処女の秘孔は蜜の味 2
2 男をそそらせる美尻
カーテンの隙間から差し込む朝陽で目が覚めた。今日もいつもどおり、何も変わらない朝がやってきた。
朝の日差しはあらゆる人間に等しく降り注ぐ。裕福な人間にも、困窮な人間にも、善良な人間にも、悪どい人間にも。死と同様、平等に朝はやってくる。
ベッドから降りて冷蔵庫を開ける。朝食は必ず摂ることにしている。朝食を食べるかどうかでその日一日の元気具合が変わってくる。
バナナを一本、房からもぎ取る。皮をむいてかじりながら、ポットに湯を沸かす。
テレビをつけた。朝のニュース。税金がまた上がるらしい。日本は今大変な状況なので我慢しましょう。ニュースキャスターが笑顔でのたまう。国民に我慢を強いる政府を、民放各局が後押している。
インスタントコーヒーを入れ、タバコに火をつけ、煙を天井に噴き上げる。
ニュースのコーナーが終わり、芸人が食レポを始める。
日本のマスコミは本当に重要なことを伝えなくなった。日本海を隔てた半島での戦況はどうなのか。国民が一番知りたいニュースを一切伝えることなく、何事もない日常が今も進行しているような演出をしている。
好きにすればいい。俺には関係ない話だ。
制服に着替えて玄関から出る。ドアの鍵はいつも開きっぱなしだ。盗まれて困るものはないもない。
晴れやかな朝日が地面を照らしている。通い慣れた路地を歩く。数日前、ミサイルが着弾した場所は、今も瓦礫のままだ。
「海外ボランティア推進法の改正に、ご理解お願いいたします!」
朝の早くから、国に委託された団体職員が街頭に立って頭を下げている。海外ボランティア推進法。海外ボランティアという名の、徴兵を正当化する法律。十八歳を超えると任意に抽出された若者が、男は兵隊として、女は米兵相手の慰安婦として戦場に送られる。
ふざけるな。どうしてこんな国のために死ななきゃならないんだ。
地面のそこらじゅうがひび割れている。改修工事などされるはずもない。そんなことに金と人手を使うくらいなら、戦費に回される。
とことこと歩いて学校を目指す。登校や出勤の時間真っ最中だ。周りには通学途中の学生たちやサラリーマン、お姉様OLが歩いている。
前方に見知った後姿が学校への坂道を歩いている。他の生徒より拳ひとつ短いスカートから、まぶしいばかりの美脚が伸びている。ひらひらと翻るスカートのなかで、大きな尻が左右に揺れていた。新谷綾香。美人でいい体をしている、わが学園のオナペットだ。
その無防備な後姿に股間が熱くなる。あれでは尻を触られても文句が言えないだろう。いや、撫でてくれと誘っているのだ。
じゃあ、誘いに乗らないわけにはいかない。
辰雄は足を忍ばせ彼女に近づいて行った。そして彼女の背後をとり綾香の美尻に手を伸ばした。
まさにその果実を掴もうとした瞬間、後頭部に衝撃が走った。目が霞み、視界が揺らぐ。頭を抱えてその場で地面に跪いた。
「この馬鹿」
上から声が降ってきた。見ると須藤エリカがこちらを睨みつけるように見下ろしている。
「よ、よう、エリカ」
「朝から発情してんじゃないわよ」
前を歩いていた新谷綾香が振り返った。
「あ、おはよう、エリカ。それに藤島」
「気をつけなよ、綾香。こいつ、あんたの尻を触ろうとしていたんだから」
「はあ? まさか。あんたの目の前で?」
「ふん。こいつには節操ってものがないのよ。年がら年中発情してるんだから」
エリカはスカートの中を隠そうともせず辰雄を見下ろしている。綾香のスカートよりさらに拳ひとつ分短いスカート。いつものレースの下着が丸見えだ。
「いつまで見ている気?」
頭をさすりながら立ち上がった。学生カバンの角を叩きつけられたようだ。
「人を変態扱いするんじゃねえよ。新谷が触ってくれって誘っていたから手を伸ばしただけだ」
「はあ?」
新谷綾香が睨みつけてくる。
「そんなに女の子のお尻に触りたいのなら、エリカのを触りなさいよ」
「こいつのはもう触り飽きた」
エリカが再び学生カバンでスマッシュを決めた。
三人並んで校門をくぐった。頭がまだずきずきと疼く。
「エリカ、今朝は早いのね」
たしかに。エリカはいつも予鈴ギリギリに教室に飛び込んでくる。
「お前がこんな時間に登校するなんて、いよいよこの街にも核ミサイルがぶち込まれるのかな」
「あほ。近所の川に死体が上がってパトカーのサイレンがうるさかったから目が覚めたの」
「死体があがったくらいで、警察が朝っぱらから騒いでたのか?」
「治安会の組員が二人、撃ち殺されたのよ。頭を撃たれてね。結構強力な銃だったらしくって、頭が半分吹き飛んでいたんだって」
「それ最高」
綾香が笑う。昨夜殺したあの二人の死体がもう見つかったのか。ずいぶん早く下流まで流されたようだ。
「一般人が殺されても知らん振りなのに、治安会の組員の死体が見つかっただけであれほど騒ぐのね。馬鹿みたい」
エリカが不満顔で胸を反らせた。突き出された彼女の爆乳が、プルッと揺れた。