野獣よ暁に吼えろ 2
野獣よ暁に吼えろ 2
「どう、いいでしょ。今度の撮影会で着る水着なの」
生地を節約したビキニは上側から乳房のナマ肌があふれそうで、下乳のふくらみもはみ出ていた。
「似合っちゃいるが、ずいぶんきわどいな」
色っぽい表情でポーズを取る鈴奈に、思わず苦笑いする。
「ファンサービスよ。これで写真集の売り上げが倍になればお安いものよ」
「そりゃ、いい。お前のファンたちもティッシュ片手に大いに励むだろうぜ」
「最低」鈴奈が笑った。
「明生もしたくなっちゃった?」
魅惑的な笑顔で、鈴奈は豊満な胸を明生の腕に押しつけてきた。目を潤ませた鈴奈が見上げた。明生は鈴奈の柔らかいカラダを抱いた。
「脱げよ」
鈴奈は微笑みながらビキニのパンティを脱ぐと、明生のズボンに手をかけた。ファスナーをおろし、ズボンと一緒に下着を剥ぎ取る。明生は彼女の行為に身を任せた。
鈴奈が舌を這わせていく。一心不乱に頬張り、舌先で丁寧に、時には荒く舐めあげた。鈴奈の手馴れた舌使いに、背筋がぞくっとした。
「もういい」
明生は鈴奈をベッドに横にすると、彼女の足を広げて口をあて、舌を這わせた。
舌が這い回る刺激に、鈴奈はあえぎ声をあげた。明生は彼女の太ももに当てた手に力を入れ、しっとりした太ももに指を食い込ませる。鈴奈がゴージャスな女体をもだえさせ、声を快感に震わせ、太腿を痙攣させる。
快感に逃げようと身体を前にやるが、明生は執拗に逃げる腰を押さえつけ、弱点を正確に苛めた。
鈴奈の足の筋肉に緊張が走った。痙攣したあと、強張って数秒間固くなった。それでも明生はやめずに、固くなってじっと堪えている鈴奈を攻撃し続けた。
鈴奈は大声を上げ、立て続けに達した。鈴奈の股間を散々舐め回した明生は、日に焼けたカラダをズリ上げて、豊満な乳房に吸い付き、固くなった乳首を舌で転がした。
艶のある肌を震わせた鈴奈は、乳房の先端の熱さに肉感的なボディをよがらせた。たっぷりした乳房を口いっぱいに含んだが軽く歯を立てると
切なげにのけぞった鈴奈の色っぽい声が部屋に響いた。鈴奈の首筋を軽く舐めると、彼女が猫撫で声で甘えるように鼻を鳴らした。
指先が下腹部へと向かう。くぐもった喘ぎ声を漏らしながら、鈴奈は身悶えた。
黒い瞳が潤んだ。両眼を閉じた。長い睫を飾った瞼が、羞恥に痙攣した。明生が鈴奈の瞼と頬を舐めた。皮膚が敏感に反応した。
鈴奈にゆっくりと入っていく。中は沸騰したように熱く、生き物が四方八方に蠢いていた。
鈴奈が大声を上げて身体を仰け反らせた。
明生は鈴奈の手を根元まできっちり収まった結合部に持ってゆくと、鈴奈は自分から腰を動かして明生の熱い男のたぎりを味わおうとする。
のけぞって細いノドをさらすと、女体を襲う快感に歓喜する甘い声を上げ続けた。
「あああ……、良かった……。今日の明生、いつもより早かった」
「お前の締りが良かったからだよ。もう少し長いほうが良かったか?」
「ううん、ちょうどいい。私ってあんまり長い時間すると、あそこが痛くなってくるもん」
鈴奈が明生の首に腕を回して抱きついてきた。
「このまま眠りたいわ……」
「もうすぐ一平太がこの部屋にくる」
「もう、お邪魔虫ね、あいつ」
「筆おろししてやれよ。あいつ、まだ童貞なんだ」
「まじ?」
鈴奈が驚いた顔で身体を起こした。
「もう十八よね。いい身体しているのに」
しばらくしてノックの後、ドアが開いた。明生が枕元のリモコンのスイッチを入れる。テレビ画面に玄関のカメラの映像が映る。一平太だった。リモコンで鍵を開けてやると、ドアを開ける音の後、一平太が部屋に顔を出した。
「よう」
明生が一平太を見て手を挙げた。ベッドの上にいるふたりを見て、一平太がレスラーのような巨体を小さく丸めて目をそらせた。グラビアモデルでもある鈴奈の裸を見てどきまきしているのがわかる。
「店のあがりです」と言って、金をテーブルの上においた。
「鈴奈さん、もしかして、真っ裸なんですか?」
「ああ、そうさ」
明生はベッドから降りると、毛布をはぎ取った。全裸の鈴奈が現れた。
「ちょっと!」
慌てて毛布を取り上げて身体をくるむ。一平太が目を丸くするのを見て、大笑いした。
「これ、預かってきたものです」そういって、DVDを明生に手渡した。
「いいものを見せてやるぜ」
明生はDVDプレーヤーにディスクを挿入すると、画面のモードをビデオに切り替えた。リモコンの「再生」を押すと、画面に白いトレーナーに黒いロングパンツを穿いた若い女が現れた。カラオケに合わせて、振りをつけてポップスを歌っている。
歌は、三年ほど前に大ヒットした『ひまわり娘』という曲だった。愛くるしい顔が半ば長い髪に被われている。化粧気はほとんどなかった。顔も声もどこかで記憶がある。場所はラブホテルのようだった。
画面が変わった。女がシャワーを浴びている。カメラの視線が、形よく突き出した乳房から股間に生い繁る陰毛まで舐めるように這っていく。陰毛の先端から、シャワーの湯が滴り落ちているシーンがアップになった。肉付きのいい女だ。
「なに、これ。エロDVD?」
「いいから、黙ってみてろよ」
カメラが、はち切れそうな尻を捉えたあと、画面が再び切り替わった。今度はベッドの上だ。いきなり秘唇がアップになった。黒々と密生した陰毛が左右に割られ、膨張した女芯と濡れそぼった膣口が画面を占領している。
「やっだぁ」鈴奈が嬌声をあげる。
続いて挿入シーンと結合場面がアップになった。画面には、結合場面と切なげに喘ぐ女の顔が交互に映し出された。
「あれ、この子、見たことある」
毛布から顔を出していた鈴奈が、寝起き声で言った。「蒼井遥じゃん」
「本当っすか? まさか」
「その、まさかだよ」
明生は意味ありげににやけながら答えた。
「本物の蒼井遥なの?」鈴奈が毛布を巻いた身体を起こした。
「もちろん。声を聞いたら分かるだろ?」
「確かに本人の声よね」
本物だと、鈴奈は言い切った。アイドルの顔とむき出しの性器、男の願望が眼の前の画面にあますところなく晒されている。
「この女は六本木や西麻布のクラブに入り浸りなんだ。そこで酔っ払って男漁りをしてるんだよ」
「そういえば、この一年ほどさっぱり名前を聞かなくなったね」
鈴奈は、蒼井遥の結合シーンに見入りながら言った。
「ペーニングプロの会長の愛人愛人になっているみたいだぜ」
「まじ? やくざとべったりの芸能事務所じゃん」
「ところが、この半年ほど、あるクラブの黒服とも付き合っていたんだ。ジロウとかいう六本木のクラブの黒服だよ」
「あ、そいつ知ってる。コマシで有名なやつでしょ?」
「ああ。そこで、クラブに遊びに来た蒼井に声をかけたらしい。すっげえ淫乱らしいから爺様じゃ物足りないみたいだな。まあ、ご本人曰く『セックス依存症』という病気らしい」
「よくビデオに撮らせてくれたわね」
鈴奈は半ば呆れ、半ば感心しながら訊いた。
「ジロウって奴は口がうまいんだよ。それに、蒼井遥は頭悪いからな。クスリでちょっとハイにしてやったらビデオに撮らせてくれたらしい」
「まあ、AV女優もアイドルも紙一重だからな。ありえない話じゃないわねえ。ところでクスリって覚醒剤なの?」
「あの男に覚醒剤なんて危いもんは売らせてないよ。エクスタシーだ。純度が高いのをまわしてやったことがあるが、女をコマすのに使っていたみたいだな」
「で、このビデオをどうしたの?」
「借金のカタに取り上げた。あいつには百万貸していたんだ。で、これを三百万で買ってくれる奴を見つけた」
「ぼろもうけジャン」鈴奈が声のトーンを上げる。「すごいっすね」と一平太も感心している。
「これは正真正銘のマスターテープなんだ。この世に一本しかない、トップアイドルの蒼井遥のホンバンビデオなんだよ」
「確かに、明生の言うとおりよ。三百万以上の価値があるかもしれないわね」
鈴奈がすっかり興奮している。金の匂いを嗅ぎつけたのか。
「でも、どうしてデュープして捌かないんですか?」一平太が聞いた。
「時間もない。実は、今、ジロウはヤクザに追われていんだよ。蒼井遥のホンバンビデオ持ってるってダチにでも喋ったんだろ。俺が思うに、追手はおそらく蒼井遥を飼っている爺様だ。このDVDのコピーが広まれば、ジロウは消されるだろう」
明生の言葉に鈴奈が身体を震わせた。
「一平太」
「はい」
「俺は明日から水戸にいく」
「水戸って茨城県の?」鈴奈が聞いてくる。
「水戸のはずれの街で祭りがある。かなり田舎だがな。そこにテキヤのバイトに行くから、お前も一緒に来い」
「明生さんが田舎でテキヤのバイトっすか?」
一平太同様、鈴奈も驚いている。
「クラブの経営はどうするんです?」
「玄太にホストの扱いは任せてある」
「なんでバイトなんかすんのよ。いくらにもならないのに」鈴奈が身体を乗り出した。毛布の端から豊かな乳房がこぼれそうになった。
「ちょっとした野暮用だよ」
ボディーガード頼んだぞというと、一平太が大声で嬉しそうに「はい」といった。