漂流の殺し屋剣士の副業 2
漂流の殺し屋剣士の副業 2
暗闇の中から笑い声が聞こえてきた。
馬車の陰から道路に出る。アイゼンを認めた男たちが,足を止めた。
「なんだあ?」
酔った男が肩を怒らせながら近づいてきた。息が酒臭い。
「ゲーリー・ローランドだな」
アイゼンの言葉に、目の前の男の表情が変わった。
腰の剣を抜いて、酒臭い男を一刀両断にする。
「う、うわああぁぁぁぁぁぁ!」
迫り来るアイゼンをみて、ローランドの前に立っていた護衛が慌てて剣を抜こうとしたが、アイゼンはあっという間に間合いを詰め、護衛をひと刺しにした。
「だれだ、おめえは?」
ローランドの声が震えている。
隙を狙った別の護衛が剣を振りかざして踏み込んできたが、アイゼンの腕が動いた瞬間に、彼の首は体から斬り離されていた。
アイゼンは容赦なくその首を掴むと、残った二人に投げつける。最後に残った護衛が悲鳴をあげるが、踏み込んできたアイゼンにあっという間に斬り伏せられた。
一人残ったローランドが、呆然としている。
「だれに……雇われた……?」
ローランドの質問には答えず、ゆっくりと近づいていく。
四人の屈強な護衛をあっという間に斬り殺された。圧倒的な戦いぶりを見せつけられ、ローランドはすっかり腰が引けてしまっている。
アイゼンが斬り殺した四人はいずれも荒れくれ男で有名な元帝国軍兵士達だ。ローランドも大金を払ってこの男達を雇っていたのだろう。訓練もされていた腕自慢だったのだろうが、これまで幾多の修羅場を潜り抜けてきたアイゼンとは場数が違いすぎたのだ。
「助けてくれ……」
「そう懇願されても、おまえたちは助けなかった」
「えっ?」
「目の前で自分の妻をさんざん犯された挙句、こいつ等に嬲り殺されたんだ。殺し屋を雇って仇撃ちもしたくなるだろう。当選の報いだと思って諦めろ」
「まさか、ジャンが……。あいつに殺し屋を雇う金など……」
「うまいパンを二個、もらったさ」
「パン? たったそれだけで殺しを引き受けたっていうか?」
血に濡れた剣をローランドの前に突き出した。
「ま、待ってくれ! 助けてくれたら金をやる。金貨を二十枚もってるんだ! お願いだから見逃してくれ!」
「そうか、金貨二十枚か。お前を殺したらいただく事にするよ」
「うわあああぁぁぁ!」
背を向けて逃げ出そうとしたローランドの首を、後ろから撥ねた。