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ハイエナたちの掟 2


 シャッターを下ろした店の中で、エミリは陽気に酒を飲んだ。ロックが聞きたいと言い出したが、この店にはジャズしかないというと、ジャズのリズムに合わせて腰を振り始めた。タイトなミニスカートに包まれた彼女の形のいい尻が揺れるのを見ながら、省吾はワイルドターキーを生のままのどに流し込んだ。
 エミリは何杯目かの水割りを空けた。ガールズバーで働くようになってから強くなったようだ。店では、男性客は三千円で飲み放題。女性店員は、客引きに成功すると三百円、客から酒をおごってもらうと一杯あたり五百円が支給されるシステムらしい。たわいもない会話で男たちを盛り上げ、満面の笑みを向けて奢ってほしいとねだれば、むげに断る男はいないだろう。そうして客の男は約一時間で一万円を払い、女の手に三千円が渡る。客を十人拾って来れば三万円を一晩で稼げるが、水割りを二十杯は喉に流し込まなくてはならない。女たちの身体にかかる負担は重く、閉店後に意識不明に陥り、そのまま息を引き取った少女もいた。
「もう、飲まれへん」
 午前二時を回り、エミリが省吾の胸の中に倒れてきた。店の奥にあるドアを開けると、六畳の部屋が二つ、その奥に小さなシャワールームがある。部屋の一つを倉庫に使い、残りの部屋が省吾の寝室だった。
 エミリをベッドに寝かせ、Tシャツを頭から引き抜くと、彼女自慢のDカップの胸が揺れた。ピンクのブラが汗で湿っている。
「シャワー浴びさせて」
 胸を両手で隠しながらエミリが省吾を見つめた。
「このままがいい」
「汗臭いやんか」
「俺はお前の匂いが嗅ぎたいんだ。若い女の汗の匂い、脇の匂い、あそこの匂い」
「マスターの変態」
 省吾はエミリのブラを鷲掴みにし、上に引き上げた。彼女の白い乳房がこぼれるように姿を見せる。
「もう、明るいやんか」
 両手で胸を覆うエミリの腰をつかみ、ミニのスカートをはぎ取る。エミリが省吾に抱きついてキスをする。さわり心地の良い彼女の乳房をしばらく堪能してから、手を下に卸してショーツの中に潜り込ませた。
「ちょっと、汚いよぉ……」
 身をよじりエミリが甘い吐息を吐く。指で荒っぽくかき回していると、やがて湿っぽい音が響いてきた。恥ずかしそうに省吾の手を押さえようとするが、力が入らない。エミリの右手が省吾の股間に伸び、すでに勃起しているペニスをズボンの上から撫でまわした。
「私だけなんて、ずるいわ」
 ズボンのジッパを下ろし、手を差し込んでペニスを握る。省吾が指の動きを激しくすると、エミリはそのまま高い声を上げて身体をのけぞらせ、ペニスを握りしめていた右手をズボンから引き抜いて慌てて省吾の手首をつかんだ。
 エミリのショーツを足から引き抜いていく。少し小ぶりの性器がうっすらと唇を開けている。省吾は全裸になってエミリに覆いかぶさり、彼女の中に入った。夢中で抱きついてくるエミリの頬や唇にキスしながら、ペニスの先で彼女の中を丁寧に探る。エミリが反応した個所をじっくりと時間をかけて攻めると、切なそうな喘ぎ声をあげながら自分から腰を動かしてくる。エミリの反応を見ながらゆっくりと動いて彼女を追い詰めていくと、やがて大きな叫び声をあげて達した。
 エミリが省吾の身体を抱きしめた。
「ああん、凄い」エミリが荒い息で省吾を見つめる。
「私、中でいったん、初めてや」
「本当か?」
「今までの男の子、みんなすぐに終わってたから」
「それは気の毒だったな」
 少し休んで再び同じ動きをする。さっきと同じようにゆっくりと動いたが、エミリは一分もたたないうちにオーガズムに達した。今度は彼女を休ませることなく、ピッチを上げて小刻みに動いた。襲い掛かってくる快感から逃れようとエミリは省吾の下で必死に身を捩っていたが、すぐに大きな声を上げて省吾の大きな体にしがみついてきた。休まずに深く大きなストロークに切り替えると、エミリは声を上げて立て続けに上り詰めた。省吾もエミリと同時に上り詰めようと、彼女の反応を見ながらスパートのピッチを調節する。
 彼女の安堵の表情に刺激されてエミリが上り詰めていく様子を見ながら、省吾が腰の動きを速めた。彼女と並んで同じ階段を駆け上がる。エミリが最後の叫び声をあげると同時に、省吾も彼女の体の奥で射精した。その瞬間、思わず呻き声を漏らしてしまった。
「すごく良かった。マスターも気持ちよかった?」
 肩で息をしながらエミリが聞いてくる。
「よかったよ」
 省吾の顔を見たエミリが嬉しそうに布団の中に潜り込んだ。
 省吾は床に脱ぎ捨てたシャツを拾い上げて身体を流れ落ちる汗をぬぐった。床に転がっていたドライジンの瓶を拾うと、栓を開けて喉に流し込んだ。
「私もなんか飲も」
 布団からでたエミリが立ち上がり、全裸のままドアノブに手をかけた。そして、「あっ!」小さく叫ぶとその場でしゃがんだ。
「どうした?」
「マスターのが出てきた」
 そういってそばにあった箱からティッシュを二枚引き抜いて股間に充てると、そのままドアを開けて店に出て行った。
 省吾はテーブルの上の携帯電話を手に取り、泉谷雅人を呼び出した。
「よう」
 ロックが聞こえてくる。泉谷はどこかの店で飲んでいるようだった。
「今、どこにおるんや」
「店だ」
「ジェロニモにおるんや。出てくるか」
「今、若い女と一戦終えたところだ」
 省吾の言葉に泉谷が低く笑った。
「あ、そや。言おう思とったんやけど、明日の夜、あの部屋の両隣がおらんようになるんや。水道局やけど、明日あさっておりますかってきいたら、両隣とも旅行にいくみたいや」
「連休だからな。下の階は?」
「部屋におるみたいや。でも、爺さん婆さんやから、少々でかい音出しても大丈夫や。耳遠いし」
「まあ、上の階の住人が出す音なんか、気にしないだろう。明日の夜決行だな」
「北山には、今後の予定連絡するようにいうとくわ」
「お前、りりぃって女知ってるか? 本名は本間千賀子、岡山の津山出身なんだが」
「しらんなあ。りりぃいうたら、どこかの風俗嬢かもな。仕事か?」
「いや、客に聞かれただけだ。知らなければいい」
「いちおう情報流しとくわ」
「頼む」
 電話を切ると、エミリがビールを入れたグラスを二つ持ってきた。
「誰に電話しとったん?」
「飲み仲間だ」そういって、グラスを一気にあげる。
「お前、この店で働くか?」
「雇うてくれんの?」
「今の店ほど出せないがな。野暮用で留守にするときが多くなる。店番を頼む」
「野暮用って」
「友達の手伝いだよ」
 そう言って、銜えたタバコに火をつけた。
 調査屋の仲間のアンテナにある事案が引っかかった。先日競売でマンションを落としたが、男が居座ったまま出ていかないで困っている奴がいると聞かされた。話を聞きにいくと、裁判に勝ったが、強制できないと言われて困っているといって、頭を抱えていた。しばらくしてヤクザがやってきて、落札価格の半分をくれるなら追い出してやってもいいという。
 それが連中の手口だ。居座っている男とそのヤクザはグルなのだ。
「俺たちなら一割でいいですよ」というと、彼は喜んで依頼してきた。
「おまえ、明日の夜は家に帰れよ」
 省吾の言葉にエミリが瞳を潤ませた。
「やっぱり追い出すきなんや」
「明日の夜は仕事なんだ」
「じゃあ、留守番しといたるわ」そういって布団の中に潜り込んだ。

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