中、二丁目をずいぶん嗅ぎまわっていたようだけど」
「殺す気はないんだろ?」
電話の向こうから、こちらの反応をうかがう気配が伝わってくる。
「彼女を巻き込みたくないのなら、早く別れてあげたほうがいい」
「わかってるわよ」
別れの時が、意外と早く来そうだった。しかし、このホテルに泊まっていることは連中もすぐにはわからないだろう。せめてここにいる間だけは、梨香を離したくない。
電話を切ってバスルームを出た。
梨香がベッドに寝そべったまま、うつろな瞳を向けていた。
「ごめん、起こしちゃった?」
ううん、といって上体を起こし、梨香がアンナにキスをした。
「ルームサービスでも頼む?」
「このホテルのレストランって、有名なんでしょ?」
「そうね。よくテレビで紹介されている店だったわね」
「じゃあ、レストランで食事しない?」
梨香の目が輝いている。ホテルから出なければ、部屋から出ても大丈夫だろう。大金持ちにもなった。上等な酒も飲みたかった。
「まったく、性欲の次は食欲ね」
「ひどい、アンナさん」
支度を済ませ、部屋を出た。二人並んでエレベータを待っているとき、背後に気配を感じた。
はっとして振り向いた。
「さがしたよ」
全身に、強い衝撃は走った。
背中にスタンガンを押し当てられたのだ。
体が硬直し、そして意識を奪われた。