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愚かな毒鼠どもの眠れない夜 6


6.ガキの頃の追憶

 絵美の母親の名前は慶子といった。
 慶子との約束を、祐輔は守った。
 絵美をいじめるのはもうやめよう。
 学校の悪ガキどもにそう提案したとき、皆が怪訝な顔をした。
「あんな馬鹿女を何で庇うんだよ」
「あいつの親父がヤバイの、知ってるだろ? あいつ、家に帰って俺たちのことをオヤジにチクったらしいんだよ。この前、道歩いているときに声かけられて、ドス突きつけられたんだぜ」
 皆が唾を飲み込む。。
「俺たちの名前とかどこに住んでるとか、みんな知ってるんだぜって、ドスの刃先を目の前に突きつけやがんだよ。小便漏らしそうになっちまったぜ。それでよ、今度絵美をいじめたらそいつの金玉切り落とすって凄まれたんだ」
 悪ガキどもが言葉を失って顔を青くしている。この手のハッタリ話は得意だった。
 一緒につるんでいる悪ガキども以外にも、絵美をいじめる奴は多かった。頭の悪い馬鹿女をいじめることでストレスを発散したり、自分が上位に立っていることを再確認して優越感に浸りたい奴は多い。
 そんな連中には、祐輔がヤキを入れた。女子の中にも絵美をいじめる奴がいたが、バケツの水を頭からぶっ掛けてやった。
 まもなく、学校で絵美をいじめる奴はいなくなった。
 絵美をいじめから守ったご褒美だといって、慶子は好きなときにヤらせてくれた。仕事終わり間近の時間にアパートの窓の下で立っていると、慶子が窓から声をかけてくれた。
 呼ばれた祐輔は、尻尾を振って飼い主に駆け寄っていく子犬のように慶子の部屋に飛んでいき、慶子の体にしゃぶりついた。
 毎日湧き上がってくる思春期男のすさまじい欲望を、祐輔は慶子の体で発散し、満たした。祐輔は 一日おきに慶子を抱いた。
 慶子を抱き始めた頃、彼女はほとんど自分のことを話さなかったが、やがてぽつぽつとその不幸な過去を語りだした。十五でやくざの女になり、十六歳でそのやくざに風俗で働くことを強要された。それ以来、この世界で働いているといった。絵美の姉の茉莉を生んだのは十七のときだったらしいが、父親はそのやくざではなかったらしい。父親が誰なのか見当もつかないと言って笑っていた。
 歳を聞くと三十五歳だといった。
「二十代に見えるでしょ?」
 祐輔は苦笑いしながら頷いた。絵美の母親なので自分の親と同じくらいかと思っていたが、貫禄があるからもっと年上にも見える。
「ちょっと借金があって、この歳になってもこんなところで客取ってるんだよ。もうだいぶ返したけどな」
 そう言って、慶子は寂しそうに笑った。
「このアパートには八人の女がいるんだよ。皆同じ事情を抱えてる女ばっかりなんだ。けど、あたしが一番床上手なんだよ」
 そういって慶子は自慢げに何度も同じ言葉を繰り返した。
 慶子は祐輔のペニスが大きいといつも褒めた。そして、女の体の詳細についてレクチャーした。
「あんた、すごいわ、ここが。大きなチンポ。大人でもそんなの、なかなかいないよ。あんた、本当に十五歳?」
 そう言って、慶子は祐輔の目の前で脚を広げて、自ら性器を曝け出した。濡れそぼった秘唇を指で左右に大きく拡げ、祐輔を誘った。
「いい男になりたけりゃ、自分勝手なセックスしたらだめだからね。いつも女を感じさせることを考えないと」
 そういって、女の体の攻め方を指導した。祐輔は慶子の言うとおりに、慶子に教えてもらった通り、女のツボを力を強めたり速く擦ったりした。慶子はそのたびに、叫びながら体を痙攣させてエクスタシーに達した。
「気持ちよかった……。なあ、女をいかせるのは簡単だろ? でも、男はすぐに自分勝手に触りたがる。なんでもごしごししたらいいっちゅうわけじゃないんだよ」
 家には旦那や二人の娘たちが待っているはずなのに、慶子は仕事部屋によく泊まった。
「あんた、今日は帰らんといかんのか?」
 慶子はいつも寂しそうな顔でそう訊いてきた。
 母親は祐輔がいなくてもどうせ遊びまわっているんだと思って、心配もしない。遅くなれば玄関には鍵がかけられるし、起こすと怒られる。
「もう締め出されたから、帰られないよ」
「じゃあ、ここに泊っていきな。朝は別にやることないからゆっくりしていったらいいから」
 慶子は嬉しそうに笑う。笑うと少女のような可愛い笑顔になる。そして翌朝、慶子と交わって彼女の体内に欲望を吐き出してから学校に行った。
 そんな日々が一年間続いた。そして、中学の卒業を前にして、慶子と絡み合う日々が突然終わった。ふたりの娘たちに体を売らせて飲んだくれていたやくざの情夫を刺し殺したのだ。

 タバコの吸殻を灰皿の上で押し潰した。いつの間にか、絵美がうつ伏せのままベッドの上で寝息を立てていた。
 そろそろホテルを出る時間だ。
 絵美の丸くて白い尻を叩いた。肉を打つ音が部屋に響き、「ひゃっ!」と声を上げて絵美が飛び起きた。
「あれえ? あたし、寝てたぁ?」
「鼾かいてたぞ」
「うそだぁ」
「そろそろいくぞ」
 絵美がベッドから飛び降りる。肉付きのいい裸体に白い肌が眩しい。
「祐輔くん、激しかったよぉ。あたし、いっぱいいっちゃった」
 大きな乳房をブラに押し込みながら、いつものへらへら顔で笑っている。
「あたしが寝てる間、退屈だった?」
「お前のかあちゃんのことを考えてた」
「お母ちゃんのこと?」絵美が首を傾げる。
「早く出てくりゃいいなってな」
「仮釈放っていうの? 今年中には出られるって、お姉ちゃんがいってた」
「いいもん食わせてやれ。塀の中じゃ、碌な物が食えなかっただろうからな」
「もう決めてるの。焼肉に行くんだ。いつも三人で食べに行ってた美味しい店があるの」
 いつも三人。ろくでなしのオヤジ抜きか。慶子も慶子なりに、娘たちを大切にしていたのだろう。絵美も、母親が殺した義父のことは一言も喋らない。
 安物のブラウスを羽織った絵美が振り返り、用意できたよと言いたげな目を向ける。丸い目はリスを連想させた。
 絵美の肩を抱いてホテルを出た。絵美が祐輔から靴の入ったレジ袋をひったくった。
 ホテル街を出て、安い飲み屋の並んでいる通りを歩いていると、正面に立つ女が目に入った。
「お姉ちゃんだぁ!」
 絵美がパタパタと足音を立てて茉莉に駆け寄っていく。
「よう」祐輔が苦く笑って右手を上げた。
「金、払えよ」
 茉莉が絵美の頭を撫でながら、こちらを睨みつけている。
「祐輔君はいいんだよぉ」
 絵美が泣きそうな顔で姉を見ている。
「あたいらは遊んでんじゃないんだ。金、払わないならケツ持ちにチクるぞ」
「だから、いいんだって」絵美が姉の手を掴みながら必死で懇願している。
 祐輔はポケットに手を突っ込んだ。しわくちゃの一万円札を取り出し、絵美に差し出した。
「今日、その靴買ったからこれだけしかねんだ」
「だから、いらないって」
 金を受け取ろうとしない絵美の手を取ると、その中に札を押し込んだ。そして、絵美が持っているレジ袋を取り戻して彼女たちに背を向けた。

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