ハイエナたちの掟 17
「どうして……この前に来たばかりじゃない……。なんか、だんだんあいつの来る間隔が短くなってきているよぉ……」
千賀子が目に涙を浮かべて震えている。
「大丈夫、大丈夫よ」サオリが千賀子の小さな身体を抱きしめた。
ドアの向こうに車の停まる音がした。千賀子の身体がぴくっと震える。
「いつものようにあいつの言う通りにして。私がなるべく早くいかせるから、我慢してね」
ドアのベルが鳴ると、サオリは急いでドアを開けた。
蔵祐が黒い鞄と棒のようなものを持っている。
「社長、それは?」
サオリの脇をすり抜けて部屋に入った蔵祐がサオリの鼻先に棒を近づけた。
突然、目の前で青白い火花が散ったので、驚いて悲鳴をあげた。
スタンガンだ。どうしてそんなものをここに持って来たのか。
「あの……それ……」
「お仕置き用や」
蔵祐が部屋に入ると、ベッドの上にいた千賀子が身体を竦ませた。
「チカちゃん、今日はいいプレイを思いついたんやで」
そういってカバンの中身を床にぶちまけた。
サオリはあっと声を漏らした。ガラスのシリンダー浣腸器とグリセリンのはいったガラス瓶だった。
蔵祐は千賀子の横に腰をおろした。
「な、チカちゃん。今夜はこれを使うんや」
「これは、なんですか」
「浣腸や」
蔵祐の言葉に千賀子がみるみる青ざめた。
「い、嫌、嫌です!」
千賀子が激しく首を横に振った。蔵祐はうすら笑いを浮かべながら、横に置いていた棒のようなスタンガンを手に取り、スイッチを押した。
バチっと鈍い音を立てて火花が飛んだ。千賀子は悲鳴をあげた。
「ことわったら、お仕置きや」
「無理です、社長」
近寄って来たサオリに、蔵祐は棒の先端を押しつけた。身体を切り裂くような衝撃に悲鳴をあげ、床に倒れた。千賀子が悲鳴をあげる。身体が痙攣した。
「ワシに意見したらどんな目に逢うか、これでわかったやろ」
サオリを睨んだ後、千賀子の方を向いて軽く髪を撫でた。
「さあ、チカちゃん、裸になろか」
千賀子は震えながら自分で服を脱いだ。
蔵祐はサオリに命じて、バスルームから洗面器を持ってこさせた。この中に排泄させる気なのだ。
「はよ、せんかい」
蔵祐の苛立った口調に気押され、サオリは蔵祐の服を脱がせた。生ごみのような匂いが漂う。パンツを脱がせると、ペニスはすでに勃起し始めていた。サオリの手早く服を脱いだ。服を脱ぎながら、どうしたら千賀子の苦痛を和らげることができるか、必死で考えた。
「はははっ、可愛い女子高生が糞を漏らすのかぁ? 楽しみやで」
蔵祐は注射等の中をグリセリンで満たした。
「チカちゃん。パパより先に出したら、これでお仕置きやで」
そういって、手に持ったスタンガンの火花を散らせた。千賀子が悲鳴をあげる。
「パパがええってゆうたら、この中に、腹の中に溜まった汚いクソをぶちまけるんや。チカちゃんのウンチみるの、パパ、楽しみやわぁ」
蔵祐は千賀子に四つん這いになるように言った。
千賀子は大人しくベッドの上で四つん這いになった。
蔵祐は千賀子の尻をしっかり掴んで固定した。そして、まさに肛門に浣腸器を突き立てようとしたとき、蔵祐がテーブルにおいていた携帯電話が鳴った。
「なんや、ええときに」
おもむろにそう呟くと、テーブルに置いた携帯電話を手に取った。
「おお、リナか。パパや。安心せい。DVDは取り返したで。ああ、あの女か。今、お仕置きの真っ最中や」
もう、許せない。
サオリは引き出しをそっと開けた。蔵祐がプレイで使う手錠をそっと取り出した。
「さあて、おい」蔵祐がサオリを呼んだ。
「チンポが萎えてもた。口でせんかい」
「はい」
後ろ手に手錠を隠し、蔵祐の前に跪いた。そして、ペニスを銜える素振りをして素早く両足に手錠をかけた。
「なんや?」
蔵祐が足元を見た。サオリは立ち上がると、床に置いていた棒状のスタンガンを手に取った。
「お前、何さらすんじゃぁ!」
蔵祐は立ちあがろうとしたが、足がもつれて転倒した。サオリは棒の先端を蔵祐の背中に押し付け、スイッチを入れた。
「ごあああああっ!」
電撃に蔵祐の身体が痙攣した。激しく痙攣した蔵祐が仰向けになった。サオリは蔵祐の胸に先端を押し当て、スイッチを入れた。
「ぐはっ! ごほっ! げふっ!」
電撃の衝撃を心臓にまともに受け、全身を痙攣させながら身体をのけぞらせる。口から泡を吹き、ペニスから尿を吹き上げた。
脚の自由を奪われた蔵祐は、反撃どころか回避や防御もろくにできないまま、なす術もなく一方的に電撃を浴びせられ続けるだけだった。
「がああっ!」
仰向けに横たわった無防備な蔵祐に、サオリはスタンガンの電撃を与え続けた。蔵祐は遂に動かなくなった。
「サオリ……さん……」
千賀子がそばによってきた。蔵祐は目をかっと見開き、天井を見たまま身動きしない。
「死んじゃったの?」千賀子が恐る恐る男の顔を覗きこんでいる。
「やっちゃったね」サオリがぽつりとつぶやいた。
玄関で鍵が開く音がしてドアが開いた。二人は驚いて全裸のまま抱き合った。ドアの隙間から大型のペンチが差し込まれ、ドアチェーンが切られた。ドアが全開になり、男が踏み込んできた。
サオリは咄嗟に自分の身体で千賀子を隠した。部屋に入ってきたのは、男が三人に女が二人。女の一人が、裸にコートを羽織った姿でこちらを見つめていた。
「千賀子?」
女が千賀子の名を呼んだ。顔をあげた千賀子が女を見た。
「お姉ちゃん……」
「千賀子!」女がサオリを押しのけ、千賀子を抱きしめた。
部屋に二人の姉妹の泣き声が響いた。髭面で頭の薄い男と、髪を金色に染めた若い男が、蔵祐を調べていた。
「この男、死んどるで」
髭面の男が言った。兵士のようにがっちりした男が、手にバスローブを持ってサオリに近寄ってきた。サオリにバスローブを羽織らせると、千賀子にはバスタオルを被せた。
「この男、死にながら勃起しとるやん」
部屋に入ってきたときは異常な状況の死体に顔を顰めていたホステス風の派手な女が、蔵祐を見降ろしながら笑っていた。
「満足そうな顔で死んどる。きっと好き放題の人生送れて幸せやったんや」