小説とは(3)
小説とは、主人公がある架空の世界で事件に遭遇する話です。
作者が創作した人物を、作者が創作した世界のなかで動かし、事件を語るもの。
そのため、文章の基本も、いつ(When)どこで(Where)だれが(Who)何を(What)なぜ(Why)どのようにしたのか(How)の5W1Hです。
「人間を描くこと」
これが小説の目的なのです。
しかし、初心者たちは、おもしろい話を聞いたり見たりしたとき、「これを小説にすれば何か書けるんじゃないか」って考えてしまいます。
でもそうではないのです。
事件などいくら描いても、小説にはなりません。
感動する小説は、読んでいるうちにその主人公に感情移入してしまうものです。
主人公が事件に巻き込まれてしまう。
問題を解決しようとしても、主人公の力を越えていて、解決は困難。
主人公は悩み、悩みぬく。
どこかに進むべき道があるのだと信じ、必死で探す。
味方に誤解され、敵に邪魔され、主人公は傷つき、苦悩し、迷う。
しかし、最後には満身創痍になりながらも、立ち上がり、困難に立ち向かう。
そして、事件が終わった後に、主人公はこの事件に遭遇する前の自分とは変わっていることに気づくのです。
読者が共感して読む小説はだいたいこういう構造になっています。
それは悩み傷ついた主人公が強く立ち上がろうとするところに読者が共感し、感情移入するからです。
小説は、人間の物語であり、人間が成長する物語なのです。
主人公が迷い傷つくことを乗り越えて強くなろうと努力する物語なのです。
小説を書くものは、それを常に頭のど真ん中においておくべきなのです。