ハイエナたちの掟 12
広い部屋の中央に大きなベッドが一つ置かれ、その上に少女が座っている。長くきれいな黒髪の美しい少女だった。成長すればたいそうな美人になるだろう。
彼女は真っ青な顔色でクマのぬいぐるみを抱きしめ、ベッドの上で震えていた。部屋に入って来たサオリを見て、今にも泣き出しそうな顔を向けた。
サオリは、ベッドの上で小さく蹲りカタカタと震えている少女の横に座り、そっと彼女を抱きしめた。曇りガラスでもはめ込んだような暗い目からは、壊れた蛇口から滴り落ちる水のように涙が流れ続けている。今夜あいつが来ると聞いてから、彼女の細い身体に恐怖が詰まっている。
「サオリさん……」
「大丈夫。今日も守ってあげるから」
少女が怯えた目で私を見ている。
柔らかそうな薄桃色の肌。涙に濡れる瑠璃色の瞳。
「怖いよぉ……」
震える少女の口から言葉が搾り出された。サオリはその柔らかい黒髪をなで上げる。
うっすら膨らみはじめた乳房と、薄紅色の乳首が、シャツから透けて見える。健康そうな血色と透き通る肌には”飼育”されていた数ヶ月のストレスは見られない。
少女の唇をサオリの唇が塞ぐ。サオリの舌が口内に押し入り、少女の粘膜を蹂躙する。
「サオリさん……」
怯える彼女の身体に腕を巻きつけた。掌で乳房を転がすように掴み、腹部を撫でおろし臀部を揉みしだき、下着の上から恥丘を押し転がす。
少女は身体を少し硬くする。
サオリは少女から唇を離した。少女は、ガラス玉のような虚ろな眼で、ジッとサオリを見つめていた。
「もうすぐ、あいつがくるわ」
「怖い……。またあんなことするの?」
「大丈夫。あなたが傷つけられそうになったら、必ず私が助けてあげるから、安心して。だから、今夜もどんな事されても我慢するのよ」
少女が弱々しく頷いた。
突然、チャイムが鳴った。少女の身体がびくっと震える。サオリは最後に彼女の身体を強く抱きしめると、ベッドから立ち上がった。
チェーンロックをはずしてドアを開けると、醜く太った男が立っていた。
「お待ちしておりました」
恭しく頭を垂れるサオリには目もくれず、蔵祐が横をすり抜けて部屋の奥に入っていく。
「チカちゃん、元気やったか?」
蔵祐は両手を広げて大げさに喜び、キャミソールにパンティ姿の千賀子の小さな身体を抱きしめた。
それまで部屋に漂っていたジャスミンの香りに異臭が混じった。食べ物が腐ったような饐えた臭いだった。この男の身体から発せられる体臭だ。
「ほら、また土産買ってきたったで」
上着のポケットからネックレスを取り出すと、それを千賀子の首にかけた。きらびやかに部屋の光を跳ね返してくるペンダントトップは、おそらく本物のダイヤモンドだろう。五十万は下らない。
「さあさあ、おじさんに綺麗なお肌を見せてえな」
蔵祐は千賀子のキャミソールの裾を持ち上げると、一気に首から引き抜いた。ペンダントトップが上に跳ね返り、光を放ちながら千賀子の透き通った肌の上に落ちた。発育途中の張った乳房が露になる。
千賀子は恥ずかしそうに両手で胸を覆った。その手を蔵祐が雑に外す。
「ほんまに可愛い胸やなあ」
千賀子の乳房の上に節くれだった掌をかぶせる。千賀子が固く目を閉じて、苦痛にも似た羞恥心に必死に耐えている。
「ほな、始めよか」
その言葉を合図にサオリが蔵祐に近寄り服を脱がせていく。上着とシャツを脱がし、ズボンをおろす。肌着を脱がせ、ブリーフを下すと、ナスのように太いペニスが現れた。ペニスはまだ勃起していない。
「パパ、今日も張り切って、チカちゃんを気持ちよくしたるからな」
サオリはシャツを脱ぎ、ブラを外すと、スカートとショーツを脱いで全裸となった。そしてベッドの腰かけると、千賀子の腕をとって傍に引き寄せた。透き通るような肌と整った顔は、まさに人形そのものに見える。微かに上下する白い双丘の動きのみが、彼女が生命ある存在であることを辛うじて証明していた。
千賀子の下腹部をそっと手で撫でてから、その手を太腿の間に滑らせる。少女がきゅっと足を固く閉じた。驚かさないようにゆっくりと手を差入れ、そっとショーツを剥ぎ取る。彼女が「あっ」と短い声をあげただけで、恥ずかしそうにうつむいた。少女の薄い陰毛が露わになる。
一糸纏わぬ彼女の裸身に、蔵祐がねっとりとした視線を這わせた。
サオリは千賀子の膝を立てさせ、さらに足を開かせる。
「あ……恥ずかし……い……」
「川辺さんにちゃんと見せないと……。もっと足を開いて……」
サオリの言葉に、千賀子がおずおずと足を開く。蔵祐が目を見開いて千賀子の秘部を見つめる。男のペニスが勃起し始めた。
「チカちゃん、可愛いなあ」
蔵祐の意地悪い卑猥な言葉に、千賀子は両手で自分の顔を覆った。
蔵祐が四つん這いになってベッドの横に這ってきた。目は欲望で血走り、ペニスが完全に勃起している。
蔵祐が手を伸ばして千賀子の脚を広げ、股間を覗きこんだ。
「あっ……」
「見える見える。チカちゃんの処女膜や。今の女子高生はヤリマンばっかりやのに、チカちゃんはほんまに清いなあ」
満足そうに蔵祐が顔をあげた。千賀子が恥ずかしそうに顔をそむけている。
「チカを初めて見たとき、俺は身体が震えたんやで。中学の時に好きだった女にそっくりやった。ほんまに綺麗な子でなあ。俺は不細工やったからとても手に届かんかった。でも、今はちゃうんや。俺には金も力があるんや。だから、チカちゃんにはええ思いさせるからな」
そういうと、蔵祐はサオリを見て、「はよ、銜えんかい」といった。そして自分は四つん這いになり、千賀子の股間に顔を突っ込んだ。
「きゃっ」
「おおお! チカちゃん、ごっつうええ匂いするやんけ」
「いやっ……!」
サオリはベッドから降りて蔵祐の尻に回り込み、床に仰向けに寝転んだ。そして太腿の間に体を入れ、見上げるようにして蔵祐のペニスを口に含んだ。
千賀子が小さな悲鳴をあげる。サオリは強弱をつけて蔵祐のペニスを唇で刺激し続けた。
「おおお……」
蔵祐が息を荒げ、尻を痙攣させる。
「はあ……はぁ……パパ、もう、限界や……。可愛いで、千賀子。お前のためやったら何でもしたる」
「あああっ!」
千賀子の身体が激しく跳ねて脚にピーンと力が入り、ブルブルと震えた。
「ぐおおおおっ!」
蔵祐が獣のような声で吠え、背筋を硬直させて身体を痙攣させた。ペニスが大きく震え、サオリの口の中で弾けた。
射精が始まった。大量の精液が陰茎を通っていくのがわかる。サオリは陰茎を扱きながら左手で陰嚢を刺激し、射精を促す。蔵祐の欲望の粘液が飛び散り、フローリングの床を汚していった。あっという間に男の匂いで部屋が満たされていく。
蔵祐は千賀子の股間に顔をうずめて激しく快感の余波を味わっている。
「チカちゃんがかわいすぎるから、パパ、早よ終わってもたわ」
蔵祐が満足そうに笑っている。蔵祐はベッドの上でぐったりしている千賀子の脚を広げ、名残惜しそうに粘液を舐め取っていく。
「やっぱり千賀子はバージンやないとな。パパとするんはチカちゃんがもうちょっと大きくなってからや」
蔵祐はようやく腰をあげた。
サオリは床に散乱した衣服を拾い集めると、白い肢体を晒したままの蔵祐に下着を穿かせシャツを着せてやる。早く服を着せてこの男を部屋から追い出さなくてはならない。
「なんや、まだ起き上がられへんのか? そんなに感じてもたんか」
身支度を整えた蔵祐が、ベッドで横になっている千賀子の頬を撫でた。少女が固まったまま、怯えた瞳でタオルケットの中から男の様子を窺う。
「じゃあ、またくるからな。今度はシャネルのバッグ買ってきたるから、楽しみにしときや」
ほんの十分前に歪んだ欲望と共に鬱憤を吐き出し尽くした男は、満足気な顔で部屋から出ていった。
蔵祐の姿が消えると、サオリはホッと一息ついた。
ベッドで身動きしない千賀子の髪をそっと撫でる。千賀子がうっすら目を開けサユリを見ると、身を縮こまらせ恥ずかしそうに横を向いた。
汚辱の刻より解放され、ようやく我を取り戻した千賀子は、ベッドの上で身体を起こした。サオリに抱きしめられると、自分から唇を重ねてきた。
「まだ変な匂いがする」
室内に漂う男の匂いに、不快に表情を曇らせる。
「シャワーを浴びましょう」
千賀子はベッドから降りると、夢遊病者の様な頼りない足取りで、バスルームへと向かった。