処女の秘孔は蜜の味 4
4 体の相性のいい女
激しくぶつかり合う肉の鈍い音が部屋中に広がった。
辰雄はエリカの腰を掴みグイッと引き寄せ、深いところまでねじ込んだ。そして、荒々しく乱暴に突いた。
「エリカ……いきそうだ……」
「きて! きて! ああああっ!」
激しく、荒く、労わりの心も無く、ただ、快楽のみを追求するもののごとく突きまくった。
「うっ、ぐっ、おぉっ!”」
「あああっ!」
凄まじい快感が全身に駆け巡り、腰が痙攣した。精液が一気に流れ出し、エリカの子宮の奥に注がれた。
激しいセックスを終えて、辰雄はぐったりと仰向けになった。
「あん……よかった……」
エリカが辰雄に抱きつき、大きな乳房を押し付けてくる。
「あ、やばい……出てきた」
「ちょっと待て」
ティッシュを二、三枚引き抜き、エリカの股間にあてがう。きれいに拭った後、丸めてゴミ箱に放り投げた。外が曇りの上に電気を消していたからよく見えなかったのに、吸い込まれるようにゴミ箱に入った。
「ストライーク」
エリカの声が部屋に響く。午後五時。半分開け放したカーテンから、雨音が聞こえてくる。過ごしやすい十月半ばなのに、辰雄もエリカも全身に汗をかいていて、狭い部屋は若い二人の性の匂いに満ちていた。
エリカはベッドから降りてテーブルの上からタバコと灰皿を持って戻ってきた。辰雄の横でうつぶせになり、銜えたタバコに火をつけた。
「マリファナ吸ってセックスすると最高……。途中で手で口を塞がれたけど、声、大きかった?」
「すごかったぞ。近所迷惑だ」
「マリファナのせいよ」
彼女の吐き出した煙で周囲が霞む。後ろ髪が首筋にべっとりと絡みついていた。辰雄はその髪を人差指の爪でひっかけた。
隣のアパートの部屋から、ギターの旋律が聞こえていた。それ以外は、ほとんど完璧な静寂が二人の寝転ぶ空間を、やさしく包み込んでいた。
「隣のマンションに聞こえたかもな」
「いいじゃん、別に」
エリカが肺一杯にタバコの煙を吸い、一気に吐き出した。
「ねえ。学校の屋上で言ったこと、本気? 召集がきたら一緒に逃げようって」
「本気だよ。法律か何かは知らないが、政府の理不尽な指示に従う気なんてないね」
「指名手配されて捕まっちゃうよ」
「逃げ切るさ。そのうち戦争も終わるだろう」
どうやって逃げるかは決めてある。隠れ家も金も用意してあるし、マリファナで稼ぐルートも確保している。用意万端だ。
エリカがタバコの吸い差しを灰皿におき、枕を両手で抱え込んだ。
「こんな生活がずっと続いたらいいのに。毎日こんなに楽しくていいのかなって、最近思うわ。この気持ち、わかる?」
辰雄は沈黙した。よくわかる。辰雄も同じ気持ちだった。この楽しい日々が終わる日が来るのが、怖かった。
辰雄は手を伸ばしてエリカの尻を撫でた。張りのある大きな尻。触り心地もいい。体の相性も最高だ。
「私ね、召集に応じてもいいと思ってるの」
驚いてエリカを見た。こちらを見ていた彼女と目が合った。
「本気で言ってるのか?」
「本気よ」エリカは辰雄の目をキッと見つめた。
「吾郎の言っていたことは本当だぜ。下級国民の女はアメリカ兵の性欲処理に使われるんだ。それが戦場の兵士にとって一番の慰安になるからな」
「知ってるよ」
「平気なのか?」
「平気じゃないけど、悪いことばかりじゃないわ。慰安婦はいいお金になるんだって。二年間の徴兵期間で一億は稼げるのよ」
「金のためなのか?」
「そうよ。私の母親がバーで働きながら体売ってるの、知ってるでしょ。血は争えないわ」
「しかし……」
「まさか、あんたも本気じゃないんでしょ? 私が他の男に抱かれるのが嫌だなんて。私たちはそんな関係じゃないわ。私はあんたにマリファナもらって、その代償にこの体を抱かせる。それだけの関係よ」
「俺はそうは思っていない……」
「治安会の二人を撃ち殺したの、あんたなんでしょ?」
辰雄は黙ったままエリカを見ていた。
「トシアキの拳銃なんでしょ? あいつが強力な銃を持ってたって光男が言ってたもん。トシアキの仇を討ったの?」
「ただの偶然さ」
エリカが二本目のタバコに火をつけた。
「お前は俺の女で、俺はお前の男だ。本気でそう思ってる。金が欲しいのなら俺が稼いでやる。馬鹿なことは考えるな」
「嘘でも嬉しいわ、辰雄……」
あそこを洗ってくるといって、エリカがベッドから出て行った。辰雄はエリカのシガーケースからタバコを一本抜き取り口に加えた。
バスルームからシャワーの音が聞こえてくる。エリカが嘘を言っていないことはわかる。慰安婦になって戦場で稼ぎ、金を持って平和なアメリカにでも行って暮らす。強い彼女が考えそうなことだ。
シャワーの音が止まった。しばらくしてエリカが部屋に戻ってきた。股間の濃い陰毛、大きな尻と深くくびれた腰、大きく張り出した胸。
そして、怒りに満ちた目……。
「ど、どうした?」
エリカが突然、手に持っていたものを投げつけてきた。
「痛っ!」
それは額に当たり、枕の横に落ちた。エリカが辰雄の体の上に飛び乗り、首を締めつけてきた。
「お、おい!」
「殺してやる!」
エリカの目が、怒りでたぎっている。
「何しやがる!」
両手で彼女の手首を掴んで引き離した。ハアハアと荒い息を漏らしているのが、自分なのかエリカなのかわからなかった。
「どういうつもりだ!」
「この部屋に女を連れ込んだのね! この糞野郎! 最低!」
「何のことだ?」
「とぼけるな!」
彼女の目から大粒の涙が零れ落ちた。
枕元に落ちたものを手に取って見る。
白百合女子学園の生徒手帳。開いたページの中から、島中祥子が微笑んでいた。