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ハイエナたちの掟 13


 蔵祐が腰をあげたとき、また携帯電話がなった。
「あ、社長」吾妻の声が聞こえてくる。
「昨日の夜、りりぃが攫われました。ナオミからの連絡でいつもの客の待つホテルに下のもんが連れていったんですが、そこで襲われたみたいです。それで、ナオミに連絡しとるんですが、全然つながらんのです」
「ナオミは攫われたんか?」
「そうや思います」
 りりぃはあの店の稼ぎ頭だ。そしてナオミは女の管理をしている。目的はりりぃか。
「拉致るとこみてた奴はおらんのか?」
「おらんようです。知り合いのおまわりにも聞きましたが、そんな通報はなかったゆうてました」
 手際がいい。プロか。この前のマンションから仲間の占有者を追い出したやつだと、蔵祐は直感する。
「ナオミを探し出して、拉致った連中を特定しろ」
「ナオミ、もう殺られてるんじゃないですかね」
「おそらく、りりぃを攫うくらいで殺しはせんやろうな。だとしたら、いつかはナオミを釈放せなあかん。連中を見つけ出してケジメつけなあかんで」
「わかっとります」そういって、吾妻は電話を切った。
「パパ、どないしたん? お仕事の話?」
 シーツに腹ばいになって尻を高く掲げたままぐったりしていたリナが、顔を覗き込んできた。
「なんもないわ」
「あ、やばい、出てきた」
 リナが慌てて股間をティッシュで押さえた。
「ようけでてきたわ」
「溜まっとったからな」
「いやだわ……パパって露骨」
 リナが上体を起こして髪をかき上げた。
「ねえ、パパ。女を探して欲しいんよ」
「女って?」
「二五歳か、もう少し若い女やねん」
「女の名前は?」
「わかんない」
「どこの女なんや」
「それもわからんねん。関西弁喋らん女なねんけど」
「何やそれ。分っとるんは二五歳前後の女ちゅうことだけか」
「それに胸もでかいで。パパ好みのええ女や」
「あのなぁ。いくらパパでも、それだけの情報でこの大阪の街で人探すんは無理やで。その女と何があったんか?」
「あの事件のことで揺すられとるんよ。ほら、ツトムやマモルたちとメイコって女折檻して死なしちゃったじゃん」
「おお、あれか」
 藏祐が関心なさそうにリナの乳房に手を伸ばす。
「これ見て」そういってカバンからDVDをだすと、部屋の再生機にセットする。テレビ画面に移り出される画面を見て、蔵祐はようやく真剣な表情になった。
「だれが撮ったんや」
「吉行貞夫や。パパ、覚えてる? その時一緒にいたダサい男」
「おお、あいつか。包茎の童貞やったな」
 リナが大げさに笑い転げる。蔵祐が再びリナの胸に手を伸ばす。
「まあ、まだ中学生やったから、包茎の童貞はしゃあないわ」
 そういって、今度は大げさなため息をついた。
「あいつ、私がアイドルになったから、ちょっかい出してくる気なんや。私を脅して金取るつもりやねん」
「あの男も生意気になったんやな」
 蔵祐の手の中でリナの乳房がこねられる。
「しかしや。この包茎野郎を探し出して誰にDVD渡したか喋らせたらええんや」
「そうや。パパやったら、簡単やんか」
「女を見つかったらどうするんや」
「もちろん、お仕置きしたるんや。それに聞きたいこともあるし」
「お前を潰させへんで。大事なタレントなんやからな」
「パパ、大好き!」
 リナは蔵祐に抱きつき、自慢の胸を蔵祐の顔に押し付けた。
「なあ、パパ。あの貞夫の幼馴染の女ってどうなったん? あの女むっちゃ可愛かった女。ツトムとマモルが少年院に入って、ほとぼりが冷めるん待って攫ったんやろ」
「ああ……そうやな。まだ部屋に閉じ込めてるで」
「もう、やってもてんやろ。あの女、バージンやったやろ」
 蔵祐はへへへっと意味あり気に笑うと、
 さあな、と意味ありげに笑うと、リナの乳房に吸いついた。

 ベッドサイドに置いた携帯電話で目が覚めた。いつの間にか眠っていた。
 この年で若い女相手に二回戦はさすがにきつい。
 電話を手に取った。吾妻からの連絡だった。
「あ、社長。吉行貞夫ちゅう男のことですけど」
「なんや、もうわかったんかいな。えらい仕事はやいのお」
「はあ、ニュースがネットに載ってたんですわ。そいつ、死んでました」
「死んでたやて?」
「はあ、三日前の話ですわ。酒に酔って川に浮いとったらしいんですわ」
「何や、酔っ払って川に落ちたんかい」
「それなんですけど、実際は中学ん時のダチに酒飲まされて、ふざけて川に投げ込まれたらしいんですわ」
 中学の友達?
「だれや、そのダチちゅうんわ」
「それが、得ダネ情報でしてね。藤間ちゅう衆議院議員の息子なんですわ。そのガキ、今一七歳なんですけど、学校にもいかんとフラフラして、今年の初めに退学になりよりましてん」
「ガキは逮捕されたんかい」
「それが、お咎めなしなんですわ。警察も死んだ吉行貞夫が勝手に川に落ちたことにして、強引に捜査を終えとるんですわ」
 親が代議士。それが世の中の仕組みって奴だ。
「そのガキは藤間静波ちゅうんか?」
「そうです。社長、知ってはるんでっか?」
「ほほほ、面白い」
 あの男か、思い出した。
「なんでもあらへん」
「吉行貞夫は親が離婚して母親が子供を引き取ったんですが、昨年死んどります。吉行貞夫と親しい同級生で、本間千賀子って女がおったらしいんですが、そいつも行方不明です」
「その女はええんや」
「それが、藤間静波のダチちゅうやつが、その女の姉貴が吉行貞夫と会ってるのを以前見たという奴がおったんです。その姉貴が特別の美人で、あまりに不釣り合いなカップルやったんで、覚えとったらしいんですわ」
「いつの話や」
「ちょうど一週間前やとゆうとりました」
「ほほほ」
「その女、胸のでかい別嬪らしいでっせ。言葉も関西の人間やないらしいんですわ。社長が探しとる女とちゃうんですか?」
「その女をとっ捕まえてこい。俺たちは警察やないから、証拠も令状もいらんのや。女の身体に直接訊けばええんや」
 蔵祐の横で、リナが寝返りを打った。
 面白いことになってきたで、リナ。
 蔵祐はは剥き出しになっているリナの尻をそっと撫でた。

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