感染したら内臓を喰い荒らされる! 気づいたらすでに手遅れ! 日本にいる危険な寄生虫 エキノコックス
感染したら内臓を喰い荒らされる! 気づいたらすでに手遅れ!
日本にいる危険な寄生虫 エキノコックス
1978年に公開された映画『キタキツネ物語』で、キタキツネは一気に人気者になりました。
北海道にあるキツネ牧場は、ツアーでも人気の高い観光スポットです。

キタキツネと聞けば、エキノコックスという言葉を思い浮かべるヒトも多いと思います。
キツネ牧場とかで人が飼育しているキタキツネはきちんと管理されているので、エキノコックスに感染しているものはいませんが、野生のキタキツネと接触するのは非常に危険です。
野生のキタキツネは北海道内で五万から十万頭ほど棲息していますが、エキノコックスの感染率は38%に達しています。
実に、2.6頭に1頭という高い割合なのです。

エキノコックス症は人獣共通感染症で、キタキツネの腸管に寄生するサナダムシの仲間です。

成虫はキタキツネなどの終宿主の腸に棲み着いて卵を産みます。
産み落とされた卵は糞に混じって体外に出されますが、ネズミがエサと共にエキノコックスの卵を摂取すると、飲み込まれた虫卵はネズミの腸で孵化し幼虫となって、肝臓に移って増殖します。
しかし、エキノコックスはネズミの中では成虫になりません。
幼虫のまま、肝臓で増殖するだけです。
このネズミのような存在を中間宿主といいます。

次に、この幼虫を宿したネズミをキツネが食べると、幼虫は消化されることなくキタキツネの小腸に取りつき、成虫に育ち、卵を産むというサイクルを繰り返します。
このキツネのような存在を終宿主といいます。
実は、人間はネズミと同じ、エキノコックスの中間宿主になります。
だから、エキノコックスの虫卵を体内に摂取してしまうと、ネズミの場合と同様、腸で孵化し、幼虫が肝臓に移って増殖します。
他に肺、腎臓、脳が冒されることもあります。
このようにエキノコックスの寄生によって引き起こされる症状をエキノコックス症と呼びます。
エキノコックスはとても危ない寄生虫で、エキノコックス症は罹ったら届け出が義務付けられている程の、恐ろしい病気なのです。
肝臓に寄生した幼虫は、そこでソフトボール大の癌のような病巣を作って、重篤な肝障害を起こします。
治療方法は、初期ならアルベンダゾールという駆虫薬を飲んで、孵化したばかりでまだ腸に入る幼虫を駆除します。

症状が進行した場合、根治する方法は手術で病巣を切除するしかありません。
しかし、症状が出現した段階では取りきれない状態になっている事がほとんどです。

エキノコックスの恐ろしい点は、知らないうちに感染して病気が進行してしまうことです。
この病気は人での潜伏期間は15年から20年と長期間です。
つまり、15年から20年は無症状のままなのです。
長い間感染に気づかず、症状が現れて気づいた時にはすでに手遅れというケースが少なくありません。
末期には重度の肝機能不全になって、症状が現われているのに治療せずに放置したりすると、5年後で50%、10年後で90%以上の患者が亡くなります。
犬が感染する場合も
成虫が寄生する相手はキタキツネだけではありません。実は、イヌやネコも終宿主になるのです。
飼い犬や飼い猫が散歩中、あるいは放し飼いしているときに、エキノコックスに感染したネズミの死体を食べたりすることで虫の幼虫が体内に侵入し、感染します。
感染した犬や猫は糞便中に多数の卵を排泄し、排泄された卵は水や野菜を通して人間の口に入り、感染します。
都会の札幌で、室内犬からエキノコックスの卵が検出されたこともあり、北海道で飼育されているイヌの1%がエキノコックスに感染しているという報告もあります。
イヌやネコが感染した場合、排出したエキノコックスの卵が動物に接触した人間の手などについて口に運ばれ、感染が起こる可能性が高いのです。
一方、イヌやネコ、キタキツネといった終宿主は、エキノコックスの成虫は小腸に寄生し、肝臓に移行しません。
下痢はしても肝臓が冒されることはなく、腸に寄生しているから虫下しで容易に駆虫する事ができます。
イヌもネコもキタキツネも、下痢するくらいで重症になることはありません。
キツネは、牛や豚の胎盤といった畜産廃棄物や家畜用の餌に寄ってくるため、多くの感染者は畜産関係者です。
次いで多いのは山歩きをする人たちで、野イチゴなどを摘んでそのまま食べたり、山の湧き水をそのまま飲んだりすることで感染するケースが多いとのことです。
北海道で山歩きをすると、山の中で奇麗な水が湧き出ている場所がたくさんありますが、湧き水をそのまま飲むことは危険です。
水の沸き出る場所にはキタキツネもやってきて水を飲むので、周囲に糞が落ちていることも多いのです。
山には危険がいっぱいあるってことを、心に刻んでおくことが大事です。
感染したかも……と思ったときは……
山で野イチゴをそのまま食べたり、山の水を飲んでしまったらどうすればいいのでしょうか?
感染したと思ったら病院にいって、駆虫薬を1か月ほど飲み続けて、腸で孵化した幼虫が肝臓に移る前に駆除します。
それから、3年に1度のエキノコックス検診を5回受診します。
感染していないと確信できるまで15年以上もかかるためr、長い時間、注意を払う必要があります。
実は、エキノコックスは北海道だけの風土病ではない。
これまでは、エキノコックスは北海道でしか定着していないとされてきましたが、最近は
少数ながら本州での感染事例も報告されています。
2005年には埼玉県内の野犬からエキノコックス虫卵が検出されました。

最近は、北海道でも山菜取りを趣味にする人が増えてきており、山麓に湧き水を取りに行く人も多くなっています。
イヌを山野に連れて行って放して遊ばせているうちに感染した小さなネズミの死体を食べ、それを知らずに本州に連れ帰ってしまっているとも考えられます。
エキノコックスは、本州ではまだ「知る人ぞ知る」数少ない病気ですが、人知れず少しずつ広がっているのです。
エキノコックスの予防方法
北海道を旅行したら、道路を歩いているキタキツネが人間に近づいて来る事がよくあります。
観光客が餌を与えるため人間に馴れてしまっているため、車も人も怖がりません。
しかし、野性のキタキツネに近づくことはとても危険な行為なのです。
エキノコックスの予防方法を以下に記します。
・北海道では、キタキツネと接触しないこと。
・土や草木などに触れたら手を十分に洗うこと。
・野イチゴや山菜は良く洗ってから食べること。
・清流といえど、生水は飲まないこと。飲む場合は、必ず沸かして、エキノコックスの卵を殺してから飲むこと。
・流行地域では犬を放し飼いにしないこと。