鮮血のエクスタシー 22(最終回)
鮮血のエクスタシー 22(最終回)
目を覚ます。監禁されていた。男に攫われたようだ。梨香の姿が見える。
「梨香……」
意識が、ゆっくりと浮上した。自分の置かれた状況を把握するのに、たいした時間はかからなかった。
アンナは全裸で分娩台に似た奇妙な台の上に大の字に寝かされ、手首足首を革のベルトで拘束されていた。ウェーブのかかった髪が台の上で広がっている。固定された体は女性の力では少しも自由にならない。
唯一自由になる頭を持ち上げこの部屋を見渡した。アンアを固定した台は、コンクリートの冷たい壁と床の、無愛想な部屋の中央に置かれていた。部屋の大きさは十メートル四方といったところか。足の方向に鉄製のドアが見えた。天井には粗末な傘の付いた照明が点いている。どこかの倉庫のようだ。
突然、豊かな右乳房を鷲掴みにされた。
「俺を誰だか知ってるか?」
アンナを覗きこんでくる顔に、覚えはなかった。
「けっ、俺は大物じゃねえってことか、ふざけんな」
男がにやりと笑う。
「俺は岩丸ってんだ。お前が斉藤をぶち殺してくれたんで、また出世できそうだぜ」
岩丸は乳房を掴んだ手に思い切り握力を込めた。
「ウッ……」
アンナがその痛みにきつく眉を寄せる。女にとって、乳房は性器と並んで敏感な場所だ。
男の力で力いっぱい握られたら、それこそたまらない。
「いい女じゃねえか。それに、いい身体だ。権藤をたぶらかしたこのいやらしい胸も、締りの良さそうなオマンコも、この気の強そうな顔もな」
なおも力をこめて握りつぶす、爪が食い込んで血がにじむ、かなりの力を加えられて形のよかった乳房が指の間から搾り出され、無様に変形し真っ赤にうっ血している。
「アッ……く……」
それでもアンナは賢明に苦痛に耐え、僅かなうめき声しか立てずにいた。岩丸が乳房から手を離した、男の指の跡がくっきり残っている。真っ赤になった乳房はまだ鈍い痛みを訴えていた。
覗き込んだ岩丸の瞳に、欲望の光が宿っているのを、アンナは見逃さなかった。
岩丸はアンナの足元に回った、そして開かれた彼女の足の間に割り込んだ。
腰をかがめ、間近に性器を眺めはじめた。
岩丸は赤い唇の端を吊り上げ「へへへ」と笑った。その視線には明らかに侮蔑のまなざしが含まれている。岩丸の与える恥辱に、瞳をきつく閉じた。
岩丸が指を伸ばし、アンナのそこに指を触れる、アンナの体がぴくんと反応する。
「へえ、感じてんのかい?」
その口調にも限りない侮蔑が混じっていた。
「これが権藤親分をたぶらかした穴ねぇ」
そう呟くと今度はとおもむろに指を離して立ち上がり、彼女の腹を力いっぱい革靴の裏で踏みつけた。
「痛ッ!」
アンナの目が苦痛に見開かれる。岩丸が何度も何度も容赦の無い力でアンナの腹を蹴りとばし、踏みにじる。
「あっ! きゃあ! ひいっ……!」
そのたびに堪え様の無い短い悲鳴が上がった。ミシミシと恥骨や骨盤が軋みを上げる。しばらく嬲りつづけていたが気が済んだのか、岩丸がやっと足を止めた。
はぁはぁと肩で呼吸をしながら、瞳の端に涙を浮かべ持続する痛みを必死で堪えていた。しかし、それでもアンナは無言だった。
「普通の女性なら泣き叫んでいるところだろうが、さすがプロの殺し屋だな。根性がある。泣いて許しを乞うとか、しないのか?」
アンナはギュッと唇をかみしめてそれに応えなかった。
そんな彼女を見下ろし鼻先で笑うと、いつの間にか用意されていた銀のサイドテーブルを手元に引き寄せた、そこには手術で使われるようなメスや見たことも無い器具が並んでいた。
これから手術を執り行うかのような岩丸の様子に、首を上げてそれを見ていたアンナもさすがに恐怖心が芽生えた、ゴクリと音を立てて口の中の唾を嚥下する。
岩丸はサイドテーブルの上から四又に分かれたかぎ爪状の刃物のついた、熊手様のものを手に取った。
「これは猫の爪といって、拷問に使う道具だ。使いやすいように持ち手部分はちょっと改良してあるがな」
岩丸がアンナの鼻先にその刃先をちらつかせながらいう。鈍い刃物の輝きを突きつけられたアンナが、恐怖に顔を引き攣らせる。
「な、何をするつもりなの……」
「使ってみれば判るよ、下手な説明しなくても」
岩丸が爪を握って、その鉤爪をアンナの右の乳房の突起に触れさせた。冷たい刃物が敏感な部分に触れたのを感じ、アンナが悲鳴をあげた。
ツツツ……と柔らかくすべらかな丘陵の上を、銀の刃物の背がゆっくりと乳房の下へ滑ってゆく、刃を向けてはいないので柔肌を傷つける事は無いが、冷たい恐怖に感触にアンナの肌が粟立った。
豊かな胸を下り、やがて胸の付け根の下で留まった。岩丸が刃の切っ先を狙い定めた、彼女の形のいい乳房の下にピタリとあてがい、そしてその鋭い刃先を肉を抉るように力を込めて突き刺した。
「ああ……ッ!」
アンナの口から悲鳴が溢れる。
「このでっけえおっぱいを、抉り取ってやろうか?」
「や、やめて……お願い……」
「まあ、もう少し楽しんでからにするか」
岩丸はテーブルに置いていた二つの金属の棒を手に取った。コードがつながっていて、変電気のような金属の箱につながっている。
「おい」
岩丸は、梨香を呼んだ。梨香が恐る恐る近寄ってくる。彼女も全裸にされている。
「お前はそばで見ているんだ。余計な真似をすると、おまえも同じ目に合わせるからな」
「はい……」
岩丸は二つの棒を接触させた。鋭い音とともに青い火花が飛び散る。アンナは思わず目を閉じた。
岩丸が、アンナの両肩に、日本の金属の棒を押し付けた。
「きゃあああぁあぁ!」
激痛に髪を振り乱してアンナが叫ぶ。その様子を満足げに見下ろしながら岩丸は「じゃ、もう一回、いきますか」と呟き、今度は左右の乳房に棒を押し付けた。
「ギヒイイィ! いやああぁああっ!」
再びアンナが絶叫し、ビクンビクンと身体を波打たせた。さっきの鉤爪で傷つけられた場所を攻められるのは、神経が過敏になっているせいもあり、その苦痛は例え様もない。アンナの目の前を、チカチカと火花が飛んだ。
岩丸は、やや焦点を失いかけているアンナの顎を掴んで自分の方を向かせた。涙で霞んだ目に、この残酷な行為で興奮しきっている岩丸の狂った顔が映った。
岩丸はアンナの開かれた彼女の膣に金属の棒の一本を押し込んだ。
「あああっ!」
棒はやがて子宮口を強引に押し開き、最奥に達した。差し込まれたままの金属の棒が、彼女の粘膜の熱を奪っていく。
岩丸がもう一本の棒を払い押し付けた。
「ギャヤアアアアア!」
アンナが目を見開いて大きく仰け反った。身体の中でも敏感なそこに電流が流れる。その苦痛はまさに地獄の苦しみだった。革製の丈夫な拘束具を引き千切らんばかりに暴れ狂い、半分白目を向いて口から泡を吹いて獣じみた叫び声を上げ続けた。
激痛を加えられ目を見開き、髪を振り乱し身体をのたうたせながら、叫びを上げて泡を飛ばした。
「いやああ! あっ! ああぁあ! 死んじゃう! 死んじゃう!」
「なら死ねよ、構わねえから」
耳を塞ぎたくなるような冷たい返事。必死の懇願にも岩丸の動きはひるむことは無い。痛みに悶えていたアンナが一旦大きく痙攣して、その首がガクっと折れた。
激痛のあまり失禁した。勢いよくあふれ出た尿が岩丸のズボンの一部を僅かに濡らした。
「おっと」
慌てて足を引っ込めたが、あまりに急で完全には避け切れなかった。岩丸はアンナの尿の掛かった部分を見やり、そして彼女に限りない軽蔑の視線を送る。
「このクソアマ……」
いまいましそうに呟くと、岩丸は金属の棒をアンナの膣から抜いた。そして今度はそれを彼女のアナルにあてがいグッと一気に奥へと押し込みはじめた。
「う…っぐあああああっ」
死んだようにぐったりしていたアンナが、その刺激に反応して、ビクッと身体を痙攣させる。容赦なく捩じ込まれてゆく鉄棒を、やがてアンナのアナルが根元まで飲み込んだ。
「おい」
岩丸が梨香を見た。梨香の身体がびくっと震えた。
「お前にこいつを苛めさせてやる」
「そ、そんな……」
梨香が大きく目を見開いた。
「嫌なら、おまえもお仕置きだ」
手元の変電圧器のつまみを回し、岩丸が笑う。
「どうする?」
「や、やります……」
梨香が震える手で金属棒を手に取った。
「それを女の身体に押し付けろ」
躊躇している岩丸に、「じゃあ、俺がお前を苛めてやる」といってにじり寄っていった。梨香が慌てて金属棒をアンナの身体に押し当てた。
アンナが身体を大きく反らせて腹の奥から搾り出すような声をあげた。
「もう一度押し付けろ。この器具の恐ろしいところはこれからなんだよ」
岩丸がアンナのアナルから出ている棒を更に押し込み、ツマミを最大にまで上げる。
「や、やめて……」
懇願するように梨香を見る。梨香も涙を流しながらアンナを見ているが、彼女にこの状況に抗えるだけの力はない。
「よし、いいぞ」
岩丸の情け容赦のない声が倉庫内に響く。梨香が金属棒をアンナの腹にあてる。
「うぎゃっ、ぎゃががが、ぐがああ!」
ぶるぶるっと、アンナが身もだえ、かぶりをふって喚き散らす。岩丸が「くっくっ」と笑いを漏らし、その様を観賞する。
「ヒギ……ギア……エ……ガッ……」
アンナが口をパクパクと動かし、身体を限界まで伸びきらせて大きく痙攣する。口から出るのは、もう意味をなさないうめき声だけだ、彼女の脳裏は限界を超えた苦痛にのみ占領されていた。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
梨香が涙を流しながら、大声で泣き叫んだ。
「やれ」
情け容赦のない岩丸の声。梨香が腕を伸ばす。
「ぎゃあああああああああああああああああああっ!」
アンナはまなじりが避けんばかりに目を見開いて絶叫した、
「あはは! いいねいいね! いい女が泣き叫ぶ姿にはそそられるぜ! オレは好きだな、こういうの!」
絶望に叫びつづけるアンナに向かって、さも楽しそうに岩丸があざ笑う。限度を遥かに超えた精神的苦痛と身体の痛みで、アンナの精神は限界に近付いていた。アンナの崩壊していく様を、岩丸は欲望に満ちた目で見ていた。
「くそ! もう、たまんねえや!」
岩丸がズボンを脱ぎだした。パンツをずり降ろすと、勃起したペニスが勢いよく天を向いた。
「そのオマンコにぶち込んでやる」
岩丸はアンナのアナルに刺さった金属棒を抜き取ると、脚を割って股間に腰を割り込ませ、ペニスをアンナの膣の先端にあてがった。
ペニスがまさに侵入してこようとする感覚に、アンナが悲鳴を上げた。
「てめえ、何してやがる!」
岩丸の叫び声に、アンナが目を開けた。いつの間にか、梨香が二本の金属棒を持って立っていた。変電圧器のツマミは、最大にまで上げられている。
「この野郎!」
岩丸が梨香にとびかかっていった。梨香が腕を伸ばした。
「うぎッ……ぎゃああああぁああああ!」
室内を、岩丸の絶叫が震わせる。床に倒れた岩丸に、梨香は棒を押しつけた。
「や、やめろ!」
床に倒れた岩丸が暴れているが、感電して体が言うことを聞かないようだ。金属棒を持った梨香がさっと近寄る。か弱い女性とはいえ、感電して動きの鈍った男を捉えるのは簡単なことだ。
「ギッ……ぐうぎゃああああああああぁあぁっぁああ!」
岩丸が目を見開き身体を大きく弓なりに仰け反らせて、絶叫する。それでも、梨香は手加減しない。いや、岩丸と違い、手加減の仕方がわからないのだ。
「うああ……ッ! ひぎゃああああ!」
身体を仰け反らして岩丸が暴れ狂った。口の端からだらしなく涎を垂らしながら絶叫を放ち、魚のように身体を激しくのたうたせていた。
岩丸が一層大きくブルブルと痙攣したかと思うとその動きが突然途絶えた。
眼をカッと見開いたまま、身体を痙攣させている。一瞬、身体がまた僅かに痙攣するように動いたが、それ以上の反応は無かった。
「腕と足を外して……」
アンナの言葉に、梨香が我に返ったように駆け寄ってきて、腕と足の拘束具を解いた。
「ごめんなさい!」
梨香が抱きついて大声で泣いた。
「いいのよ」
分娩台から降りる。
岩丸は息絶えていた。梨香はマックスまで電圧をあげていた。心臓にかなり負担がかかったのだろう。感電死だ。
アンナがその場に崩れるように床に倒れた。梨香が慌ててアンナを抱き寄せる。
岩丸が仲間を連れてきていなくて助かった。
「服を着せて」
床に落ちていたアンナと自分の服を、梨香が拾い集めてくる。
携帯電話で大島を呼び出し、事情を説明した。すぐに死体を処理しに行くという。
「死体処理費用は二百万なんだが……」
「今回のギャラから引いておいて」
「貸しにしとこうか?」
「お断り」
電話を切って、一息ついた。大島が来るまでに、梨香を安全なところに逃がさなくてはならない。すべてを見ていた梨香を、大島が殺しかねないからだ。
「私を苛めている時」アンナが戻ってきた梨香の股間にそっと手を伸ばした。
「あなた、興奮していたでしょ?」
意地悪く笑いながら、ぐっしょり濡れている梨香の性器をまさぐった。
(完)